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envy.com
全てが後ろ向きに進んでいたあの日から もういくつもの音楽が消滅し また生まれゆくのを見ている 全てが情緒からデータへと 転生してゆく私の脳内では やがて自分以外の物全ての操作が可能になり 最後の気力を振り絞って全員を水中に 避難させるつもりでいました。いいえ、実際にそうしたのです (知っている 遠く離れた異国のこと、もしくは それすらも間近に感じるほど遠くにあるあの 嘘のような惑星のことも けれど、どのようにしたら私は 同時に二つの場所に存在できるのか 知らない そんな中では全てが無意味のように聴こえて ならない) 名前がない それは一人だといらない物だから私は 二つに分裂しようとしているのに 名前がないからそれすらできやしない 宇宙なんですよ、ここは 叫んだ声がはじめての名前になり そのせいで一人だけ彼方まで飛んでいっているというような その感覚すらない 全てが前向きに進んでいたあの日から もういくつもの音楽が生まれ 消滅してゆくのを見ていた 一番のお気に入りだった望遠鏡は 流れるそよ風にへし折られてしまって 悲しくて泣いているんです (どのようにしたら私は 同時に二つの場所に存在できるのか それが知りたくて必死に調べました 見つけたのは一枚のウェブページでした envy.comというシンプルなアドレスで 中身は404で何もありませんでした もしくは、誰か知らない人の個人的なブログで 更新は2012年で止まっていました もしくは、ブラウザで行うネットゲームで 今までありがとうございました という文字だけが浮かんでいました もしくは、掲示板風の詩の投稿サイトで コメントには罵詈雑言が集まっていました もしくは、何かバンドの公式ホームページで お知らせの欄には解散しましたとだけ 書かれていました あるいは、様々な種類のお墓が乱立する墓地で その中に一つは私と同姓同名の人のお墓が あったらいいのになあと思いながら 詩を描き続けていました) 続けていいですか そもそも私には名前がないから 同姓同名もクソもなくて、けれど そういうこと気にしないでいい世界に生まれて 良かったなあって思います。 だからどうせならこの世界で死にたいです 続けていいですか 誰のお墓でもないのに世界一大きいピラミッド それを積み上げたのは私ですので なるべく壊さないようにお願いします 続けていいですか
envy.com ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2557.3
お気に入り数: 2
投票数 : 5
ポイント数 : 30
作成日時 2020-02-01
コメント日時 2020-03-04
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 9 | 9 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 6 | 6 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 8 | 8 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 6 | 6 |
総合ポイント | 30 | 30 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1.3 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.9 | 0 |
エンタメ | 0.1 | 0 |
技巧 | 1.1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0.9 | 0 |
総合 | 4.3 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
- 憑依する上等な独白〜「envy.com」 (三浦果実)
言葉のリズムと間合いの感覚がすばらしいかったです。「続けていいですか」というフレーズが最大限に生かされるように構成されているのも秀逸だと思いました。
0沙一さん ありがとうございます。この詩の中での出来事は、最初に「全てが情緒からデータへと転生してゆく私の脳内では」と示したように、殆どが脳内で行われるように書きました。「ピラミッド」というのは、その私の想像たち(もしくは〜 の部分)がさらに積み重なって作られた物としての比喩のつもりだったのですが、確かに書いていて「ピラミッド」というのはそのままの「ピラミッド」を強く連想させてしまうなど、少し違和感も感じていたので、この部分は特に最後のシメですし、もっと推敲してみようと思います。ありがとうございます。 舞浜さん ありがとうございます。「続けていいですか」は私自身かなり気に入っているフレーズで、硬貨的に働いていたのならすごく嬉しいです。ありがとうございます!
0生と死 あたかもそれは 0と1 (雛祭イベントで、五七五調でコメントしてます。) https://www.breview.org/forum_blog/archives/668
0羽田恭さん ありがとうございます!上手な七七で返そうと思ったのですが、私には短歌の能力が無くて無理でした。ごめんなさい!
0envy.comあたりから、実際に沢山の分岐、とでもいうようなものが存在して、私が二つ、いやそれ以上の場所に同時に存在する様に感じたのですが、どうでしょう?
0ミリウェイズさん ご指摘ありがとうございます。私としては「もしくは〜」部分は、「二つ以上の場所に同時に存在したいから生まれた妄想」として書いたつもりでした。実際には404しか残っていないのですが、そこから墓性を見出して、様々な妄想を展開させ、結局そのまとめとして「様々な種類の墓が乱立する墓地」とし、「その中に一つは私と同姓同名の墓があったらいいのになあ」という、自身がその墓の中に存在していること(二つの場所に同時に存在すること)を求める文に着地させたつもりです。 ()を使ってみるなど、それが分かりやすいように工夫はして見たのですが、確かにもう少し推敲の余地もあるかもしれません。ありがとうございました。
0おそらく7年ぐらい前、高校生の頃の話なのですが、キャラクターが画面に常駐して、時間やニュースを知らせてくれるアプリをスマホに入れていたことがありました。そのアプリには、特定の時間になるとキャラクターが歌を歌う機能がありました。少し暗くて切なくて、ぼんやりフワフワとした不思議な歌(病気の相対性理論みたいな感じ?)で、私はとても好きでした。今ではそのアプリはなくなってしまって、曲名も、誰が作ったのかも分からないため、その歌を聞くことはもうできません。 なんだかそういうことを思い出しました。 あるいは、私が中高生の頃、イラストを投稿していたコミュニティサイトがありました。そこには数々のローカルルールや、企画の文化があって、色んな人がイラストを投稿していました。(おそらくこのサイトがなければ私はデザイナーになっていなかったと思いますし、友達もたくさんできました)。このあいだ偶然このサイトのことが気になって、久しぶりに検索してみたのですが、仲の良かった色んな人たちの作品、コメント、独特のタグ文化やコメント作法等のほとんどが消失していて、すこし切なくなりました。代わりに、新しく今の中高生が入ってきており、鬼滅の刃のイラストなどを書いていました(我々の頃はボカロやカゲプロでした……) いろいろ長々と書いてしまいましたが、そういったインターネットのノスタルジーを思い起こさせる作品だなと思いました。 10年ぐらいしたらB-REVIEWもインターネットの懐かしい思い出枠になってしまっているのかも……と少し思いました。
0わたしも小学校低学年のころ、姉と一緒にカゲプロにハマっていました…… なりチャとか アメーバピグとか よくわからんネットのオンラインゲームとか、そういう物がだんだんと失われていくのは、自分が今まで積み上げてきた、それこそ客観的に見れば馬鹿馬鹿しく無駄の集合だったとしても、そんな物が崩れ去っていくような気分で少し寂しくなります。 ともかく、感想ありがとうございました。ノスタルジックな空気が伝わったのなら嬉しいです。
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