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憑依する上等な独白〜「envy.com」
モノローグが詩に昇華するレトリックは憑依的でなければならない。下手な詩とは自分(自我とは書かない)が出まくっている作品だという説もある。だからといって営みにこそオリジナルがあるのだから、生の息遣い、オリジナルの言葉遣いは憑き物だけでは成立しない。自分を消して書き上げた詩など、それは既視感に塗れた誰かのコピーにしかならないだろう。 「envy.com」における独白は下手な詩と上等な散文詩のギリギリなところにあって読む者を惹きつける。それはパラレルワールドを求める心象にリアリティがあるからだろう。少なくとも私のような五十を過ぎたおっさんが >けれど、どのようにしたら私は >同時に二つの場所に存在できるのか >知らない と独白すればあまりにも憑き過ぎていて苦笑を買うだけだ。(というか、書けない) その二つの世界を希求する語り手から受ける営みとオリジナルの言葉遣いとは、無論、使い古された言葉ではある。 >続けていいですか 誰もが使うであろう言葉にオリジナルが宿る時、そこには必ずレトリックがある。独白が憑依に「自然に」に転調する。「続けていいですか」から受けるその現実世界における居心地の悪さは、夢うつつ氏のリアルな営みから発せられていて、それが憑依に転ずるのは言うまでもなく読み手である私によってだ。 また、本作はハイデッガー、あるいはシリアルエクスペリメンツレインと類似の匂いが覆っていて好ましい作品である。といっても全体的にはたどたどしい、が、しかしそれがかえって2020年のリアルにも思える。
憑依する上等な独白〜「envy.com」 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1449.4
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作成日時 2020-02-27
コメント日時 2020-02-27