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【フル】かるべまさひろの選評<2018年5月分>
はじめのあいさつ かるべです。 たのしく、くるしく、読ませていただいております。 投稿もして、かつ、選評も載せるというのは、 我ながら邪智暴虐性が高いのでは、怯える。 作家はなぜか審査員に抜擢されたりしますけど、 現代アートだと批評家専門の方も多いですよね。(雑感) よろしくお願いします。 <選評> 5月は面白いと思わせてくれる作品の数が多かったです。 佳作とかもあれば、思わずたくさん選んでしまいそうです。 おっと思わせてくれたポイントが質的・量的に大きかったもの、 構成の面で感心させられたものから選ばせて頂きました。 かたや、一方の視点では、きりり、と突きつけられなかった5月。 やや残念に思いました。 【大賞候補作】 かえる経 藤一紀 【優良作】 名づく こうだたけみ 右利き 次郎 入院 5or6(ゴロちゃん。) 【推薦作】 何もできない日 山本琴煢 はだか 峰 ひろ樹 ラブ・ラプソディ 渡辺八畳@祝儀敷 Elegy R ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 大賞候補 かえる経 藤一紀 ずるい。 http://breview.main.jp/keijiban/?id=1794 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 優良作 名づく こうだたけみ 一文字一文字に意味が乗っかっていて、非常にクオリティが高い。 そのおかげで、だらだら系とは一線を画している。 雲のくだりで詩に寄せてきている作為を感じたが、 絶妙なチョイスで、いやらしさはなく、 誰が読んでも景色のあるものへと導いている。 http://breview.main.jp/keijiban/?id=1782 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 優良作 右利き 次郎 全体の「ひだり」の分量が適切な気持ち悪さで、引き込まれる。 2連目はもっと練ってよい。 「先生」の存在はすごく重要になっているので、推敲したらぐんと良くなるはず。 (あと、「額」→「顎」関節では?) 「ひだり」側も丁寧に配置すればもっと引き込んでくれそう。 http://breview.main.jp/keijiban/?id=1739 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 優良作 入院 5or6(ゴロちゃん。) 小品集のようにも読めて、それでいてそれぞれテイストが違って 繰り返し読める。 タイトルの「入院」がキーワードになっているので、 描いていないのに心情の変化が追え、テイストが変わっても違和感がない構成が秀逸。 ただ、「入院」についての独自の視点で出発したのに、 「今」の最終連に向かって少しずつ普遍的な描きになっていって、 そこが惜しい。 http://breview.main.jp/keijiban/?id=1721 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 推薦作 何もできない日 山本琴煢 「共感」したというのはあるが、 それでいて、無駄な語がないというのは上手な点。 一緒にもぐっていける詩だったら、きっと逆に誰かに「推薦」したいとは思えなかったかもしれない。 単純に、大事にしたい。 http://breview.main.jp/keijiban/?id=1813 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 推薦作 はだか 峰 ひろ樹 改行やあいだが多い詩は、なかなか引き込まれないつくりのものばかりですが、 この詩ではとても有効で、整っている。 ぎりぎり、教訓系のものとは別ジャンルになっていて、 切り口は古いが、普遍的に読める質まで届いている。 http://breview.main.jp/keijiban/?id=1795 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 推薦作 ラブ・ラプソディ 渡辺八畳@祝儀敷 構成がきれい。 海のくだりで一層、もっと質的に読ませてしまっても、いいのでは。 このくだりの「私」が現実の読者を脅かすか、距離感を縮めるか、なにか親近感があれば、 全体の構成に意味を読者が勝手に見出せるまでになりそう。 http://breview.main.jp/keijiban/?id=1768 http://breview.main.jp/keijiban/?id=1769 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 推薦作 Elegy R 「【四】」までは大好きで、なによりも、読める読めるぞ感があってどんどん読める。 そこを越えると、少し教訓めいてきて、広げた想像力の風呂敷を少しずつ否定されてくる。 たぶん、「死」を描くには、あいだの過程がもっと必要で、 死生観へテーマをいざなうためには、材料が「【五】」より前にもっと欲しい。 単品ではどれも読めるだけに、もっと丁寧に掘り下げたくなる。 http://breview.main.jp/keijiban/?id=1754 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆ おわりのあいさつ 5月は本当に面白くて、次点ではあと25作くらいありました。 そして僕も詩人として、自らの書けるものを省みるきっかけになりました。 詩専門の評論家が現世に降臨しないものでしょうか……。 なんにせよ、詩が好きです。と思えるので、継続していきたいです。 かるべ
【フル】かるべまさひろの選評<2018年5月分> ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1224.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
作成日時 2018-06-06
コメント日時 2018-06-30
私の詩を推薦していただいてありがとうございます! 選評、胸にじんわりきました。
0優良作に推していただきありがとうございます。 もう一作のほうにはコメントいただいていたのでこちらはお気に召さなかったかなと思っていたら。まさかの! 私は5月の投稿作をまだひとつも読めていないのですが、かるべさんがおもしろかったなら読まねば!と思いました。これからがんばります。
0入れていただき有難う御座いました。拝読後に自らを省みてみますと、なるほど確かに旨味を逃しているなこいつは!と爽やかな学びと気付きに出会いました。頑張ります。
0みなさん、 選評にコメントをくださり、ありがとうございます。 なるべく、時間の取れる日に、コメントまでつけていきたいなとは思っているのですが、コメント欄が盛り上がっていたり、自分以外の人が言いたいことを8割方言ってくれているとサボってしまうことがあります汗 自分の変なポリシーで(というより冷静な目線でいたいため)選評は意識してわざと上から言葉にするので、失礼があるやもと思っておりますが、 何卒よろしくお願いいたします。
0おはようございます。フル選評、お疲れさまでした。読み方は異なりますが、いくつか被りましたね。5or6(ゴロちゃん)さん、こうだたけみさん、峰さんも、それぞれに印象に残りました。こうだたけみさんはみんな『名づく』でしたが、私は『遠路、あるいは遠雷』でした。 とりあげたかったものはたくさんあるので、絞りこむにつれて難しくなるのがホント悩ましいのだけど、それだけ豊富で多彩なことを証ししているのかもしれないですね。 それにしても、「ずるい」って笑。
0選評ありがとうございます。 件のくだりですが、あそこが一番普段の詩作のトーンに近い部位でしてね。てか半ばセルフオマージュ(https://ncode.syosetu.com/n7632dt/)でもある。 他の箇所が独特であるが故に、ここを本腰入れてしまうと一箇所だけこなれていて浮いてしまうかなと危惧しまして、あえてデチューンした次第です。
0かるべさんへ コメントがなかったのに選ばれた謎が解けました。ありがとうございます。 もしこの選評に入れてもらえていなかったら、かるべさんが「名づく」を評価してくれていることを、私は知る由もないのだなあと思ったりしました。入れてもらえてよかったです。 そうそう、私も五月の投稿作を全部読んできました。お、と思ったのが四作あったのですが一つに絞りきれなくて、結局、選評は書けませんでした。強いて言うならこれかな?って推すのはどうも違う気がして。 選評って、どうしたら書けるようになるんでしょうかねえ。 藤一紀さんへ コメントに私の名が! 思わぬところで言及していただきありがとうございます。 「遠路、あるいは遠雷」にはかるべさんしかコメントをつけてくださらなかったので、藤さんが同作を評価してくださっているとはつゆ知らず。うれしいです。コメントつかなくても読んでくれてる方はいるんですねえ。ありがたい。
0みなさん、 コメントもまたおもしろいですね。おもしろかったので詩を書きましたので、投稿します。(『妖精 down』) 僕もいつかは、大賞候補作該当なし的な感じでぷーぷーと。 たぶん、僕のは「評」とは若干違うニュアンスなのだとは思います。 絞っていくのは、自身の精進のためというところもあるかなと思います。ながく、芸術関係におりましたので、「評価」の無感動さ、有意義さ、どちらも触れて参りました。この場が、詩歴を問わないというところに依拠して、本当、楽しんで辿り着かない系の茨の道を踏んでいるだけかもですね。 デチューンにはなるほど、と納得の思いでございました。ここからは、もう漫画や小説の編集と同じで、いろんなバージョンを比べてみたくなりますね。その意味で、詩人さんは全国出版する際、編集さんとなにを会話するのでしょうね。未開拓のおもしろい世界がありそうです。 やはり、その意味では詩人なのです。 選評を書くより、詩を書いていたいんですもの。 いろいろな立場で今は楽しいのです。ありがとうございます。ほんとうに。
0遅くなりましたが、選評ありがとうございました。 当初は三段落で終わる予定が五段落+1になってしまい、長過ぎるかと不安でしたが、「どんどん読める」といって頂けて、嬉しいです。機会があれば、また今回のような長い作品にも挑戦してみようと思います。 ところで、「死」を描く為に必要な「あいだの過程」とは何でしょうか……?
0R 様 コメントをありがとうございます。 かるべの死生観にも依拠しておりますので、実際は一概なことではないと思いますが、「死」は星の数ほどの質的な側面があるかなと思っております。 (どの題材も同じように)「死」を扱うとき、向き合わざるを得なくなるには、香りや材料などと僕は例えるのですが、読解するためのキーワードや言葉の運び方や実際の作者の背景や時事的なものなど、欲しいのです。 なぜ創作物が必要なのかの一つの意見で挙がるものに、受け手の想像力を根拠にするという意見があります。想像力があるから、たとえば「レモンが美味しい」というよりも「レモンを爆弾のように思えてわくわくする」みたいな内容に色々な人が食いついて考える入り口になるのかなと。 その上で、僕が読んだ上でなのですが、「死」が少し唐突に現れたように感ぜられたのです。 もちろん、その一面もあるのが「死」だとも思うのですが、もし少し唐突な「死」であったら、僕には発見済みの感覚が呼び起こされるのみだったのです。 もちろん再発見は大好きなのですが、それまでが僕には新発見の感覚で読み込めるつくりと内容でしたので、些か残念に感じてしまった、という気持ちでございました。 独特な観点か、普遍的な観点か、 そんな解釈もあり得ますが、「あいだの過程」と表現しました「香りや材料」のようなものがあと一段落分くらいあると、より深く読めるのかなと思いました。 僕は長い詩も、展開があるものはわくわくしてしまうので大好きです。 反対に今度は少し短めのものも僕は挑戦してみようかと思います。 ありがとうございます。
0返信ありがとうございます。 なるほど。死との距離感が違ったようです。 >「死」は星の数ほどの質的な側面がある まったくその通りだと改めて感じました。 私は、幼児期から自分の死を含め、死についてを考ていたので、死は向き合うまでもなく空気のように身近なものであり、同時に特別な魅力も感じていました。それは作品に描いた場面よりも前からで……作中では死は身近にあるものという感覚しかなかった為に、唐突と感じさせてしまったのかもしれません。 実は【三】【四】は後付けで、投稿後にも【六】を足したりとしてみましたが、前提を仄めかすという発想はありませんでした。「香りや材料」について、また改めて考えてみます。 ありがとうございました。
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