銀河は恐らくまっすぐで - B-REVIEW
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ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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銀河は恐らくまっすぐで    

視認していないから分からないが 恐らく広大である海原に、 真っ青な矢印がぶっ刺さっている。 あの、矢印である。 今日は曇りだから冴えて見えた。 彼は酷く反抗的で、 それは青少年によくあるアレではなく、 イヤイヤ期に似た根源的なものだった。 瞳に大粒の涙を浮かべながらも、 ゆっくりと確実に水面を抉っていく。 鋭い先っぽは我儘で、 魚たちは溜息を吐きつつそれに身を委ねる。 鱗は剥がれ、身は捌かれ、 矢印はしてやったりと言わんばかりの 満面の笑みでそれを眺める。 僕は海岸にいた。 厚顔無恥なそれを眺めていた。 なんとも感じていなかった。 何故ならそれらは僕にとって伝説であったからだ。 今にも崩れそうな褪せた書物に、 軽やかすぎる明朝体で書かれていた。 しかしあまりにも現実離れしたそれは 社会生活での会話の中でまるで、 「ミーム」として扱われていた。 嫌いな奴を「矢印」と呼び、 被差別者を「青」と呼んだ。 それは風が吹き枝葉が揺れるように、 それは雨が降り癖っ毛がより絡まるように、 必然であり当然だった。 僕らは否定のメタファーを歓迎していた。 なんなら喜ばしいとまで思っていたはずだ。 愚かであることは確かだがそれは、 もう僕らの歴史の一つであったのだ。 恐らくそんな愚かな僕たちを、 あの矢印はずっと影から眺めていたのだろう。 そしてこちら側、 人を捌く側になりたかったのだ。 私は私の意思とは裏腹に逃げ出していた。 立ち入り禁止のこの海岸で、 かつて航海で流れ着いた先進国の徒による略奪で 大量の市民が血を流したとされるこの海岸で、 私は否定というよりは悲劇のメタファーを体現していた。 砂浜に打ち上げられたクラゲに足を取られ、 阿呆みたいな転け方をし、 強かに体を打った僕の口に砂が混じる。 不味いとか不快とかそんなこと考える余裕はなかった。 そんな僕の頭の中に浮かんだのは自分の家の庭の防空壕だった。 今時一家に一つはあるだろう、君もわかるはずだ。 日に日に被害は増している。 僕ら住民はそろそろこの街を追われるだろう。 この海岸に来たのも先月焼夷弾でぽっかりと穴の空いた穴から、 空を眺めるのが嫌になったからであった。 僕は砂利を吐き、体制を持ち直し、 息を切らして走り続けた。 走った。何故だろう。 別になんとも感じていたかったはずだ。 UMAの特集ページが常におどろおどろしく書かれていたからか? いや違う。僕はいつでも傍観者だった。 平穏たる生活を取り戻したいと思ったからか? いや違う。それらはやはり否定に満ちている。 僕の体を矢印の影が覆い出す。 刺される刺されるさされるさされるさされるさされるされるされるされる!! 『宇宙は全方位に広がり続けているが、僕らの生活はどうだろうか。やはり歩き疲れて立ち止まり道草を食い、そしてまた歩き出す道だ。その隅々に種を植えそれらが芽を出すならそこは銀河に似た何か。紆余曲折などこの世界にとっちゃどうでもいい。真っ直ぐだ。何もかもを突き刺し、ぽっと出の歴史を殺す殺人鬼だ。彼を魅力的だと言ってしまったから、もうそれは美しい銀河になってしまった。エリオ、そこのミルクをとってくれ。僕は今喉が渇いてたまらないんだ。』 ふと僕の頭上で何かが光った。 世界は白と黒になった。 それは古い書物でも昨日のニュースでも紹介されていなかった。 未知の何かだった。 ぴかっっ、とそういう音がするはずはないんだけど、 もうそう感じざるを得ない眩しさだった。 救われるはずもなかった。 罪深かった。 ようやく家の庭に足を踏み入れた時私の皮膚は、 鱗もないのに、 すぅっと表面を出刃包丁で剥ぎ取られた感覚に陥った。 水が恋しくなる燦々だった。 僕は自転も公転もせずただ、 干物のイカのように地面を泳ぎ、 尖った先っぽを彼に差し出した。 もう一度、ぴかっと光り街を照らした。



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銀河は恐らくまっすぐで ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 8
P V 数 : 380.5
お気に入り数: 0
投票数   : 1
ポイント数 : 0

作成日時 2025-04-06
コメント日時 2025-04-08
#現代詩 #縦書き
項目全期間(2025/04/14現在)
叙情性0
前衛性0
可読性0
エンタメ0
技巧0
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構成0
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 平均値  中央値 
叙情性00
前衛性00
可読性00
 エンタメ00
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閲覧指数:380.5
2025/04/14 08時11分32秒現在
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    作品に書かれた推薦文

銀河は恐らくまっすぐで コメントセクション

コメント数(8)
レモン
レモン
作品へ
(2025-04-06)

そうですね。 ファーストインプレッションは、 米津玄師の「プラズマ」。 あと何度か、 イメージがフィットするまで読んでみたいです。

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レモン
レモン
作品へ
(2025-04-06)

「矢印」が、色々と変化してゆくように思います。 一つのイメージで読んでいたのですが、 どうも違う。 いちいち書きませんが、どんどん変化していき、 最後は原子爆弾。 読むほどに、怖い詩だなと思いました。 ありがとうございます。

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おまるたろう
おまるたろう
作品へ
(2025-04-08)

いちぶ観念語が出てきますが、それはらりるれろさんのなかでは確固たる確信があって、使っているのかもしれないですけれど、読む方からすると「よくわからん」ですね。もっとヴィジュアリーなものが欲しいのですけれど、この作品は野郎自体なイメージに頼り過ぎていて、読む方からすると押しつけがましいだけかもしれないっす。せんぜん絵が浮かんでこない。

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おまるたろう
おまるたろう
作品へ
(2025-04-08)

野郎自体→夜郎自大

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らりるれろ
らりるれろ
レモンさんへ
(2025-04-08)

レモンさん、コメントありがとうございます。精進します。

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らりるれろ
らりるれろ
おまるたろうさんへ
(2025-04-08)

おまるたろうさん、コメントありがとうございます。まだ技量不足で夜郎自大な詩になっていると思うのですが、どのように改善していけば良いでしょうか。具体的な指摘等していただけるとありがたいです。厚顔無恥なお願い、すみません。

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おまるたろう
おまるたろう
らりるれろさんへ
(2025-04-08)

らりるれろさんの年齢にもよりますが、お若いのであれば、ライター業などをやるのはお勧めですけどね(素地としての筆力は十分あるように思います...)めちゃめちゃいい修行になりますよ。

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おまるたろう
おまるたろう
らりるれろさんへ
(2025-04-08)

あと、詩人の全詩集を徹底的に読むとか。そういう経験は一度は必要と思いますね。

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