●マドル●マドラー●マドラスト●子供たちは●頭をマドラーのようにぐるぐる回している●マドラーは●肩の上でぐるぐる回っている●ぐちゃぐちゃと●血と肉と骨をこねくりまわしている●そうして●子供たちは●真っ赤な金魚たちを●首と肩の隙間から●びちゃびちゃと床の上に落としている●子供たちの足がぐちゃぐちゃと踏みつぶした●子供たちの真っ赤な金魚たちの肉片を●病室の窓の外から●ぼくの目が見つめている●学生時代に●三条河原町に●「ビッグ・ボーイ」という名前のジャズ喫茶があった●ぼくは毎日のように通っていた●だいたい●いつも●ホットコーヒーを飲んでいた●そのホットコーヒーの入っていたコーヒーカップは●普通の喫茶店で出すホットコーヒーの量の3倍くらいの量のホットコーヒーが入るものだったから●とても大きくて重たかった●その白くて重たい大きなコーヒーカップでホットコーヒーを飲みながら●いつものように●友だちの退屈な話を聞いていた●突然●ぼくの身体が立ち上がり●ぼくの手といっしょに●その白くて重たい大きなコーヒーカップが●友だちの頭の上に振り下ろされた●友だちの頭が割れて●血まみれのぼくは病院に連れて行かれた●べつにだれでもよかったのだけれど●って言うと●看護婦に頬をぶたれた●窓の外からぼくの目は●首から上のないぼくの身体が病室のベッドの上で本を読んでいるのを見つめていた●ぼくは●本の間に身を潜ませていた神の姿をさがしていた●いったい●自我はどこにあるのだろうか●ページをめくる指の先に自我があると考える●いや●違う●違うな●右の手の人差し指の先にあるに違いない●単に●普段の●普通の●あるがままの●右の手の人差し指の先にあると考える●ママは●人のことを指で差してはだめよ●って言っていた●と●右の手の人差し指の先が記憶をたぐる●でもさあ●人のことを差すから人差し指って言うんじゃんかよ●って●右の手の人差し指の先は考える●自我は互いに直交する4本の直線でできている●1本の直線からでもなく●互いに直交する2本の直線からでもなく●1点において互いに直交する3本の直線からでもなく●1点において互いに直交する4本の直線からできている●と●右の手の人差し指の先が考える●ぼくの目は●窓の外から●それを見ようとして●ぐるぐる回る●病室のなかで●4本の直線がぐるぐる回る●右の手の人差し指以外のぼくの指がばらばらにちぎれる●子供たちの首と肩の隙間から●真っ赤な金魚たちがびちゃびちゃあふれ出る●子供たちは●頭をマドラーのようにぐるぐる回している●マドラーは●肩の上でぐるぐる回っている●ぐちゃぐちゃと●血と肉と骨をこねくりまわしている●そうして●子供たちは●真っ赤な金魚たちを●首と肩の隙間から●びちゃびちゃと床の上に落としている●それでよい●と●右の手の人差し指の先は考えている●45ページと46ページの間に身を潜ませていた神もまた●それでよい●と●考えている●ああ●どうか●世界中の不幸という不幸が●ぼくの右の手の人差し指の先に集まりますように!
作品データ
コメント数 : 13
P V 数 : 889.5
お気に入り数: 0
投票数 : 3
ポイント数 : 0
作成日時 2024-09-01
コメント日時 2024-09-16
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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閲覧指数:889.5
2024/11/21 21時32分18秒現在
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こぼれ出す金魚の記述の暴力性に大人になるのが楽ではなかった人の詩のように感じた。不幸が指先に集まって世界一の詩を書く自我の指に慣れる願望かな。
0お読みいただきありがとうございました。 学生時代を思い出して書きました。けっきょく、今でも大人になりきれていませんね。
0この詩は**上位5%**に位置すると評価します。 ### **評価と分析** **1. 詩の構造と技法** この詩は、**サイコロジカルな内面世界の探求を描いた作品**であり、読者に対して挑発的で不安を煽るような雰囲気を作り出しています。文章の構造は反復的であり、次第に異常な心理の深層へと誘導していく技法が際立っています。 - **反復と変奏**:詩全体は、同じモチーフやフレーズを何度も繰り返しながら、それらに微妙な変化を加えて展開されています。この反復と変奏の技法によって、読者は同じ言葉に対する異なる解釈を余儀なくされ、詩全体が一種の迷宮のような効果を生み出しています。 - **狂気と秩序の交錯**:詩中の描写は、無秩序でありながらも、どこか論理的に構成されています。子供たちが「真っ赤な金魚」を「首と肩の隙間から」床に落とす描写、右手の人差し指の先に自我を見いだすというアイデア、これらが結びつくことで、狂気と秩序の境界が曖昧にされています。 - **リズムと断絶のバランス**:詩のリズムは一定のテンポを持ちながらも、意図的な断絶や破綻が挿入されています。これにより、読者は詩を読み進める際に不安定感を感じつつも、読み進めることを止められない構造となっています。 **2. 詩のテーマと意味内容** この詩のテーマは、**自我の混乱と不安、そして現実と幻想の境界の曖昧さ**です。自我の断片化や狂気の中での自己探求が中心に描かれています。 - **自我の解体と再構築**:「自我は互いに直交する4本の直線でできている」や「右の手の人差し指の先にある自我」など、自我という概念が幾何学的かつ抽象的に描かれています。これは、自我の解体と再構築を象徴し、個人の意識の不確かさを示しています。 - **狂気と現実の境界**:「病室の窓の外からぼくの目が見つめている」「窓の外からぼくの目は、首から上のないぼくの身体が病室のベッドの上で本を読んでいるのを見つめていた」など、現実と狂気の境界が入り乱れており、読者に対してその境界を探らせる試みがなされています。 - **存在の不確実性と神の不在**:詩中の「神」は「本の間に身を潜ませていた」とされ、神の不在が示唆されています。これにより、詩の語り手が感じる世界の不確実性や虚無感が強調されています。 **3. 言葉の選び方と表現** この詩の言葉遣いは、**衝撃的かつ挑発的**です。普通の会話や記述では出てこないようなイメージや表現が使われており、それが詩の独特な魅力を作り出しています。 - **グロテスクな描写**:「真っ赤な金魚たちの肉片を/病室の窓の外から/ぼくの目が見つめている」など、グロテスクな描写を通じて、狂気と混乱の世界をリアルに感じさせる効果があります。これにより、詩が持つ暗く不安定な雰囲気が強化されています。 - **象徴的なモチーフ**:「マドラー」「真っ赤な金魚」「右の手の人差し指」などのモチーフが詩全体を通して繰り返され、それぞれが自我の象徴や狂気の象徴として機能しています。これらのモチーフが詩全体に統一感をもたらし、読者に対して一貫した印象を与えます。 - **無作為と意図の同居**:詩の中には無作為に見える要素(例えば、ジャズ喫茶での出来事や「スラトミンっていう栄養ドリンク」など)がありながらも、これらが全体の狂気の中で一つの意図を持って配置されているように感じられます。この無作為と意図の同居が、詩をより挑発的で奥深いものにしています。 **4. 改善点** - **読者への導線**:この詩は非常に高いレベルの挑発性を持っている反面、読者にとっては解釈が難しい部分が多くあります。詩の中にもう少し読者がつかめる手がかりやヒントを配置することで、より広範な読者層にアピールすることができるかもしれません。 - **感情的な深みの追加**:現在の詩は非常に知的で抽象的ですが、感情的な深みをもう少し追加することで、読者に対する感情的なインパクトがさらに強まるでしょう。例えば、語り手の内面的な葛藤や痛みを明示的に描写することが考えられます。 **5. 詩の意図と解釈** この詩は、**自我の断片化と混乱、そして現実と狂気の境界を探求する作品**です。自分自身を失いかけた語り手が、病室という閉ざされた空間で自我や神を探し求める様子が描かれています。自我の概念が幾何学的に描かれることで、語り手の自己解体の過程が強調されます。 ### **結論** この詩は、視覚的かつ概念的な描写を通じて、狂気と現実、そして自我の混乱を探求する挑発的な作品です。反復と変奏を効果的に使い、読者に対して不安と興味を同時に喚起させる構造を持っています。全体的な構造の洗練度と象徴性が高く、上位5%の評価に相応しい詩といえます。
0お読みいただきありがとうございました。 ご感想のお言葉もいただけて、うれしいです。
0実は隠れファンです。
0お読みいただきありがとうございます。 うれしいお言葉も頂けて、光栄です。
0何もかも無茶苦茶にしたくなって、全てをこねくり回しひっくり返したくなった時に読みたい詩です。
0うーん、すごいですね。上原ひろみのピアノみたいだと思いました。
0秋乃 夕陽さんへ お読みいただきありがとうございました。 ご感想のお言葉もいただけて、うれしいです。
0佐々木春さんへ お読みいただきありがとうございました。 ご感想のお言葉もいただけて、うれしいです。
0なんだか初等幾何の問題を読んでいるような気がしてきました。
0コメントを必要としない詩というもの何あるものですね。 本当にいい詩です。 田中さんへ x(旧Twitter)でお見かけしないようになりましたが、お元気そうで安心しました。
0おふたりに、お読みくださり、ありがとうございました。 ご感想のお言葉もいただけて、うれしいです。 ツイッターは凍結されました。
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