ふと見ると
縁側の洗濯棒に
一匹のトンボが止まっている
わたしが近づいても微動だにしない
その姿は張り詰めた緊張感で
神々しくさえ見える
繊細な模様を見事に浮き彫りにした透明な翅
胸から遠慮なくすらりと伸びたきゃしゃな細長い棒状の腹など
それらすべてが美的な形姿の中にある
わたしは思わず
その雄姿に見とれてしまった
なんとこれだけで十分に
自ずからなる自然そのものではないか
そういえば
ある高名な詩人が自然を称して
水際立っていると表現していたが
このトンボの雄姿も
それに一歩も引けを取らないのではないか
それにしても
この円い大きな目玉は何だ
その余りの大きさに顔には収まり切らず
勢い頭上にまで競り出て
グロテスクな球体を欲しいままに晒している
知識によると
この目玉なるものは
単眼が数十万も蝟集して
精巧極まりない複眼を構成しているとか
自然の造花とはなんと大胆にして
繊細かつゴージャスなことか
最前から身動き一つしないのは
独り泰然として太古の夢を食んでいるからに違いない
いまは昼下がり
トンボよ 好きなだけ午睡を愉しめよかし
作品データ
コメント数 : 4
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作成日時 2024-06-24
コメント日時 2024-07-16
#現代詩
#縦書き
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2024/12/04 02時11分25秒現在
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讃美歌のような重厚感のある詩で上手いなあと思いました。タイトルは思い出せないのですが、萩原朔太郎が女性を賛美する詩がこんな雰囲気を持っていたような気がして思い出されました。
0これだけでは昆虫図鑑の説明みたいだ、せっかくきれいに書けるのだから。「ただ私が近づいても」これだけじゃないか?勇姿に見とれたり脳内で考えたりする、その私自身ももっと引き立たせ動きを与えてあげるといいと思うよ。トンボは静、自身は動みたいにすると、ぐんと詩が生きてくると思う。
2こういうふうに外部に目をこらして語ることが 意図しなくとも迂遠に自分を語っているという詩の語り口は リラックスできるし、我のつよいばかりのオレがわたしが調の 詩よりはるかに程度がいいと思っています。 かつてはふつうだったはずなのに最近少なくなった。 この作品の場合、精度を上げるために余計な言葉や副詞を削るというか もっともっと自分を出すのを抑えることでもっと なにか見えないものが見えてくるような気がしました。
0昆虫の模写をした中学時代を思い出しました。上手い人はホントに上手くて、こんな細かいとこまでよく表現できるなと驚いてました。作者さんも、何気なく止まっているトンボをここまで観察できるなんてすごいです。きっと絵心のあるお方に違いないと、勝手に推測している次第です(笑)
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