私がどのように苦しみ、どのように悩み、どのように愛そうと、それによって世界は形質を変えてはくれず
私たちの眼球が、こぼれ落ちる
それに、喝采する
喝采する
喝采する
白けた顔の、喝采するひとたちの
それはどこにいる人の声なのでしょう
私の周りにいる、いないのに、それが
何度も手を打ち鳴らす音を、首吊りの
多分首吊りに似ている色の、ひとつなはずで
青い、と形容している
空がそれほど青くないと知った日に
それは知ったことであるのかと思いながら
腹の奥の虫の数を数えていたんですよ
本を読みなさい、と言われました
絵を描きなさい、とも
走れ、とか、傘をさして出かけなさい、とか
その言葉の出どころは、もうよくわからないのに
曖昧模糊としている、あなたも、あなた方も
私も、我々も
もう、全てが面倒くさい
星を数えている人は
死なないんだって
星を数えている間は、絶対
だったら、私は、いったい何を数えているんでしょうか?
虫、虫です、虫ばかり数えて
いつの間にか自分の比喩が全部無視になっていたことに気づいた
虫のように皮膚の下を這いずり回る
苛立ちと、不安と
存在を否定されたような気がする
そんな春に、私は
虫にように痙攣する指先に、虫のように濡れた唇を、重ねたのは、虫の
虫のようでした
虫がいる、いるのだから
もうスマホを閉じた方が良い
だってあなたは、誰にもハッシュタグをつけてもらえていないし
デマゴーグどもみたいに、言葉を震わせることも出来ないでしょう?
じゃぁ、
馬鹿馬鹿しいにも、程がある
馬鹿馬鹿しい
馬鹿馬鹿しい
馬鹿馬鹿しい、本当に
メンタルがどうとか、そんな安い言葉言いたくない
安い言葉を言いたくないと思うこと自体が、安いことなのかもしれませんが、もう
生活は、3円の方のビニール袋に収まっちゃうんだもん
プライドは、顔のような模様の虫だ
鏡の中で、膨張する
自傷行為に似せて、ミミズを配置していくように
ハッシュタグを、添付して
ハッシュタグになりたかった
私は、私の名前を読んで欲しかった
そのために生まれ、そのために言葉を話して
馬鹿馬鹿しいにも、程があるだろう
くだらない
じゃぁなんでこんな肉を引きずって
こんな骨を引きずって
皮ばかりぶくぶくと余らせて、川の淵を歩いているんでしょうねぇ
月が腐っていて
太陽も萎んでいるのに
臭い、臭い泥の川辺を
嫌味ですか?それは
ふふふふふ、
私は、嫌いだな、と思って唇を噛んだ
老婆がいる
痩せこけた老婆
笑っている
困ったように、笑っている
私はまだ、何も言っていないのに
何も言っていないのに、変なことを言った時みたいに、喉奥から
苦笑しているのは、私を侮っているからなのだ
ふざけるな
ふざけやがって
私は、老婆を鞭で打擲しました
私は何度も、老婆を打擲しました
手に持っているのが、自分の手だと気づいた時も
鞭だ鞭だと、言い聞かせて
あのね
全部筋繊維ですよ
ボロボロの、もうあなたはボロボロで
多分あなたがあなただと思っているのは、そこのマネキン人形ですよ
誰だ
誰
ふふふ、
ああ、
嫌いだなぁ、と思いながら
爪の先に、力を込める
爪が剥がれると、剥がれる時が一番痛くて
治りかけが一番辛い
辛いのと痛いのは、違うんだ
痛みには、耐えられない
でもそれは、劇的なものではなくて
老婆は、息をするのもやっとのように
うずくまっていた
ごめんなさい
でも
私はじゃぁ、ねぇ?
それを、写真に撮られていた
ああ、それは心霊写真なんですね、と
当たり前に理解すると
色褪せた、画質の悪い写真に映る私は
もうどこまでも曖昧模糊としていて
馬鹿馬鹿しいにも、程があって
暗いなぁ、ほんともう
光をくださいと、涸れた喉で言うことすらできない、希釈された、
この言葉は、誰かに名前を読んでもらうために、吐いたのに
なぁ
私ってなんなんだよ
私って、そんなに大切じゃないのかよ
当たり前ですよ
当たり前なんですかね
そりゃ、
私の名前なんて、私自身一回も読んでないもん
どこに行ったって同じだよ
私は、
老婆を打擲する
老婆を打擲する
老婆を打擲する
どうしたら、終わりか知らないから
それを、苦しいよ、と言わないために
嘘つき
言えなかったから、私は今老婆を打擲しているのだ
馬鹿馬鹿しい
遺言にもならないじゃないか、そんな言い訳は
月が青い、
月が青いと言っているのに月はちっとも青くない
腐っていく
青色は、そもそもこの世界には存在しないんですよ
どこにも存在は、しないんですよ
それは、私の名前みたいだった
遺言は、
いつか残すと、決めていたのに
それは
猿のまま、人間の目をしていた
猿のまま、人間の手をしていた
それで
猿のまま、人間じゃなかった
猿のまま、人間を逃げていった
私たちなんて言って
恥ずかしくなかったんですか
これは全部、私のことなのに
冷たい、何故か床が
冷たいのだから、お終いにしないと
幕を下ろすのは、いつも偶発的なこと
少しのことと、寂しさで
猿のまま、血を拭って
全部捨てたくなるのだから
糸を切るように、沈黙する
猿のまま、虫を漁って
何かを押し戻すように、虫を食う私に
老婆の苦笑が、引き笑いで
ほんと
馬鹿じゃないかしら
作品データ
コメント数 : 6
P V 数 : 680.6
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作成日時 2024-05-27
コメント日時 2024-05-31
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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2024/11/21 22時30分49秒現在
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社会は人の集まってできる群生生物だと言いますが、社会を肥やす食べ物も人間なんだと思いました。名前をもち、名前を呼ばれる事は動物の共通項ではありますが呼ばれる事を求めるのは人の特権ですね。猿は人の居住地と山を行き来する境界を跨ぐ者と聞きますが、人の認識によればまた概念的にも境界を跨げるのですね。 この詩は精一杯生を再定義して生きているように思われて凄く美しく感じました。
0内容は、延々とドロドロしてるのですけど、 メディアの仕事ってもっと荒涼としているというか、 殺伐としてるので、 わたしの実体験(昔、ウェブの会社で働いてたもんでして...)と照らし合わせると、 やっぱり、タイトルミスってませんかね?って気がしました。 天才の考えてることは凡人にはわかりません。
0老婆とは今ある葛藤の元凶や対象として。それは己自身でもあり他人から見た自分であり自分から見た他人であるとおもった。ですから人というものは滑稽なものですね。というおはなし。この老婆がまた肥えているのかやせ衰えているのか、それは読み手の中での答えのようなもの。簡単にある心の仕組みに読み手を引くことができる「Twitterでバズってる時だけ生きた心地がする」このtitleがあるからこそ、より読みて自身が揺さぶられ惑わされる気がします。けれどきちんと己の現実を見ることもできるわけですね。なにを求め戒めるかどう読み取れるのかは、読み手次第なのでしょう。 前半だけにすれば冷静な発露になりすぎ、後半だけではお話のようになる。接続するにあたってtitleを置いたのかなと勝手にわたしがそう思うだけです。まあ相変わらず巧いですね。自分にはかけないスタイルなのでとても興味湧きます、おもしろかったです。
0老婆の打擲場面が印象的なのですが、遺言にもならないと。全部筋繊維ですよなど印象的なフレーズがあるのですが、全般的に読むものを選ぶ詩なのかもしれません。
0才能を感じます。 丁寧な展開から溢れるポエジーに掴まされ、文学的な酔いを味わえます。作者が影響を受けた作家の名を知りたくなりました。ドストエフスキーでしょうか。 難点を挙げるとすれば、大きな飛躍が不足していることと、消化不良であることです。老婆を打擲するという際どい表現が見受けられますが、もっと際どさを攻めてもよかったのではないかと個人的な感想ですが、期待しています。
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