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東風
水溜りに陽がきらきらと あたっている あの人は タイムリミットを着替えたまま いってしまった 瑞雨の中 優しい名前をもらって 小春日和 43時間まえに わたしを おねいさん、と小さな声でよんだ こどものように わたしは 目覚めて 報った ああおかえり、と呟いた 鳥に自由を着せて 川に永遠を履かせて わたしたちは 順次ゆく 今夜はカレーと言えば 鶏小屋から一羽の鶏が消え 頭をちょん切られ 小屋の外にしばらく吊るされる 滴る血は どうしたんだっけ? 家の形はなく 甕が帰る場所を探していた あなたが おばあさんでも わたしは あなたの おねいさん 愛も恋も知らないボタンが 小さな口を二つづつあけて 囁き合うように あなたの居ない空間が 移動することなく縫い付けられて ただよい はじめる また はじめる すべてを もとどおりではなく すべてを 換気扇の羽根が 鶏のかわりに排出する 血脈は 透明な鶏冠になり すべての ものごとを 風にさらす
東風 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 917.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-12-01
コメント日時 2017-12-20
項目 | 全期間(2024/12/22現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
はじめまして。コメントさせていただきます。所々にとても気に入ったフレーズがありました。特に、 愛も恋も知らないボタンが 小さな口を二つづつあけて 囁き合うように これ、最高にいいですよ。とても気に入っちゃいました。とても可愛らしい。小さな恋のメロディみたいで好きです。また次回作読まさせていただきます。
0三浦果実さま はじめまして。 お読みいただき、ありがとうございます。 気にいってくださり、ほんとうに嬉しく思います。 これからも、よろしくお願いいたします。
0東風 に 瑞雨 ・・・ですから、春の景、と読みたいのですが、晩秋に投稿された意味を、考えるべきなのか、どうか・・・ 全体に、やわらかで風が吹き通うような自由さが溢れていますね。たっぷりとられた余白。 言葉が、優しい輪郭をもって・・・色彩は鮮やかなのに、具体的な関係性は曖昧なまま置かれていく感覚は、なんとなく、岩崎ちひろの絵に似ているかもしれません。 〈タイムリミットを着替えたまま/いってしまった〉ひらがなの優しさ。「逝って」しまったのかもしれない、でも、既に芽吹きの、再生の予感が秘められている。それが、春先のこと、として・・・ 〈小春日和〉ここで、今の時空に戻る、ということか・・・(春、つながりで導き出された言葉、かもしれませんが) 43時間前、という、微妙な設定。具体的なようでいて、中途半端な、宙づり感に誘われる時間。 おねえさん、ではなく、絵本の文字を指で追いながら読むような「おねいさん」・・・幼子に戻ったひとの、甘えるような呼びかけを思いました。 意味を追う、詩ではないのかもしれませんが。〈わたしたちは 順次ゆく〉〈あなたが/おばあさんでも/わたしは あなたの/おねいさん〉鶏をつぶして食す、という自給自足的な田園地帯(あるいは、語り手が幼児の頃に脳裡に刻まれた、「おばあちゃんの家」での風景)が織り交ぜられ、〈鳥に自由を着せて/川に永遠を履かせて〉美しい詩語で彩られた、永遠への憧れが中途に置かれ・・・。 祖母への哀悼詩、と思いながら拝読したのですが、もっと大きなものを迎え入れるかのような詩想を背後に感じました。死、そして再生の予感(というより、願い、と呼んだ方がよいのかもしれませんが) 〈愛も恋も知らないボタンが/小さな口を二つづつあけて/囁き合うように〉愛も恋も知らないまま逝ったひと、への想い、と読むのは・・・さすがに読み込み過ぎか、と自制しつつ、あえて「愛」「恋」という甘い言葉を持ち込んで、それを否定するあたりが、気になります。ボタンホールを彷彿とさせつつ、ボタンが外れた後の空虚が〈囁き合う〉ような不思議。 具体的な関係性や時系列を読み取ることは出来ませんでしたが、あえて「させないように」曖昧に置かれた言葉を、そのまま、宇受け取った方がよい作品だとも思うので、無理に「物語」を読み取ることはしないでおこうと思います。 〈あなたの居ない空間〉を、このようにささやかなものに凝縮して、なおかつ軽やかに〈ただよい/はじめる〉と手放すように扱う、繊細な手つきに惹かれました。 前半の、光がきらめくような明るさと、ふわりと「なにか」が再訪してくるような予感・・・それこそが、東風、なのかもしれませんが。あるいは、梅の香りと共に、祖母のイメージに重ねているのかもしれない。思い起こせよ、と・・・後半の、首を切られた鶏の鮮烈な映像・・・時間感覚が上手くつかめないのですが、ここは、先に書いたように、過去に強烈に刻み込まれた「死」のイメージの挿入として読みました・・・この転調。 幼子に戻る「おばあさん」の景を経て、鶏の羽のイメージに換気扇の羽根が言葉で呼び寄せられていく。鶏に象徴されるような「死」のイメージを排出していく、そんな意識が終連に込められているように感じたのですが・・・もし、そうであるなら、若干、意図が先行しているのではないか、という感覚も覚えました。 〈帰る場所を探〉すという文言はあるものの、「本来、還るべき場所」を探している、という切実さよりも、死後、永遠という場所に放たれていく、というような、不思議な開放感を感じる作品でした。
0なんだか、本当に、不思議な感じがする、とてもきれいな詩のようで、底の方が見えない沼? みずうみ? のような感覚もあって。 澄んだ不気味さ? 不気味という感じでもなく。 こういう、感想の書けないもの、というのはとても独自性の高いものだと思います。 前の作品にあった、 「放尿」と「アンズ」のように 「吊るされた鶏」と「風にさらされる」、現実では眼がとめられずに伏せられるものと、ロマンチックな詩に登場する言葉の対比が、とても、とても好きです。 ファンです。楽しみにしています。
0まりもさま お読みいただき、コメントをありがとうございます。 岩崎ちひろさんの絵、だいすきです。とても嬉しく思います。 この詩を書いた季節は〈小春日和〉の冬でした。ちょうど今頃。 なのですが、あの時たしかに私の周りには春の風が吹いていたんですね。 静かな病院の一室では、あるひ唐突に向かいのベッドが空になっていく。 一方通行の夢見るような〈おねいさん〉という言葉を投げかけたまま… そのことにより、〈わたしたち(私)〉は〈順次ゆく〉という現実を知っていきます。 本当は、あなたは私かもしれない… 愛も恋もしらずに、許嫁と言われる人と結婚し、子どもをつくり、一生を終えるのが普通だった時代があった。 その頃には、ここに出てくる鶏のように、死は身近にありながらも、命をいただくことを神妙に、静粛に受けとめていた気がします。 深くお読みいただき、ありがとうございました。
0田中修子さま お読みいただき、コメントをありがとうございます。 私は、自分が長い詩を読むのが苦手なこともあってか、 ふわーっと書き始めて、すこしいくと、ちょっと余所見をするように違う情景を見てしまう癖があるようです。 あるいは、現実逃避的なものかもしれませんね。 それが、前作の「アンズ」であったり、今作の「ボタン」であったりするようです。 ボタンは特にだいすきな素材なので、わたしの詩には沢山でてきます。 いつも、お読みいただき、ありがとうございます。
0小器用すぎると思いました。技術がたくさんおありなんだろうと思います。だからこんな言い方になってしまってもうしわけないんですが、力点が分散していってしまってるような気が率直に言ってしました。すごくいいポエジーがあると思ったんです。でもちょっと途中でわからなくなってしまいました。もっと勇敢に作詩してほしいと思いました。言ってることが伝わるといいんですけど
0コーリャさま お読みいただき、コメントをありがとうございます。 とてもハッとさせられました。 心臓がどきどきするくらいに。 わたしが、こちら側で一文字一文字を紙に刻みつけるように印していても、それは読み手には届かない場所のできごとであるという、本質のようなものを突き付けられた気がしました。
0正直感想欄がエグすぎて、書ける事がないですね。多分心の中にずっと残ると思います。12月の作品、上から作品読んでいってる所なんですが、心の琴線に触れながら、一番考え込んでしまっています。作品もここでやり取りされている言葉も、つまりは作品も作者もレッサーも、凄いです。感想になっておらずすいません。
0行間を詰めて冒頭からの流れをもう少し意識してもいいのではないだろうか。空間が多すぎる。 そのほうがわたしの胸には響く気もします。美しい流れの文章だから。 よく見かけますが、意味もなく無駄に行間を空ける詩が多いような気もします。
0hyakkinnさま お読みいただき、コメントをありがとうございます。 気持ちに触れられるところがありましたら、幸いです。 アラメルモさま お読みいただき、コメントをありがとうございます。 具体的なアドバイスに感謝いたします。 内省したいと思います。
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