牛と接吻、それはもううんざりする。 - B-REVIEW
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ことば

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花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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牛と接吻、それはもううんざりする。    

ロースト・ビーフを取り分けたきみは、赤ワインを煮詰めたソースをかけて、血液みたい、と言ったのだけれど、ぼくはほんとうに血液に見えて、むしろ血管に流れているのは煮詰まった赤ワインなのだった、と思いだしたように言うと、バースデイ・パーティーに参加していた周りの大人たちは、冷たい目を浴びせた。 ロースト・ビーフを噛むときに、うまくにおいが取り切れていないと、たとえば月桂樹の葉っぱとかローズマリーとか云々の、そこら辺に生えたものじゃない、植物も一緒にオーブンのなかへ放る、などしていないと、どうしても広がるのは牛のいる、嚙みちぎる乾いた土地のなか。 ぼくの腕の薄皮を、一枚ぺりりと剥ぐと、またあたらしい皮膚の、みずみずしく液がにじむようすを、観察することができる、実際、理科室の棚を開けるときには、振動がビーカー、ガラス棒、ペトリ皿、伝わるのを防がないといけなくて、それはパーティー会場の、メイドがひくリネンカートに、回収された、乾燥したポテトサラダ、変色したパイン、オレンジ、萎れたブドウ、が詰まったビニール袋の中身を、ごろんごろんと転がしていく、振動は食物に伝わって、波打って、絵の具パレットの上にあるかのような景色。 きみは、ぼくにハッピー・バースディと言った、ひとつ、数字を増やしただけで、ぼく自身何も変わったようには、思わない。 けれども、叔父さんや叔母さんや、あちらのテーブルにいた白髭のご婦人、赤髪の紳士――、初対面の人たちも、口をあわせてハッピー・バースディと言った、なにも知らないくせに。 母は、父は、そんな人たちとぺちゃぺちゃ喋って、あらひさしぶりねマユミちゃん、とか、ゴルフで何ヤード飛ばした、だとか。 そうしてきみは、あらためてぼくに、ハッピー・バースディと言った。



牛と接吻、それはもううんざりする。 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 2
P V 数 : 752.2
お気に入り数: 0
投票数   : 1
ポイント数 : 3

作成日時 2022-06-21
コメント日時 2022-06-22
#現代詩 #縦書き
項目全期間(2025/04/14現在)投稿後10日間
叙情性11
前衛性00
可読性11
エンタメ00
技巧11
音韻00
構成00
総合ポイント33
 平均値  中央値 
叙情性11
前衛性00
可読性11
 エンタメ00
技巧11
音韻00
構成00
総合33
閲覧指数:752.2
2025/04/14 07時47分29秒現在
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    作品に書かれた推薦文

牛と接吻、それはもううんざりする。 コメントセクション

コメント数(2)
よんじゅう
よんじゅう
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(2022-06-22)

もっと長いものを読みたいです。

1
太季伊廊
よんじゅうさんへ
(2022-06-22)

読んでいただき、ありがとうございます。 確かに、この長さでは消化不良なところがあったな、と思っています。長篇詩には、いつか挑戦してみたいですね。

0

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