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実像の閾、形而下の輪転
耶蘇の血を享けて 水栓の無い洗礼槽 壜詰の葡萄 滴る細緻なその花蘂に 市場は四方の闌を 聖霊窒息の真昼に副えて 臙脂色の恒星を指す 天文台に観測された 対称形を呈す 菫色の地球を姿見の闇に浮べ 蟷螂偏愛の果て 乾燥標本の砂を噴く 酢酸結晶に咽喉を突く 永続のシャムの嬰児 縺れ縺れて臍帯の如く 鉄の鉄砲百合を鋳る レダの鼻梁を深く窪める双眼に 水滴の針振れては 乳液瓶を注ぐ 海峡の霧鐘塔は幾多 乱れる緑の、狂気を構えながら 慈雨が額を打つ (ここを通り過ぎる者は一切の希望を捨てよ、と言ったのはだれ だっただろうか?) 人工石の町、鉄筋建築の薄黒い花 アーチと無修飾の柱が列なるこの町では、 或る時間から止まったままに影が磔けられている 石の薔薇の比喩は誰にも押し並べて鉱石の年齢紀をもたらすだろう 気がつくのには速過ぎたのか 町が沈む、 揺蕩う燈は昼のものでは無かったがために宙吊りに列なったままであり、 燃焼反応の化学変化を残して 物象はみな形而上へと沈む、 それは外的観察のなかでは屡起こる現象であり 遠近に青年の硬い彫塑が六面体へと切断されて 動物から静物へと 忙殺の後刻へと還るのだった 時計を残し時計塔は沈み 傾きながら概念の花の不思議へもどるのみだった 枯れた、花垣の、遠近の不可視の夕蔭は 赤い町に液化した壁に 無花果の花でもくれて遣るがいい、 実象を求めて塵灰になった 分類綱目の生物遺伝子学が 核分裂の竈に抛られた その始終の末を苛みながら それそのものを声は決して記述し得ないだろう 時間は在るだろう 時間は在るべくして無いだろう 時間は在りながらも時間は無く 時間は、その光芒は空間が在るその前から在ったのだ
実像の閾、形而下の輪転 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1464.3
お気に入り数: 2
投票数 : 0
ポイント数 : 2
作成日時 2021-01-17
コメント日時 2021-01-28
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 1 | 1 |
総合ポイント | 2 | 2 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 1 | 1 |
総合 | 2 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
むっっっずっ!!!意味を追いかけられないです。まず読めない漢字が多すぎて音を楽しむことすらもできません。どこまでも「読み」を拒絶している、拒絶の北極に到達した作品ここに在り。しかし何故か作者さんの作品投稿を心待ちにしている自分もいる。辛うじて朧気でありつつも分かることは、 (ここを通り過ぎる者は一切の希望を捨てよ、と言ったのはだれ だっただろうか?) “ ここを通り過ぎる者は一切の希望を捨てよ”は「夜と霧」でアウシュヴィッツだったかナチスの強制収容所の門のアーチ部分に掲げられている言葉ですね。詳しくは分かりませんが、それ以前にもルーツがあったようです。誰が言ったのでしょうね、ダンテ?いつもながら難しくて読めないです。当該作品について語れる言葉が少ない自分を呪います。感覚的に書かれた作品としても、教養が違いすぎて立ち尽くすことしかできないというか、巨大な城が薄い霧の中で聳えているのを遠くから眺めていることしかできないのですが、見れてよかったなと思います。いつもそんな読感が残ります。
0読感→読後感 誤字脱字失礼しました。
0お久しぶりです。 私は鷹枕可さんの作品では、これは実際はどういうことを指しているのかとか、自分なりに読解するとか、そういう現実に縛られずに、ただ世界観に浸ります。異界で遊んでいるような気分になります。SF小説にのめりこんでいるときの感覚ですね。 でも、ずーっと以前から拝見しているので、たしかに意外とその時々の世相に対して批評が含まれていることもあるから、きっとこれもかな、とか。すごいなあって思います。
0類様へ。ご講評を賜り嬉しく存じます。 私には、教養はございません。有るのは教養への飽くなき憧憬ばかり、でございます。 そして、その様な拙作を読んで下さります方が、いらっしゃるという事の、掛け替えのない幸いを深く、噛み締めております。
0田中修子様へ。お目をかけてくださり、心より、嬉しく存じます。 特に高邁な思想、などはございませんから。ただ愉しんで頂けましたなら、僥倖でございます。
0時間は在るだろう時間は在るべくして無いだろうにのところでこの登場人物は時間に忙殺されているようで時間を支配していると思いました
0福まる様へ。拙作にレスポンスを賜り、嬉しく存じます。 時間の事を。考えておりますと。汲めども尽きぬ不思議が、興趣を伴って。さこそ、時間を忘れてしまうものです。 実は時間とは、その存在を何れにも有しないのではないか、等々。 昔から、夙に突飛な宇宙論が好きでございました。 万物が流転をするものならば、事象の中心といった物は存在しないのではないか、 或は総ての事象が或る特異点から発展をしたものならば、全てが事象の中心の一部なのでは、とも。 中心も辺縁も無い地平、それが形而的空間としての宇宙‐像なのかも知れません。 一部が全体を含む、と言う事。
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