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溶けた氷像
氷でできた彫像たちは 雲一つない快晴にきりりと映えるけれど 冬にしては珍しいその太陽に当てられてしまったせいで そのからだを溶かしてしまいます 金賞を受賞したらしいある氷像は 土台とその付近の装飾をのこして ばらばらに崩れて瓦礫みたいに横たわる その像に付けられたタイトルは「家族」 そのお隣さんでは ユニコーンの角が折れそうに痩せ細って グリフィンの凛とした翼は端から溶けて丸くなり ドラゴンの勇ましい牙からはだらしない涎のように 小さなつららからびちゃびちゃと水を垂らす 彫刻家の手を離れてしまった彼らは はじめの姿にはもう戻れずに 儚いというにはあまりに無様な終焉を 有象無象のカメラの中に納められて記録されてしまう はじめの姿を知らない僕たちは 彼らを助けてやることはできないのです
溶けた氷像 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2079.1
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 24
作成日時 2020-02-08
コメント日時 2020-02-25
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 11 | 7 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 1 | 0 |
技巧 | 4 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 7 | 1 |
総合ポイント | 24 | 9 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 2.2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.2 | 0 |
エンタメ | 0.2 | 0 |
技巧 | 0.8 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1.4 | 1 |
総合 | 4.8 | 4 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
悲しいはずなのですが、頭の中では可愛らしいアニメーションで再生され、何故かちょっぴりほっこりしちゃいました。
0淡々とした、散文にも思えてしまうような、レポートみたいな客観が切なさを引き立てるなと思いました。
0雪祭り 現れ消える 九相図よ (雛祭イベントで、五七五調でコメントしてます。) https://www.breview.org/forum_blog/archives/668
1奥間空さん ありがとうございます。想像してみたらたしかにちょっと可愛いかもですね。
0眠莉さん ありがとうございます。単調になりすぎたかもしれません。意識したわけではありませんが、レポートみたいという表現がとてもしっくりきました。
0> 儚いというにはあまりに無様な終焉を 「儚い」という言葉が持っているイメージとして、「美しい」や「可憐な」というものをまず思い浮かべますが、この作品の儚いものは儚いが故に残念な姿になっているようですね。そこに「理想と現実」のようなものを感じました。 > はじめの姿を知らない僕たちは > 彼らを助けてやることはできないのです この2行はとても大事なことを言われているような気がしてとてもドキッとしました。なんだか忘れらない言葉です。
0ユニコーン、グリフィン、ドラゴン。幻想上の生き物も哀れな姿になりますね。ショックだなあ。氷でつくられたからだといえばそれまでだけど、銅像だって時間という太陽に晒されるうちに溶けたり崩れたりはなくとも変化してしまうわけで、作られたものというのは残念です。「家族」もまた幻想の一つと考えてみると〈幻想像〉を現実にしようと汗水垂らしてこしらえようとする私たち人間もひとりずつの彫刻家なのかもしれません。それさえも崩れる時には崩れてしまうという点ではとても儚く、人間の悲哀を感じます。それでもなお幻想を抱き、作るだろうということに考えがいくのですが、それは作品の範疇を出る気がするのでやめておきます。 華美な表現こそありませんが、磨きがかけられ整っていて、氷の彫像のような作品に感じました。
0人間を照らす存在であるはずの太陽が、氷像の「家族」には致命傷。 作られたばかりの時は最高値だったのに、どんどん下降して、やがてなくなってしまうまでの過程の不可逆性が印象的でした。
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