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あこがれて渇求
あの時の保健室のあの子は、どうしてる? 5時のチャイムは無視して馬鹿みたいな空色。 朝顔は咲かないって知ってる。 本を読んでいた。誰かに見つけてもらいたくて。でも誰もいなくて、よくわからない形が、ぼくの眼球に触れ、傷を付けていった。 席も、目線も、触れなかった手も、存在も、許されないけど存在していた。 好きだよって肯定してあげたい傲慢。かなしさをずっと許さない。 馬鹿みたいな空色がプールサイドに混じる。全てが曖昧になって、眩しいふりをした。 ねえ、スティックハイライトはどこに射すの ああこれって 夏 ?
あこがれて渇求 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 911.6
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-04-16
コメント日時 2017-05-05
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
このタイプの詩は作者のセンスが悪いとけっこう悲惨なものになるんだけど、「あこがれて渇求」は安心して読めた。良い意味でラノベとかボカロ曲っぽい感性だと思う一方、昔の「コバルト文庫」的だなという気もした。ところで、語り手は保健室の子となんやかんやしたのだろうか(なんやかんやは、なんやかんやです!)。それがちょっと気になった。でも保健室は、けっこう人が入ってくる確率が高いので落ち着かない。やっぱり体育倉庫がオススメ(どうでもええ ちょっと大変かも知れないけれど、こういう路線でもう少し長い作品が読みたいと思った。
0カッキュウ、という言葉の響き、全体の弾けていくようなリズム。 若さだなあ、と「あこがれ」を、まずは感じます。スティックハイライトがわからず、思わずググってしまった・・・化粧品ですか?眼の下(泪袋、とか?)あたりに入れるハイライト・・・こうした小道具で、一気に女子高生感が出る、のかなあ(小道具に、即座にピンと来る、人であれば。) 冒頭の三行、これが素晴らしい。 あの時の・・・あの子・・・馬鹿みたいな空・・・朝顔は咲かない・・・ Aの響きを響かせながら進行していく。いきなり、朝顔は咲かない、と、理由がわからないまま断定されて、そこに納得してしまう勢いと力がある。 「好きだよって肯定してあげたい傲慢。かなしさをずっと許さない。」 このあたり、すごく新鮮でかっこいい、のですが・・・最果タヒ風、と感じるのは、なぜなんだろう。真似してるとか、そういうこと、を言いたいのではない、けれど。 好きだよって・・・という始め方、かなあ・・・。 ぼく、が男の子でも女の子でもいいのですが・・・この作品、登場人物は一人?ふたり?その判断に迷いました。もう少し、人物の造形をくっきりさせてもよいかも。
0今までのおよそ紺にてさんの作品で一番好きかも。保健室や寂しく本を読む様子など、題材が相変わらず若々しいのですが、私的には、それが上滑りでなく、短い中にもしっくり纏まってきた印象があります。しかも、紺にてさんの持ち味である独特の嫌みの無い切れ味の良さはちゃんと維持されているのが、良い。 鋭く踏み入る1連目、独特の表現の中にも素直な気持ちが滲む2連目、3連目というか最後のちょっと突き放した感じが格好良い。 ただ、最初読んだときは「おっ」と思ったのですが、何度か読むと、最初のインパクトが無くなる分、ちょっと面白みが減ってしまう気もしました。難しいですがメリハリは保ったまま、読ませる部分みたいのも出来てくると、より長く味わえる作品になるかも…などと思いました。
0記述にたどたどしい部分があるが、それが反対に初々しさを増している。 >馬鹿みたいな空色がプールサイドに混じる。全てが曖昧になって、眩しいふりをした。 というフレーズで一回落としに向かっているんですよね。 これでエンディングでもいい、という風に感じる。 >ねえ、スティックハイライトはどこに射すの >ああこれって 夏 ? で、もう一度落ちているが、このたどたどしさが強みなのでしょうか。 三十のおっさんには >席も、目線も、触れなかった手も、存在も、許されないけど存在していた。 このフレーズに涙腺をもっていかれます。
0まずタイトルが格好いいですよね。目を惹かれる。 それでいてこの文章構成と最後のラスト二行は、紺さん(およそ紺にて、という名前もとても格好良いですね)を示すサインのような、 フォーマットのようで羨ましいです。この形だけで作者が分かるってすごい。 内容の方は思春期を匂わせる読後感でした。 特に二連目から溢れ出る思春期性が広がって自己肯定感が希薄な感じがすーっと表面を覆っていく。 けどその希薄ささえも、馬鹿みたいな空色から射す光によって、白飛びして輪郭や存在がぼやけてしまう悲しさ。 「保健室」も「白色」を連想させます。 「保健室のあの子」というなんだか神秘的で少し触れてはいけないような、事情を抱えていたとしても、それすらぼやけて「あの子は、どうしてる?」と薄れてしまう。 「僕=保健室のあの子」なのか、それとも別人なのか。いったい誰が、誰に、あこがれて、何を渇求しているのだろう。 どちらにせよ関係性が交じり合うことはなく、「好きだよ」って承認することもできず、「かなしさをずっと許さない」だけが残っていく。 全てが曖昧に薄れていくのに。 そういうものだけが残る後味を「ああこれって 夏 ?」と〆てしまえる切れ味のよさが素敵でした。
0>本を読んでいた。誰かに見つけてもらいたくて。でも誰もいなくて、よくわからない形が、ぼくの眼球に触れ、傷を付けていった。 ここが面白い。「眼球に触れ、傷を付けていった」という発想。眼球は渇求の音をうまく踏襲しているゆるい繋がり。と、同事に、 >朝顔は咲かないって知ってる。 >ああこれって 夏 ? ここら辺も面白い。朝顔が咲かないっていう裏切りとか、思い出したように「夏」をぶっ込んだり。各連の尻で暴力をふるって、それがうまく余韻みたく聞こえるというのか、ちょっと耳に痛い感じがする。こういうのが青春っぽかったりする。「好きだよって肯定してあげたい傲慢。かなしさをずっと許さない。」から「馬鹿みたいな空色がプールサイドに混じる。全てが曖昧になって、眩しいふりをした。」プールにに飛び込む所なんか見事だ。 「目」のイメージを起点にしながら、各連の空白の隙間とイメージの飛躍具合をかろうじて繋げながら作品として成立させようとしていく気概が感じられて、素敵だと思います。「ねえ、スティックハイライトはどこに射すの/ああこれって 夏 ?」こうやって読み手に呼びかけるように作品を閉じるのもいいですね。
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