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最終章ーウリエルー
いざなみは いざなぎを どこまでもどこまでも 執念深く追いかけ続けた いざなぎを逃すわけにはいかない わたしの最も醜い姿を唯一見た存在 何度赦しを請われても 決して赦しはしない! 追いかけ続けて 始末する …………………… 私は私の腹の底の底に 何か隠れているのを感じてた どんどん私を下ってゆく 最初に現れたのは 山ほどもあるドラゴン 憎々しげな目で私を睨み どんなものでも焼き尽くす火を吐く 私は火に焼き尽くされ 黒焦げになり炭となった 最初に再生するまでは時間がかかった もう怖い! これ以上、先には進みたくない! 私は怖くて怖くて震えながら よろよろと生暖かい粘着質な壁を 掴んで歩いた 次に現れたのは 巨大ビルほどあるコブラ 毒の泡を滴らせ 噛まれれば苦しんで死ぬ コブラは冷たい目で私を睨み 邪悪な歓びに震えながら 私を噛んだ 五臓六腑が生きながら爛れてゆく 筆舌しがたい痛みを越える痛みにのたうち回り 私は狂って死んだ いったい何を考えているのだろう 性懲りもなく 私は再び生き返った 楽しくなり始めていた 死んで生き返るの繰り返し 射精をする快感を遥かに越えてる 私はニヤリと不敵に笑った ヤツは冥い方 冥い方 闇よりなお冥い所を好む 私は何度もつまづいて転び 身体中の骨が折れ曲がっても 構わず進み続けた 目が段々馴れてきた 冥い しんそこ冥い そこにいた ちっぽけな ぶるぶる震えながら 「助けて!助けて!」と大声で喚き散らす憐れな小人 しわくちゃで情けない姿で ぶるぶるぶるぶる震えている すっかり呆れてため息が出た こんな矮小なもののために 私は何千年も怯え続けたのか さて、どうやって息の根を止めよう… 小人を睨みながら考えていると 憎悪が段々沸いてきた 貴様、よくも私の運命を悉くねじ曲げてくれたな 貴様のせいで、とことん苦汁を舐め尽くした ただ殺すだけでは足りない じっくり じわじわ 少しずつ少しずつだ 私の味わった苦汁をほんの少し オマエにも味わわせてやる 私は猫がオモチャを見つけた時のように 目を輝かせながら飛び掛かろうとした 「!」 ウリエル! 先ほどまでのドラゴンもコブラも消え失せ 代わりに大天使が現れた! 何故だ! 何故!あんたがヤツを庇うんだ! それが何を意味するのか解っているのか! 私は、この魔が長いこと私自身を支配し尽くし あたかも私自身が魔であるとすっかり信じきっていた ウリエル あんたが死ななければならなかった理由も こいつだ! あんたの羽根を残酷に捥ぎながら あんたを凌辱したコイツを忘れたのか! それとも アレが良すぎて あんた 情が移ったのか! 怒り狂って問い質す私に ウリエルはただ 微笑むばかり 涙が溢れた こんな絶望を味わうために生きてきたわけじゃない! ミカエルに ただ会いたい 会いたい一心で 糞を舐め 尿を飲み 必死で生きてきたんだ! あんただって逢いたい筈だ あんたの唯一無二の番じゃないか! ウリエルは、少し考え やっぱり幸せそうに微笑む この売女!あばずれ!ゲス!醜い豚が! 後から後から あらゆる罵りが沸いて出た ウリエルは哀しそうな顔で全ての罵りを受け入れた 私は、とことん絶望して 深いため息を吐く いいか、ウリエル あんたがそいつをどうするか知ってる それがそいつを唯一封じ込める手段だからだ ブラックホールの彼方へ押しやれば そいつは出た先で再び巨大化し あらゆる災厄となる スーパーノヴァの焔でも そいつは焼かれない 新しい世界で再び巨大化し 世界を汚染する そいつは私になら殺せるというのに 何故、庇う? さっさとキレイさっぱり殺して ミカエルの元に帰ればいい どれほどミカエルがお前を待ち続けているのか 知っているのだろう? ウリエルは一つ頷き やっぱり微笑んだ …それが、あんたのこころからの望みなら やれよ あんたは正気じゃないが やりたければやれよ 私の気が変わらないうちに!早く! ウリエルは冥い冥いそこで 一瞬 天を仰ぎみて くちびるが動いた 聲は聴こえなかったが 何て言ったか解った ミ、 カ、 エ、 ル それはウリエルが一瞬逡巡した絶望だった ウリエルは 黙って 魔 を飲み込んだ どれほど時間が経ったのだろう 時間なんて陳腐なものは もう意味がなかった 私は人間として 横たわっていた 生まれたばかりなのに 全てを知っていた 絶望! こんな絶望があるのか? 私は拳骨が折れるまで地を殴り 頭が割れるまで、壁に頭突いた 口のなかに血が流れ込む それがまさしく人間である実感となり 喉が枯れるほど号泣した 雷に撃たれたような突然の閃き! 私は意地悪く笑った 「ミカエル!よく聴け!今からあなたを呪う! あなたは今から人間に堕ち、苦界に堕ち、 辛酸を舐め尽くす。 その後、人間として、人間の私に出逢う!」 私は高らかに笑った これで完成だ これは確信であり 真理であり 神や悪魔がどれほど偉大であっても 決して逆らえないルール とうとう 私は出し抜いた! よくやった! 誰かが そう言って 私は赤ちゃんみたいに必死で泣いた 終わりの始まり 始まりの終わり。
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最終章ーウリエルー ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 177.2
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2025-04-01
コメント日時 2025-04-06
項目 | 全期間(2025/04/07現在) |
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叙情性 | 0 |
前衛性 | 0 |
可読性 | 0 |
エンタメ | 0 |
技巧 | 0 |
音韻 | 0 |
構成 | 0 |
総合ポイント | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
2025年2月7日 記す。 自分自身の「思い入れ」が、最も強い作品。 果たして、単なる思い込みなのか?伝わる何かがあるのか?
0HALLOヘローこんばんは。 「五臓六腑が生きながら爛れてゆく」 この詩の熱量好きですぞ 笑顔。
1アリガトウ。救われた。
1南無阿弥陀仏
1この気配は覚えがある。 クトゥルーのクラーケンだ。 なぜ、邪教の類いが“ウリエル”を欲しがるのか…
0和洋も宇宙をも超えて壮大な物語に魅かれました。最後に人間に転生しても憎しみが続いていく(?)のが泥臭くて良いなと思いました。
1そうですね。 人間ウリエルの「呪い」は、愛として描きました。 愛もまた「呪い」そのものなので。 壮大と言って下さり、 とても嬉しいです! ありがとうございます!
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