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からだとわたし
生れたときは わたしがなく からだだけがあった そのからだが 悲しいときは 泣くが泣き 嬉しいときは 笑うが笑った そこに 主語はなく からだだけが 深く信じられていた ところが そのからだも 瞬く間に 関係性の渦に巻き込まれた そして あろうことか 作用をもたない基体としての わたしという 主語が捻出された これは わたしにとって というより 人間にとって もっとも象徴的な出来事の一つであった なぜなら 人間にとって もっとも 根源的であるからだよりも これが つまりわたしが優先されたのだから いま わたしをみずからとし からだを おのずからとしたとき 果たして このわたしが からだの代理として 勤まるもかどうか それはむりだ といきなりどこかから 声がかかる気がする それには このわたし自身も じゅうぶんに頷ける よくも 知らずして かくも長い年月 用を足して来たものだ からだに関しては 無意識の世界というのが もっとも 適切な言葉ではないか それにしても 知らないということが かくも 円滑に働くのは からだだけの からだにおける 一大特徴ではないか それだけ からだは内に 不可思議な世界を宿しているのだろう それに いま一つ 見逃してはならないことがある それは からだなるものが わたしより 遥か前から存した ということだ このことの意味は はかりがたく大きい なぜなら ことさら理性を強調するわたしに 不可称不可思議不可説を 突き付けて止まないのだから そこには 人間の歴史がある そこには 人類の根源的力がある このとき ふと ある禅師の ある挿話を思い出した それは 道元禅師が中国に赴き 一大事を終えて 無事帰国したときのことだ 桟橋で 弟子にこんなことを訊かれる 何をお土産に持って 帰られたのですか 禅師は即座に応えたという 「眼横鼻直」と 眼は横に鼻は直(たて)にあることを 悟ったというのだ これは驚きである 禅師自身が からだの一部としての 眼や鼻にでもならなければ 吐けない偈である 恐らく 禅師自身がからだになって その眼や鼻にじかに接し このこたえを得たに相違ないと信じる まさに それを可能としたのは みずからを わたしを離れて おのずからに からだそのものに なったためだろうと直観する じうぃ渡り
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からだとわたし ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 318.6
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2025-03-20
コメント日時 2025-03-20
項目 | 全期間(2025/04/07現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
こんにちは。 基本的なことを、 ずいぶん難しく書いてるな、と思いました。 僭越ですが、私は、 かれこれ30年前に、 「私は身体に何が食べたいか、聴くようにしてるよ。そしたら身体が○○が食べたいって、答えてくれる」と友達に話して、大笑いされたことがあります。 きっと友達は、 「それはお前が頭で考えたことだろ」と思ったんでしょうね。 だけど違うんです。 身体の答えは、だいたい意外なもので、 私は、「そっか。この栄養が足りてないのだな」とよく思ったものです。 今でこそ、身体に聴かなくても、緑黄色野菜(私個人の好みではない)が足りてないな、とか、お肉を欲しがってるな、とか、解るようになりましたが、 身体と会話するのは、基本中の基本だと思います。 最後の >じうぃ渡り 不思議なことばですね。 「悟り」など投げ捨てて、あっかんべーをしているように感じました。 ありがとうございます。
0お読みいただき、ありがとうございました。前回は、おっちょこちょいのいたりで、お恥ずかしいしだいです。
0? 前回? お名前をおみかけしたことがあると思い、「初めまして」とは書かなかったのですが、 プロフィールを確認させていただいたところ、前回作はありませんでした。 「初めまして」なのですか? 申し訳ありませんが、キチガイみたいにコメントしておりますので、………もしかして、「おまねさん」ですか? ちょっと、「おまねさん」の作者のお名前を確かめて参ります。
0違いますね。 申し訳ありませんが、 前回作を教えていただけませんか?
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