鰐の子 - B-REVIEW
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ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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鰐の子    

顎の外れた鰐の子が 枯山の麓 阿呆面下げて突っ立って、 奥歯にぶら下げた鈴の根付けが 木枯らしに揺られてチリンチリン お前は歯並びが悪いからと 母は歯磨きを教えなかった 故郷を追われ此の場所に辿り着いた頃には 鈍らの牙は根元でぐらぐら 欠けて抜けての銀の歯が 痛くて痛くて泣いている 余所者の鰐はいつもはらぺこ 差し出されたものは無分別にぱくり 放り込めばなんだって飲み込むさまが 人間は可笑しくて可笑しくて 開きっぱなしの口の中に 腐った野菜やら、落ち葉やら、 小石やら、空き缶やら、レシートやら、 庭に落ちてた虫の死骸まで、 ぱくぱく食べる「足りない子」を見るのは さぞ楽しかろう、気持ちよかろう? 人間が愉快な玉入れに飽きる頃 世界はぴかぴかに輝いて ただこの世で鰐だけが 全てを飲み込んで汚れていた 鰐は食べる、人の悪意を それを悪意とも気付かずに 鰐は食べる、人の愛を それを愛とも気付かずに ぶくぶくと膨れ上がる白い腹が いづれ真っ二つに裂けたとて、 温かい涙を流しながら 鰐は食べる、 食べる、 食べる、


鰐の子 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 4
P V 数 : 599.7
お気に入り数: 1
投票数   : 3
ポイント数 : 0

作成日時 2024-12-16
コメント日時 2024-12-29
#現代詩
項目全期間(2025/04/15現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
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閲覧指数:599.7
2025/04/15 01時24分55秒現在
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    作品に書かれた推薦文

鰐の子 コメントセクション

コメント数(4)
A・O・I
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(2024-12-16)

うますぎる。一票

1
紅井ケイ
紅井ケイ
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(2024-12-18)

この鰐の子の胃袋はブラックホールにつながっているのでしょうか。 昔読んだ星新一のショートショートを思い出しました。

1
おまるたろう
おまるたろう
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(2024-12-18)

孔子に、貪欲な竜の話があって、そいつは世界の全てを喰らい尽くして、最後に無の闇が残ると。 顎の外れた鰐は、与えられたものを飲み込んでいくけれども、神話の竜のように噛むことはできない。不完全。まさしく人間でしょう。 古代中国つながりで思い出した話があった。たしか漢文大系の「大学」だったかな(忘れちゃった)、中庸という概念が登場する。なにが妙って、極端と極端を用意してその真ん中を狙うってことが妙なんです。そこにダブルアジアっていう思想性がある。究極と究極をあわせてその中間を狙うっていう「中庸」が出てくる。めっちゃパンクっすよね。

1
熊倉ミハイ
熊倉ミハイ
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(2024-12-29)

最近、多和田葉子の「雪の練習生」を読んでいて、冒頭で連想させられました。鰐が故郷を追われるって、何だろう。顎が外れていること、世界を食べることも注目ですが、この前半も興味深いです。 ちなみに最終連、「はらぺこ」は満たせられているはずなのに鰐はなぜ食べるのかですが、人からではなく、同じ種の、鰐からの「愛」や「悪意」を食べたかったはずだろうと思います。 では、なぜ故郷を追われたのでしょうか。歯並びが悪くて、歯磨きを教えられず、というところで途端に飛躍して故郷を離れていく。ここが解釈が分かれるところで、魅力だと思います。 肉を食わない、狩りに行かない。この鰐からは野生の本能が抜けていたのだろうと思います。そもそも、人間に懐きすぎですしね。 そんな、生きる本能がないと見なされた、「足りない子」。第三連にはスイッチの機能があって、ここで、人間社会にも「鰐の子」がいることを気づかせようとしてきます。 展開が圧巻です、良い詩でした。

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