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脱皮、あるいは死
鼻水だらけの遊び場をあとにして、美しく整えられたかんばせに、いま、不透明な境界線がはいり、あなたは私とは違う家の子供になります。 幸福になるために疲れはてて、満足するために自らから奪った余白を、足元にはべらせて、あなたは、細く長く白く美しい指先で、その儀式を終えます。 この世界がもう少しだけ素晴らしいところなら、あなたは彼と行かなかったかもしれないのに。 ただ白く、白く積み重ねて、あなたは、天使のように虚ろで、銀紙のようにありきたりなよくある告別式を終えて、 こうなるまでに随分と重ねた肉の層に炎をつけて、力強く、若々しく、ああ、天空に花が待って、鐘の音がなり、ここには何もなくて、君にはすべてがある。 あなたはなにも変わらないという、あなたの中にある魂は今も昔もあなたのままであると、バラはバラという名でなくとも香りは変わらないと、ビンの上になんと書こうとも中身は変わらないと、あなたはそう言って、それでも私たちは、白く澄んだあなたの旅立ちを見ながら、自分の拳がつかむ、あなたの残響に、喪われた肉体に、あなたの名前をつけて、ずっと、ずっと、この体の一部に、とどめておくのだと思います 美しい人よ、君は朝になる。 そして今日に夜が降る。
脱皮、あるいは死 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1239.8
お気に入り数: 0
投票数 : 4
ポイント数 : 97
作成日時 2024-09-04
コメント日時 2024-09-29
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 25 | 25 |
前衛性 | 5 | 5 |
可読性 | 10 | 10 |
エンタメ | 5 | 5 |
技巧 | 20 | 20 |
音韻 | 12 | 12 |
構成 | 20 | 20 |
総合ポイント | 97 | 97 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 25 | 25 |
前衛性 | 5 | 5 |
可読性 | 10 | 10 |
エンタメ | 5 | 5 |
技巧 | 20 | 20 |
音韻 | 12 | 12 |
構成 | 20 | 20 |
総合 | 97 | 97 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
独特な詩だと思います。イメージが浮かびますが、言葉の配置が色々されており、散策する 楽しさがあると思います。ビンの中身の話とか、美しいですし、結婚式を祝福する親の、 感動的な思いが、込められています。全てにおけるクライマックスの瞬間に、言葉で 触れさせてもらえて、良かったです。
0何処か退廃的で物悲しい雰囲気がいいですね★
0人の死を扱った作品であることは明らかだと思います。何度か読み返し、この作品に流れる静謐で、どこか神聖さも漂う雰囲気に浸っていると、意識が冴えるような気がしました。一点、「あなた」と「君」の関係性が読み取れませんでした。仮説として、語り手の感情が高ぶったとき、「あなた」ではなく「君」になるのかな、と考えましたが、自分で言っておきながら説得力が感じられません。
0良いとしか言えない。もう少しエゴが消えてたら、凄いと思うかもしれない。
0楽子さま、申し訳ありません。なんか想像が蔓延りすぎました。とても好きな詩です。これは読解したいとおもえるとても良い詩でした。ありがとうございます。大分曲解し誤読したように思えます。 運営様、楽子さま、問題ありましたら削除申請していただいて構いません 一連目、両親の離婚、姉弟のわかれでしょうか。 二連目はその姉が白いウエディングドレスを引きずり、指先にリングを嵌める、結婚式の様子 三連目は、弟の姉に対しての想いが書かれています 四連目 告別式としっかり書かれています。そして火葬の様子。彼にとっての『天空に花が待って、鐘の音がなり、ここには何もなくて、君にはすべてがある。』というのは、鐘←婚式 花←ブーケ という風に捉えることができ、普通の姉弟の関係ではなかったのではないかと、勘ぐってしまいたくなる。まあただの年の差の問題でもあり思春期の純粋なものだと考えられます。ただいろんなの解釈が可能であると考えました。 5連目から先がとても難しくあるのですが……あなた(姉)が過去にいったことば、そして残された私たちが思うこと。『瓶』は遺骨『バラ』は花束と『白く澄んだあなたの旅立ちをみつめながら』『自分の拳がつかむ』とありますから海上散骨とも想像でき。残響が風だとして流されてしまえば、この連を自分はひとつのムービーとして感じ取りました。 その残響に(喪われた肉体に)にあなたの名前をつけて、自分の記憶として(『この体の一部に』)とどめられる。あなた自身の苦労にみちた人生=『幸福になるために疲れはてて、満足するために自らから奪った余白を(一連二行目)』『ただ白く、白く積み重ねて、あなたは、天使のように虚ろで(三連目)』あなたは死を迎えることであらたな変容を生む、朝としての救い。私のもとに夜として記憶に澄まうこと。その結果、本来のあなたの死は今日として今として、夜として作中のわたしに喪失や闇がのしかかるのかなと。 titleにある『脱皮、あるいは死』脱皮したあと 『朝になる/夜が降る。』とすれば、朝になるとは陽のひかり、希望。では夜に降るとは星のひかりか。死んだら星になるなどというが……脱皮とは抜け殻であり記憶が生きるのか。あるいは消失の死か。蝶や蛾なども思い浮かんだりもしたのが…… 最終連、『美しい人よ、君は朝になる/そして今日に夜が降る。』この部分をうまく言葉に表すことがとても難しい。作中のわたしの心中の複雑さを、それほどの多層の意味が詰まっているように感じられる―― なんども噛み締めながら、読解をした。何よりこの美しい詩に酔いしれるべきだとおもいながら
0ひと夏の 蝉の、抜け殻みたいですね。
0きれいな作品ですね。 死んだかみさんのことを思い出しました。
0自分の結婚式の時の両親の気持ちを考えさせられる作品でした。 >あなたは、細く長く白く美しい指先で、その儀式を終えます。 両親にとっては結婚式は子育ての終わり、娘とのお別れだったのだと。最後にバラの花を父の胸ポケットに飾ったときに、泣き崩れた父の姿を思い出すと今でも切ないです。 >幸福になるために疲れはてて、満足するために自らから奪った余白を、足元にはべらせて、 これは自分の婚活の時の気持ちにとても良く似ていてつい笑ってしまいました。私の住む地域は、姉妹では姉が先にお嫁に行かないといけないような暗黙のルールがあったのですが、妹が先に結婚してしまったので、私は正直焦っていました。結婚することが幸福、というのは、周りに言い聞かされていたものだったし、もう少し自由気ままに過ごしたかった気持ちもあったけど(自由とは自らの余白のようなものと読みました。)、結局自分の意志で結婚を決めてしまった。今は全く後悔していませんが、若い時はそんなこともあったなとノスタルジックな気持ちを思い出しました。 >バラはバラという名でなくとも香りは変わらないと、ビンの上になんと書こうとも中身は変わらないと、あなたはそう言って、 今は仕事上、旧姓のままで結婚する人も増えてきましたね。私は今の姓になってもうだいぶ経ちますが、なぜか旧姓に違和感を感じるようになりました。あんなに家が良かったと思っていたのに、今は今のほうがずっといい。どこか鳥かごにいたような実家での暮らし。窮屈だったのだと今は思います。今日も実家で暮らしている夢を見て、目覚めの悪い朝でした。両親には感謝しているのだけれども、外に出たかったのが本当の気持ちで、父もいつか実家に帰ってこなくなるのかもと思う気持ちがあったのかもしれません。しかし、今も定期的に実家には訪れます。でも正直、義務的にです。自分の子供たちもそうなるんだろうなとさみしく思いますが、自分がそうなのだから仕方ないですね。 >美しい人よ、君は朝になる。 > そして今日に夜が降る。 やはり親の気持ちでしょうか。 自分勝手な読解で申し訳ないですが、色々と思うことができました。ありがとうございます。
一言で言わさせてもらいます。ずるい人。
0感想ありがとうございます。 最近「マリア・ジビーラ・メーリアン 蟲愛ずる人」という書籍を読み、 そこにある生命力と死、好奇心と残酷さ、美と醜、愛と嫌悪のコントラストにとても惹かれました。 ああいうものを、研究者でもない自分が発見するとしたらなんだろうと思っています。 瓶の中は、なかに蟲の死骸が入っていても美しく、 そこに答えがあるのかなと考えています。
1感想ありがとうございます。 退廃を見つめるとき背中には進歩があり、その輝かしさを背中で受けながら、自分の影が映し出す闇を見つめる行為が、良いのかなあと思いました。
0感想ありがとうございます。 あなた、と君、については、離れがたいものが離れたことによって、関係が変わったことを表現したいと思いました。 私、とってあなた、は一部なのですが、君、はもう、私の一部ではないのだろうなと思っています 実際はわからないけど、言葉にそういう意味を感じるということですね。
0感想ありがとうございます。 「エゴが消えていたらいい」 これはよく理解できるところで、以前私の詩の感想で、「たぶん楽子さんの詩は殆どが実際におきたことで、日記みたいなものなんだろうな」と言ってくださった方がおり、だいたいはこれが正解で、 殆ど日記なんですね。 自分の考えていることや、感じていることを、相手に大切にしてもらいたいという気持ちがあるのかも。
0感想ありがとうございます。 読解が難しい部分というのは、私の中でも感情の整理がついていなくて、それを解析することもなくただ何度も比喩を重ねたためだろうなあ…と思いました。 でもそれでも良いのかな、と思う自分がいて、というのもやはりA・O・I様のように、そういった表層を薄く捲ることができる方が、考えてくださるからなのかなと思います。
1感想ありがとうございます。 仰る通りで、イメージのひとつのなかに、蝉の抜け殻がありました。 季節的にも蝉の声が聞こえなくなる頃合いで、私は空を見上げながら、そこに進化と、置いてけぼりになった土くれを思ったんだとおもいます。
1感想ありがとうございます。 きれいな詩、という言葉のあとに、奥さんのことを思い出されるというのが、とても素敵だなあと思いました。 私も好きな人を失っているのですが、 喪った人はうつくしさの中にいてほしいと思います。
0感想ありがとうございます。 仰る通りで、その段は婚活で疲れ果てていた子を思い返しながら書きました。当時私は、そんなに疲れ果てる行為をして幸せな結婚などできるはずがないのでは、と思ったんですが、結局のところ、出会いの嘘など、日常の真実が洗い流してくれるのだと、今は思います。 そしてそれは生きていく上で、私たちは見栄をはるけど、結局はちゃんと真実の姿になってしまうのではないかとも、思いました。
0感想をありがとうございます。 うつくしいものを切り抜いた部分はあるので、そこが狡いのかな、と思いました。
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