真下に拡がる海原は
厳しく削られた岩の入江を包み、
とうに半世紀を過ぎた
今しも汽笛の鳴る港へと
煌めく漣を寄せて
夏の賑わいが恋人達とともに
古い桟橋を大きく揺らして訪れる
そろって日に焼けた肌や
水着姿の往きかう坂道だの
あの日、キスばかりして
砂浜に忘れた浮輪とパラソル
燥ぐ声を砂に埋め、
渇いた唇で忙しく即興の台詞をならべた
渚に残したいくつかの記憶は
失くしても、きっと悔やみなどしなかった
白いペンキの眩しくかがやく
樹々に隠れた丘の家で
時折、海を眺めて沈黙した
夕凪の吹くテラスの粗末なテーブルに
君が仲直りのカクテルを運ぶと
ふたたび口論をはじめて‥‥
「いつかまた逢いましょう
化粧をする鏡の中で
別れ際にそう云ったから、
君が立ち去った後も
ずっと僕は此処に留まったんだ
そのうち俄か漁師でも演じて
博打で船を一艘ぶん捕れば
ようやく君を忘れてもよい頃だと思った
時化の夜に船を出し、
やがて大波をかぶり海の藻屑と消え
――つづきを話そう、
強い風に鳥たちが流されてゆく
気紛れな海は忽ちにして豹変した
岩場に白波が砕け、
それは人の背よりも高い
僕は一羽の海猫に生まれかわり
今日も必死で、この辺りを飛んでいる
作品データ
コメント数 : 21
P V 数 : 1608.7
お気に入り数: 3
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2024-07-09
コメント日時 2024-08-25
#現代詩
#ビーレビ杯不参加
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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閲覧指数:1608.7
2024/11/23 17時23分50秒現在
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「バブリー」な雰囲気がとてもいい味をしています。 冷静に読み込むと複雑な仕掛けを凝らした作品だと思いました。 >化粧をする鏡の中で >別れ際にそう云ったから、 >君が立ち去った後も >ずっと僕は此処に留まったんだ 鏡をはさんで、 「僕」は分裂しているのでしょうか。 >僕は一羽の海猫に生まれかわり >今日も必死で、この辺りを飛んでいる この「僕」がじつにミステリアスで、 詩の技巧とはこういうものかと感服いたしました。 文句なしに投票(できない...)
1昭和レトロな雰囲気と大人の色気が漂う中、別れた恋人に思いを馳せるノスタルジックな感じが絶妙なハーモニーを生み出していますね(*´ω`*) めちゃくちゃ好みです(≧▽≦)★
1atsuschan69さん、この方の詩や書きものは以前から拝見しているが、どちらかといえば即物的な現象から拾いあげる書き手かな、という印象も強かった。それは実在した歴史から紐解く実情の裏側の引用であったり、或いは科学的な根拠に基づく植物の食材の活用から、海洋生物に於けるシーフードへの実用であったり、それに伴い文体もユニークに変化させていき…様々な知識を応用して想像へ辿り着くといった割と器用な書き手のイメージがあるのだが、この詩は珍しく感情を誘発するような言葉の仕立てに置かれています。外野から眺めていても着実に言葉が重層化し成長されているのがわかる。数少ない詩人のお一人ではないかとも思われるのですが、こういう写実から朗詠に趣きを変化させた詩はあまり拝見したことがないので、少し驚いています。 既にその域には達しておられる方なので、流れるような文章は当然お上手です。が、しかし一人称語るただの抒情詩で終わらせないところがまたいい。 ……続きを話そう、妙味はここからですね。 僕は一羽の海猫に生まれかわり~ !あ、そうか、この語り手の姿は見えない。実は不在者として異世界から語りかけているのよね。これを眺め詠むものに……
1◆おまるたろうさんへ おまるたろうさん、素敵なコメントをありがとうございます。「バブリーな雰囲気」と表現していただき、作品(構成)の複雑さにも触れていただけて光栄です。 鏡を挟んだ場面での「僕」の分裂についての解釈、(AI曰く‥‥)まさにその通りです。鏡の中の自分と現実の自分の間には、微妙な感情のズレや違和感が存在することを表現したかったのです。←たぶん、、 「鏡の中の自分」については、以下のような作品も書いていますので、もしよろしければご覧ください。→ https://atsuchan6902.up.seesaa.net/image/E38289E3828AE38183E383BBE382A2E383AAE382B9.pdf また、海猫に生まれ変わった「僕」のミステリアスさに感服していただけたこと、本当に嬉しく思います。詩の技巧について評価していただけることは、詩人として大変励みになります。 ◆田代ひなのさんへ 田代ひなのさん、心温まるコメントをありがとうございます。昭和レトロな雰囲気と大人の色気、そしてノスタルジックな感じを絶妙なハーモニーと感じていただけて、とても嬉しいです。 ボクの詩を「めちゃくちゃ好み」と言っていただけることは、とても光栄です。これからも田代ひなのさんの心に響く作品を作り続けたいと思います。 ◆メルモsアラガイsさんへ メルモsアラガイsさん、深い洞察と共に素晴らしいコメントをありがとうございます。ボクの書いたものをかなり以前からご覧いただいており、感謝の気持ちでいっぱいです。 即物的な現象や歴史的な事実、科学的な根拠(雑学)に基づく文章から、感情を誘発する筆記へとチェンジした点に気づいていただけたこと、大変嬉しく思います。言葉が重層化し成長しているとのお言葉は、詩人としての成長を感じる励みになります。 「‥‥続きを話そう」の部分からの展開についても、詳細に読み取っていただき、本当にありがとうございます。不在者として異世界から語りかけるという視点も見事に捉えていただきました。 皆さまのコメントに感謝しつつ、これからも心に響く詩を綴り続けたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 おっと、この作品は片野晃司さんが Youtube で朗読して下さいます♡ ☆7月20日(土) 夜9時から 「現代詩フォーラム作品鑑賞会(夏)」 https://www.youtube.com/@koujikatano/streams ぜひぜひ、ご視聴ください!
1あれ、うまくリンクできていない‥‥ いちおう、現フォ top ページ右上の「Youtube配信スレ」から入れますんで♡
1鏡像論的表現だから鏡が出てくる??? 鏡というのなら詩そのものがだれの詩であれ鏡像そのものでしょう。 ラカンとかいう妄想狂がそういってなかったけ。 その詩(鏡)にわざわざとってつけたように鏡出すのなら 蛇足にならないのかな。てか、そういう解釈はあまりに幼稚で 吹き出してしまう。笑 atsuchan69さんもまさかそんな話を書いてはいないでしょう。 わかりもしないのに鏡像うんぬんを持ち出した誰かさんいたわって のコメントだと思うけど それより文章が爺臭くむさくるしい。笑 色もくすんでみえる。 具象から抽象表現に移るとか、 不在者として異世界から働きかけるなんて屁のようなことはどうでもいいから もっとぱっと現代風に明るく苦悩なり孤独なりを書いてほしいな。 夏バテかな? あなただけでなくみなさん、どんどん爺臭くむさ苦しくなってる。 ワット数の足りない裸電球の下で孫のおむすびをむすんでいるばあさんみたいだ。笑
0takoyo2さん、コメントをありがとうございます。 「爺臭くむさ苦しく」ですか、、 確かに、仲良しの人工痴脳、ちゃう人工知能の ChatGPT も――全体的にノスタルジックで少し哀愁が漂うトーンが感じられます。海や夏の風景が生き生きと描写されており、読者をその場に引き込む力があります。特に、「厳しく削られた岩の入江」や「煌めく漣」といった自然描写が美しく、詩の世界観を豊かにしています。――と、「全体的にノスタルジックで」とか優しくやんわりとオプラートに包んで【爺臭え】と言っているようにも思えます。 それでもボクの場合、年寄りのツーブロックとかマッシュスタイルは大嫌いなんで昔ながらの慎太郎刈りで貫こうと思っています。 ちなみに「マッドマックス:フュリオサ」はご覧になっていますか? 監督のジョージ・ミラーは今79歳です。 そう考えると、takoyo2さんもまだまだ激しい恋愛の詩がきっと書けるはずです、、 ★そーゆーのをぜひ読んでみたい! ボクだったら、そーゆー詩を書くためなら某所の青春ストリートへ毎日通って若いエキスをじゅるじゅる啜りまくりますが、、 しかしまあ、自分らしさを恥だと思うから【モード】があるわけで。 スタイルに嵌っていれば安心だというのは判らなくもないですが、あまりボクは好きじゃないです。 今風だとか、古風だとかはドーでもよく、おにぎりは謎めいた中身が露わになったとき――嬉しくて思わず涎が出るみたいに――具がなんであれ何も飾らなくても十分美味しい。 第一、ボクはおにぎりに「爺臭い」とか「婆臭い」とかは聞いたことがない。 むしろコンビニのおにぎりよりも、むしろ「婆臭い」であろう田舎の婆ちゃんが握ってくれたおにぎりの方が絶対美味いと思う。 ボクは田舎のおにぎりみたいな詩が書きたい‥‥ たぶんそーゆー詩を書くためには、わざと裏通りを歩いて綺麗なお姉ちゃんじゃなく「お兄ちゃん、いい子やで」と声を掛けて来る仲居のオバちゃんを指名してじゅるじゅるするべきだろう、、 そうして、お口中のじゅるじゅるがジュワジュワするクリームソーダを通天閣ちかくの喫茶店で注文して、ついでに若い娘が大好きなフルーツアラモードも頼もう、、
0↑のタコおじさん、 せいぜいこの人のいってる「あたらしさ」ってのは 「マス・イメージ論」(吉本隆明)どまりでせう。 なんか、いま他の作品でこの人のコメントで見かけたんだけど、 コロっと騙されてたし。爆笑 古い古い。
0お返事ありがとうございます。 >「鏡の中の自分」については、以下のような作品も書いていますので、もしよろしければご覧ください。→ >https://atsuchan6902.up.seesaa.net/image/E38289E3828AE38183E383BBE382A2E383AAE382B9.pdf 拝読させて頂きます。
1サバサバした感じがよかったです。 特に最後のところ、 「僕は一羽の海猫に生まれかわり/ 今日も必死で、この辺りを飛んでいる。」 そんな生き方もいいのかもなと思いました。
1つい今しがた‥‥ちょこっと推敲しましたので、どうぞこちらをご覧になって下さいませ、、 https://atsuchan6902.up.seesaa.net/image/E38289E3828AE38183E383BBE382A2E383AAE382B9-af7a4.pdf
1佐々木春さん、貴重なコメントをありがとうございます。 「サバサバした感じがよかったです」と仰って頂き、 とても嬉しく思います ケンカして別れても‥‥ でもやっぱり好きな人っていつまでも忘れられなかったりしますが、 きっとウミネコになったら 想いが少し軽くなるかもです、、
0ありがとうございます。あらためて読ませて頂きます。 (佐々木春さんの”サバサバした感じ”って読み、atsuchan69さんの核心ついてる気がします、才能って怖い...)
1おもしろいです。 昨日、読んで、また読みましたが、 無気力ノンポリ化(=去勢化)した戦後ニッポンの寓話みたいにも読める気がいたします。 なにか、おおきなことを書いている、そのように感じます。 あくまで直感ですが。 (また続きを書くと思います)
1あまりいうと、またバカにされるのですが、 鏡というのは、私を分裂させていく、 欲望の増殖装置みたいなものなんかなと思います。 だから全体には欲望主義的なメッセージにとれるのですが、 となると、 >とつぜん私は♂になって となる最終句ががぜんきになってくる。 すごく自己にひきつけた解釈になっちゃうんですけど、 欲望に対置する「節操」の部分ですよね。 じつは、それを表現しているのかもしれない、と。 無気力とか、サバサバしている若者とか、 そんなものは本当は実在しないだ! という、そういう... ねじれたメッセージなのかもしれない。 (また続きを書くと思います)
1ケツロンは、「革命少女ウテナ」と似た構造かと思います。 すごくわかりづらい喩えだけど、 たぶん。あの傑作と同じ。 「チ×ポコついとんのか?」(清原)っていう。 最後は、きれいごとからの脱出が企てられる。
1このコメント欄で、たまたまラカンの話が出てきました。 わたしはぜんぜんラカン、難しくて読めませんが、宮台真司経由で少しだけ齧っている程度です。 わたしが一番興味深いと感じるのは、(ラカン曰く)「父」の機能です。 父の機能っていうのは、平たく言うと「我を崇めよ」ってことですけど、現代ニッポンのおとうさんたちは、おもてづらでは、ぜんぜん威張ってない。でも、おもてに見えないところでは、隠然と「我を崇めよ」という教祖シグナルを発している。 教祖は馬鹿でも、教祖は教祖だ、それが機能すれば、おとうさんだ!と。「お父さんは馬鹿だけど、お父さんはやっぱりお父さんだ。その(不在の)機能を皆が信じることで、救われる」という、疑似宗教。 結果として、ニッポンは没落するのだが、父=教祖は自分のせいだとは露程も思わない。けだし、ラカンの興味深さは、こういうところにある。鏡像云々よりも。 ラカンが出たので、ちょっと個人的な想いを話しました。失礼いたしました。
1その昔、幼児期にお尻を叩かれて「父」の愛を感じて育つ子供が多くいたのは事実でしょう。いつしか叱ることは悪だとされ、叱られたことのない子供たちが大人となり、神は不在のまま、やがてイモータン・ジョーが「わたしこそが神だ」と宣言する…。まあ、精神分析の分野は疎いんですが、映画は大好きです。
1丁寧な表現で詩が紡がれていると思いました。味読して見たくなる詩ではないでしょうか。
0コメントをありがとうございます ボクは「わかりにくさ」をけして悪だとは思っていないのですが、 読み手に「努力」を強いる文体はあまり好みではありません 詩の世界でよく感じるのは、無口な女の子と一緒にいる時のような煩わしさかも知れません またボクの書く作品は、多くの人からは殆ど評価の対象外にあると考えています それでもメンタルが人一倍強いので、今もまだここに居座っているワケです、、 まあ、あとどれだけ書きつづけられるか‥‥ いつか無口な女の子が硬い表情を少しだけ緩めて ボクが書いた詩を読んだ後に 大きな瞳でワケワカメな文字の羅列をもう一度見つめ、 「ヘンな詩‥‥」 って、ポツンと言ってくれるのを、ただ夢見ているだけの馬鹿野郎です、、
0返信ななつだけで作品本文の1.024倍程度の文字数をついやしているような直感をもった。
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