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水分をかんじない
(妻を忘れるため、父は随分前に出かけた、) 水分をかんじなくなったという母は、 乾燥を終えて、洗濯機から飛び出すとうめいな犬たちを、 外へ放ちつづけている、 犬たちは、夜中に作られて、朝になると、扉をバン、バンと開けて飛び出す。 乾燥機付き洗濯機の扉は、何度もいたずらに開閉を続けられて、 高く耳につく音で、その行いに抗議する、 開け閉めを繰り返されて、扉はとても締まりにくい、 それでも、かぞくの服は、母にかかれば乾燥する、 夜を通して、長く長く回る乾燥機を、母はあたたかく見守る、 夜中のトイレ帰りに、脱衣所を覗けば、 無音のまま佇んでいる母は、神様じみている。 犬は遠くにじぶんだけの骨を探しにいって、 (大抵は)、ぜつぼうして、もどってくる、 とうめいな犬たちにも、餌は必要だと、 母は子どもたちの弾いてきた数々の楽譜の、 いちばんやわらかくて、おいしいところを差し出す。 犬たちは沈黙しながら、母の手を舐める、 だが、犬の舌は、水分を含んでいない、 弾かれなくなった楽譜というのは、ひどく乾いている、 ときどき、墓のパンフが庭に散乱している、 (どちらの)、(誰の)、(どこにある)、墓に、 (誰と)、入ろうかとかんがえるとき、 両手足のゆびゆびが、 みぎはひだりと、ひだりはみぎと、 交差して、硬く結ばれて、 必然的に私は、うずくまる、ことになる、 母は乾燥していて、パンフをめくることができない、 乾燥を知らない場所でやすらぐ父には、パンフは届かない、 私だけがほどかれた指でパンフをめくり、じぶんだけの骨を入れる器のようなものを、無意識に探し始める、 夜中に帰宅し、手を洗おうと脱衣所の戸の前に立つと、母はもう明日の準備を始めている、 少し開いた引き戸から見えるその姿は、やはり、神様じみていて、その戸を完全に開くのが、ためらわれる。
水分をかんじない ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1869.3
お気に入り数: 0
投票数 : 3
ポイント数 : 0
作成日時 2024-06-29
コメント日時 2024-07-08
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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平均値 | 中央値 | |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
露骨に性的な作品ですが、厚かましいエロスではなく、 非現実的なロジックで構成されているぶん、 迫力には欠けます。 書き出しはうまいし、筋も明確で、もっと異様な雰囲気になってもいいはずですが、けっしてそうはならない。あじけない。 なんでだろう? (しかしわたし自身が、私小説的な趣をよしとする男根文学中心主義的な価値観に毒されている蓋然性はあります。そこは自戒しつつ) 終始、語り手がどこかに一歩ひいているような気がして、もっと前面に出てくると面白くなったのかなと思いました。
0おまるたろうさん、コメントありがとうございます。 >終始、語り手がどこかに一歩ひいているような気がして、もっと前面に出てくると面白くなったのかなと思いました。 この点につきますね。学びになりました。ありがとうございます。語り手と文の距離感はわたしの課題だと思うので、もっと練習します。一度没にしたやつだったので、クオリティ的に、誰からもコメントつかずに終わるだろうな〜と投稿前から悲しい気持ちだったので、コメント頂けてとても嬉しかったです。!ありがとうございました。
1(妻を忘れるため、父は随分前に出かけた、) 水分をかんじなくなったという母は、 乾燥を終えて、洗濯機から飛び出すとうめいな犬たちを、 外へ放ちつづけている、 犬たちは、夜中に作られて、朝になると、扉をバン、バンと開けて飛び出す。 乾燥機付き洗濯機の扉は、何度もいたずらに開閉を続けられて、 高く耳につく音で、その行いに抗議する、 開け閉めを繰り返されて、扉はとても締まりにくい、 それでも、かぞくの服は、母にかかれば乾燥する、 二十年間、朝に望んだ衣類がなかったことはない、 夜を通して、長く長く回る乾燥機を、母はあたたかく見守る、 夜中のトイレ帰りに、脱衣所を覗けば、 無音のまま佇んでいる母は、神様じみている。 犬は遠くにじぶんだけの骨を探しにいって、 (大抵は)、ぜつぼうして、もどってくる、 とうめいな犬たちにも、餌は必要だと、 母は子どもたちの弾いてきた数々の楽譜の、 いちばんやわらかくて、おいしいところを差し出す。 犬たちは沈黙しながら、母の手を舐める、 だが、犬の舌は、水分を含んでいない、 弾かれなくなった楽譜というのは、ひどく乾いている、 ときどき、墓のパンフが庭に散乱している、 (どちらの)、(誰の)、(どこにある)、墓に、 (誰と)、入ろうかとかんがえるとき、 両手足のゆびゆびが、 みぎはひだりと、ひだりはみぎと、 交差して、硬く結ばれて、 必然的に私は、うずくまる、ことになる、 母は乾燥していて、パンフをめくることができない、 乾燥を知らない場所でやすらぐ父には、パンフは届かない、 私だけがほどかれた指でパンフをめくり、じぶんだけの骨を入れる器のようなものを、無意識に探し始める、 夜中に目を覚まして、股が不自然に濡れている気がして下着に手を入れると、 ゆびさきにうっすら赤い液体がつく。 ティッシュでゆびをぬぐった後、 やはり気になって、 手を洗おうと脱衣所の戸の前に立てば、 母はもう明日の準備を始めている、 少し開いた引き戸から見えるその姿は、やはり、神様じみていて、その戸を完全に開くのが、ためらわれる。
1?
0おんなとして、かわいている。水分をかんじない、かさついていく。母親として完璧にこなす、神様じみてる。乾燥機の動作をサイクルと意味するのだろうか。ただ、犬と書いてしまうとどうしても忠犬のイメージで、あなたの犬になってしまうので。たしかにそういう意図するところはオブジェクトとしてみえるんだけど、それがうまく噛み合ってないんですね。いいたいこと、きちんとありますよね。なんかよくわからないものを書きたいわけではないと思うので。それをどこかで書いたほうがいい。そうやってバランスを取ることが必要なのかなとおもった。
1読みました。 もしかすると、ハツさんは、たとえば、川端とか古井由吉とか、ああいうレベルの作品を書きたいと欲求があって、いまはまだそこへの経路を探っている途上なのではないでしょうか。 はい、わたしの妄想です、すみません。 書き手としては、わたしなぞ、とてもかなわないレベルの書き手だと思うので、わたしとしては、密かに応援するほかありません。
0いらない言葉集って感じで読みました。水分をかんじないも乾燥でいいし、とうめいな犬たちを、外へ放ちつづけているも、なーんかへんじゃん。でもハツさん文章うますぎです。今にしか生きられない。そう言われたような気がしてぼくは聞こえないふりもできないっす。たびたび変な感想書いてごめんね。ごめん。
1A・O・Iさん、こんばんは。コメントありがとうございます。 >なんかよくわからないものを書きたいわけではないと思うので。それをどこかで書いたほうがいい。そうやってバランスを取ることが必要なのかなとおもった。 自分の書いたものがわたし(書き手自身)を書いたものと捉えられてしまうことが多く、少し疲れていたので現実的にあり得ない、自分の中のよくわからない世界を書くことで解放されようと書いたので、なんかよくわからないものを書きたい、にかなり近い感情で書いてました。でも書きたいことをちゃんと書いた方が良いし、意図するところ、オブジェクト、書きたいもののバランスをとったほうが良いというのは全くもってその通りだと思います。いつもコメントありがとうございます。助かっています。
1おまるたろうさん、こんばんは。コメントありがとうございます。古井由吉みたいな文章が書けるようになりたいと真剣に思ってるので、頂いたコメントを読んでびっくりしました。こういうこと言うのちょい恥ずかしいんですが、自分の書きたいことをちゃんと書けるようになりたい一心でやっています。まだ全然ダメダメなんですが、そういうきもちはあります。ビーレビという場で切磋琢磨しましょう。再びのコメントありがとうございました。励みになります。
2よんじゅうさん、こんばんは。コメントありがとうございます。 >今にしか生きられない。そう言われたような気がしてぼくは聞こえないふりもできないっす。 頂いたコメントの方が、わたしの書いたものよりイケてます。く、悔しい。がんばりますのでまた機会あったら読んでください!
0古井由吉っておもしろいんすか?よんだことない。ついでに川端康成の短編は好きです。おすすめあったら教えて下さい
1すごい家族ですね。
0A・O・Iさん、こんにちは。古井由吉おもしろいですよ。たとえば芥川賞をとっている『杳子』なんかは、描写だけで杳子という女性の異様さを描くことに成功していて、他者を見つめるという行為の本来的なグロテスクさが浮き彫りになっていて……イイ!です。新潮文庫版で一緒に入っている『妻隠』もまた、何とも言えないじっとりした空気感があります。あとは、『辻』もおすすめです。 ①杳子・妻隠 https://www.amazon.co.jp/%E6%9D%B3%E5%AD%90%E3%83%BB%E5%A6%BB%E9%9A%A0-%E3%81%A4%E3%81%BE%E3%81%94%E3%81%BF-%E6%96%B0%E6%BD%AE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%8F%A4%E4%BA%95-%E7%94%B1%E5%90%89/dp/4101185018 ②『辻』 https://www.amazon.co.jp/%E8%BE%BB-%E6%96%B0%E6%BD%AE%E6%96%87%E5%BA%AB-%E5%8F%A4%E4%BA%95-%E7%94%B1%E5%90%89/dp/4101185069/ref=pd_aw_fbt_img_m_sccl_1/355-2963694-3961022?pd_rd_w=sN0Mj&content-id=amzn1.sym.ea30439c-428c-45cf-b0f7-83a2c0c578cb&pf_rd_p=ea30439c-428c-45cf-b0f7-83a2c0c578cb&pf_rd_r=C5VM8889RQ38Q7F3XW4D&pd_rd_wg=0qKcx&pd_rd_r=fe3f8934-d644-4bd3-abf8-834aff9719d9&pd_rd_i=4101185069&psc=1 ちょっとリンクがおかしい気がするけど、送信してみます。
1田中宏輔さん、コメントありがとうございます。 >すごい家族ですね。 本当にその通りですね。
0ざっと検索してみてハマる人はハマりそうな感じ。多分自分には美味しいような気がするなー。カートに入れて本屋行った時見てみることにします!ありがとーございまーす!
2乾燥する(させる)母というのはそれだけで読んでみたくなるような面白いテーマだと思います。『無題』の世界と少し繋がっているような気もしましたが、作品単体で読ませて頂くと、母以外のキャラクターがまだ上手く確立されていないように感じました。逆を言うと、乾燥というテーマを行き着くところまで深彫りをされてから、そこに必要なキャラクター(という役割)を配置されてもいいのかと。 父、私、犬という外堀が定型化されてしまっているのではないかと思いました。https://www.breview.org/keijiban/?id=7504 『でもわたし、かわいい』 りおさん わたし、かわいいというテーマに振り切った作品だと思います。色々な人物が登場しますが、テーマと人物との組み合わせ方がとてもスマートだと思いました。僕もいつかこんな作品が書きたいということで、リンクを貼らせて頂きました。
0詩の表現の面白さとはこういう発想だろうな。とわたしは思う。 ~洗濯機から飛び出す透明な犬たち~とは、母の中にかろうじて残る記憶を語り手のわたしが表現してみせた喩えだろう。実際犬が飼われていたのかも知れない。 読んでいるとわたしの記憶も飛び出してきて胸が熱くなる。いまはもう渇いてきているようだが…… ~乾燥している。介護の必要となった高齢者の朽ちて萎れた肉体。インパクトもある表現で、実は哀しみが込められているのを誰が知るだろう。 性的などと下ネタの喩えで受け取る人もいるようだが、これは介護の記憶です。 「水分をかんじない」このような思わせぶりなタイトルに置かれたのはあくまでも内容を秘匿させておきたかったからだろう。 喩えがひとつでもわかれば話しは簡単で、そのことを避けたかったのだと思う。 ひとつでもわかればその佳さがわかるようになる。暗喩の勝利ですね。いい詩です。
0メルモsアラガイsさん、コメントありがとうございます。こちらから解釈を明かすことはしませんが、コメントとして嬉しいです。もっと頑張ります。また読んでくださいね。コメントありがとうございました!
0わたしもとてもおもしろく読みました。どこか短編の出だしみたいで、続き(このあとの展開、特に結末)が読みたいなと思いました。古井由吉、わたしも好きです。しかも、普通に書くとこうなってました、みたいな感じがすごいと思います。
01.5Aさん、コメントありがとうございます。 >母以外のキャラクターがまだ上手く確立されていないように感じました。逆を言うと、乾燥というテーマを行き着くところまで深彫りをされてから、そこに必要なキャラクター(という役割)を配置されてもいいのかと。 父、私、犬という外堀が定型化されてしまっているのではないかと思いました。 テーマの突き詰め力足りてないのは、まさに……です。自覚はあるけど、書き出したら止まらないんですよね。書く前に考えな!という話なんですが。 貼っていただいたリンク先の作品拝読しました。いいですね。人物造形として、一点突破の強度がありますね。こんなのが書きたい!がある人は強いと思うので、(わたしにも曖昧にはありますが)、お互いに励みましょう。コメントありがとうございました!
1佐々木春さん、コメントありがとうございます。おもしろく(!)読んでくださってなによりです。 古井由吉良いですよね。 >しかも、普通に書くとこうなってました、みたいな感じがすごいと思います。 なんかわかりますね。人を見つめてそれを原稿用紙に落とし込んだら、こうなりましたみたいなかんじの雰囲気ありますよね。 佐々木さんの最新作読みました。わたしは『フロート』か『終戦前夜』が特に好きですが、最新作は、詩としての表現のレベルが以前までとは全く違うものになっていて、恐ろしやとなりました。本当にすごいですね。短期間でこんなに表現が変わるのって、吸収力がハンパない、かっこいいです。佐々木さんのコメント欄でコメントせんかい!という話なんですが、ここに書いておきます。いつも佐々木さんの書かれるもの、読んでいます。これからもお互いがんばりましょう。コメントありがとうございました!
1いえ、わたしも今作の流れで自分のコメント欄でハツさんのコメントを無理強いしてしまった気がしていて…こちらに訪れてみました。おもしろくというのは興味深くという意味です。少し海外文学の翻訳みたいな感じもしました。内容は軽くないんだろうと思いますが、表現がサラッとしてて。 作品、読んでいただきありがとうございます。みなさんの作品やコメントから、本当に学ばせていただいています。
11.5Aさん、こんにちは。頂いたコメントとは全く違う話で恐縮なんですが、(超)小規模の文芸サークルとかご興味ないですか?わたしともうひとりビーレビューにいる方と現状二人で、とりあえずは読書会、後々文学フリマに出店するのを目標にやってみたいなと今なっていて、その方とわたしは1.5Aさんとやってみたいなと思っているもので、もしご興味あれば……とお誘いしています。日々の暮らしなどもお有りでしょうから、無理のない範囲で一度ご検討いただけないでしょうか?もし少しでもご興味あれば、ディスコードで集まって三人で話してみて(テキストチャットでも勿論okです!)それから決めていただいて大丈夫ですので。現状はなんか出来たらおもしろいな〜くらいのふわふわ感です。わたしは1.5Aさんのコメントでの視点が楽しくてお誘いしてるだけですし、この提案は玉砕覚悟なのでお返事の内容はお気になさらず!長々と失礼しました。
1お誘い頂き、ありがとうございます。いいですね、面白そうです。色々とお心遣いも頂き、ありがとうございます。僕などでよろしければ、全然大丈夫です。ただ、アナログ人間ですので、ディスコードもチャットもやったことがないのですが、逆に大丈夫でしょうか。むしろそういった部分は、可能であれば省いて頂いても構いません。今お返事できるのはこのくらいですが、先の方に目標が立っているところが素敵で、ふわふわ感もいいなと思いました。
11.5Aさん、お返事ありがとうございます。とてもうれしいです!よろしくお願いします。社会に出ると時にふわふわ感が致命傷になりますが、今回はプラスの方向に働いたようでなによりです。 連絡手段は、ディスコードじゃないとなるとskypeとかになってきますか?とりあえずビーレビ以外で連絡ができるsnsがあればとても助かる……という感じですので、何かアカウントあるsnsがおありでしたら……。おそらく三人揃うのは明日以降ですので、全く急ぎません。 当方 ・X ・skype ・ディスコード あたりを使ってます。
1挙げて頂いたsns以外でさっそく申し訳ないのですが、noteというサイトをアーカイブとして利用してます。僕の書いたもののタイトルをどれか適当にnoteの検索欄に入れて頂けますと、個人ページに行けると思います。そこでの筆名は違いますが、同じものが書いています。希望としましては、メール(文章)でのやりとりをさせて頂けますと、いつでも見ることができるので、時間的に助かるかと思います。ですので、ハツさんと、もう一人の方と、僕とで、三人同時にやりとりをするのは、現状どうも難しいように思います。面倒かもしれませんが、それでもよろしければまたご連絡ください。 働きながらふわふわ感を保っている方は逆に貴重ですよね。強さを秘めているような気がします。
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