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ちんちん考
ちんちんは、前に進む形をしている 希望という方向に、適切に向かう流線型 ちんちんの描く曲線は、いつも絶望を逃れている ちんこでもチンポでも、ましてや摩羅でもなく ちんちんと書いた時の軌跡が 私たちの手を踊らせる ちんちん、と書く 手に、足に、口に ペンや、木の棒を掴む何かに、力を込めて、または軽やかに ちんちん ちんちん と書く、その軌跡は 遠い、遠い宇宙を惑う、ボイジャーの軌跡と同じである 地球の音を散らしながら 人々が喋っている 雑踏が鳴っている 町が囁いている 密やかに ささやかに 宇宙が、世界が、生まれた時、光は、ちんちんを描きながら、ちんちん、と書きながら、何度も何度も、繰り返し巡って、火花を散らし、青や赤にきらめいて、ちんちん、ちんちん、と繰り返し きみは、(と、名付けられた瞬きは) 小さな声で、ちんちん、と笑っている ちんちん、と、口にすると 唇が、2回重なって ちんちん、と、ちんちん、と口にすると 息が2回抜けていく その、2回が、宇宙に歓びが満ちたのと同じ数であり、ちんちん、ちんちん、と、可愛らしい少年が口ずさむたびに、光が、空気が、ちんちんという字を書いて、ふるえたり、ぶつかったり、火花を散らす きらきら、きらきら ちんちん、ちんちんと 星は、ちんちんと光るのだ なんの躊躇いもなく、恐れることもなく 光る、光る、衒いもなく、ちんちんと 冬の夜空ではじけた星が、おててがちんちんする夜に、ちんちんと降りてくるのが、雪で 冷たく冴える息が、懐かしいように 小狐たちは雪の中、お母さんと一緒に、ちんちん、ちんちんと口ずさむ ちんちん、ちんちんと、頬が、膨らんで、しぼんで 誰かの耳朶に沈むのを、言葉と呼んだ ちんちんと、言おうとして、ちんちんと言う、それは、言葉であって、そして言葉とは、研ぎ澄まされた音の形である たとえば、ぬらりひょん たとえば、ひょうすべ また、びしゃがつくは、ちんちんの音を宿している 縮こまるように、膨らむように、ただ、大気の振動としてではなく、世界の皮膜を震わせる営みとしての、ちんちんという、音は ちらちらと、ちんちんと、降る、雪の中を ぬらりひょん が ひょうすべが びしゃがつくが ちろちろと、舌を出して ちんちんと、古道具を叩きながら ちんちんが、散歩していたら なーんだ ちんぽ ばかやな ばかやとも だからてくてくやなくて ちんちんなんやなぁ と、うそぶいて ちんちんは、ちんぽやあらへんよ ちん、つぃん、音が その音が、言語の始まりにあって ぬらぬら、ひょうひょう、びしゃびしゃ つくつく、すべすべ、ひょうひょう と、 遠く、家路を行く小狐の声を聞きながら ちんちんを描いて、歩くのを、 雪が、降るほどに、誰も、気がつかなくて 雪が、ちんちんと、深く 雪が、ちんちんと、高く 雪が、積もるほど、まだ若い星が、ちんちん、ちんちんと光って 光る、光る、遠い星と、少し遠い、街の灯を見ながら 月光を、ちんちんと反射する 白い雪が積もるほど、小狐は母に身を寄せて ねえお母さん、おいら、前の冬よりもちんちんが少し大きくなったよ、バカね、と、母狐は我が子の頭を撫でて、ちんちんと、体温を、交わし、ちんちんと、光る、光る、白い雪、青い雪、街の灯に、オレンジの雪、冷たく、小さく、頬で溶ける、黄色い、雪、雪が、降り積もっていく、その下には、大きな怪獣の化石が眠っているのよ それはまだちんちんが恐竜だった頃、どうしても食べられなかった、可愛い草食恐竜の、少し大人になった姿、背中の、骨の板は、ちんちんの、形をしてる 隕石が、ちんちんと降る夜に、子どもたちと一緒に、土の下、石の下、深い深いところで眠った歳若いそれは、長い長い時間、大地をすり抜ける有害光線と、青白い火の花の根に湧いた長虫たちの唄を浴びて、巨きく、巨きく育ったのです いつか目が覚める頃に、きっと怪獣はびっくりして、ちんちんと、ちんちんと泣きながら、もう恐竜ではないちんちんを探すのでしょう、その日はきっと、今日のような、雪がちんちん降って、小さな星がちんちん光る、光る、光る、青い冬の夜で、きっと、私たちも、潰されてしまうわ ねぇ、 なぁに? その怪獣は、ちんちん、デカイのかな ほんと、バカね 雪が、星が、ちんちんと弾けて 狐の親子は、眠りにつく 雪の下では、怪獣が、死んだ子どもたちを抱きしめて、土の中に、ちんちんと、涙が滲みて、来年には揮発して、ちんちんと降る雪になる ボイジャーは、死にたくて、泣きたくて、宇宙の膨張する向こうを、ずっとずっと彷徨って 街では、絵描きたちが、白い絵を描いている ゴッホも、ピカソも、モネも、マネも、カンディンスキーや、クリムトだって、今日ばっかりは、真っ白くて、少しだけ青く、少しだけ黄色い、小さな小さな、絵を、描いている、ちんちんと、ペインティングナイフが鳴って、ペッティングする、恋人たちの、恥の脱ぎ捨てられた裸体のように、きらきら、ちんちん、暖炉の光を、反射して、星月夜が、乱反射する、ぐるぐると、ぎらついて、熱と、陽子を渦巻かせながら、フラクタルが、フラ、クタ、ル、と、乖離して、ゲルニカは、肉の、小さな粒の、赤い粒子に、引き裂かれて、女たちは泣きながら、いくつもの鋭角の粒子に引き裂かれて、巻き上げられた砂と海が、ちんちんと、輝いて、きら、きら、ちん、ちん、水飛沫が、雪とぶつかって、弾けて、冷たい火花が、ちんちんと、飛ぶと、夜空は、極小の光の粒を、ぐるぐると、積乱雲が、大きな、大きな、嵐の前の、風を、びゅうびゅうと、ちんちんと、まるで、ちんちんの形をした、流線型の、大気の塊が、ぶわり、ちんちん、と、凍った川を、溶かして、雪が、剥離して、風のままに、電信柱に、張り付くと、巴水は、小さく欠伸して、清は、縫い合わせたボロ布をはためかせ、それは、青や、黄色に、ほんの少し、赤く、はためいて、その赤が、チラチラと、ちんちんと、真っ白な雪の中で、酸漿のように、ちんちん、ちんちんと、冷える踵が、ちんちん、ちんちん、赤らんで、小さな、小さな街に、小さな街の灯が、ちんちんと、灯って、オレンジの、雪が、ちんちん、ちんちん、積もって、山の、麓の小屋では、猟師が口減らしに我が子を殺している、ちんちんを、ちんちんと寒さに縮めながら、少し、泣きたいような気がして、ちんちんがひっくり返る逆さ吊りで、霜の張った井戸に、我が子を落として、雪が、星が、光る、光る、ちんちんと、衒いもなく、容赦なく、光る、光る、小さな、遠い、白い星が、猟師の頭を、ちんちんと、照らしている ねぇ、賢治先生は、妹御が亡くなられた時、どんな気持ちだったんですか? どんな気持ちで、詩を、書いていられたんですか? その日も、ちんちんと、雪が降っていたのですか? ちんちん、と ちんちん、と 悲しみを、吸い取るように ちんちん、と雪が、降り積り 地面の下、イーハトーヴォに 冷たい雫、を、垂らした、のですか? (それは、-1℃の雫で) (凍らなかったのは、寂しかったからで) 中也先輩は、子どもが死んだ時、どんな気持ちで詩を書いていたんですか? 春も、秋も狂って、夏は世界じゅうのひとが狂っているから 冬しか、泣けなかったのですか? ちんちんと、雪の、降る、今日のような、冬の夜に きっと、古寺の屋根の下で、つぎはぎの、鮮やかな襤褸をかぶって、小さな兄弟が死んでいる 身を寄せ合って、そっと、静かに 雪が、蝋燭の炎に溶けて 大きく開いた口の中に、 ぽた、 ぽた、 と ちん、 ちん、 と 舌を、濡らしている 頬を、濡らしている 天使たちは、いつも空の上にいて 宇宙の、有害光線を浴びながら いくつもの眼球で、死んでいく、小さな子どもたちを見つめている ある夜の、星たちも、ただ 大きな、大きな目で、死んでいく、小さな、ちんちんと、死んでいく小さな子どもたちを その、ふっくらと柔らかい手のひらが悴んで 握り合うことの、弱りもぞする、その瞬間も 見つめて、いる それは、きっと優しいことです そうでも、思わなければ、そうとでも ああ、まだ、降り積り、星は、ちんちんと、光る、光る、死んでいく、良い人たちも、悪い人たちも、見下ろしながら、見つめながら、ちんちん、ちんちんと、枕の上に、頭を置いて、セント・ニコラウスのおじいさんを、思う、子どもたちも、見つめながら、ちんちんと、ちんちんと、街を、見つめている、十字架の、形をした、光を、放ちながら、ナザレのイエスの、眠たげな、その蒼白の顔を、照らしながら、トランペットの鳴らす、光の歌が、ちんちんと、金の音を、鳴らしている その、軌道上に、いくつもの、太陽が、明滅して、太陽の、中心には怪獣が眠っていて、背中の、細い棘が、銀河の星々を、貫き止める、それは、マクロの、夜露のように、宇宙嵐が、吹き荒れても、天使たちの、放射状の翼が、無限に、広がっていく、その、繰り返す、模様が、遠くで、誰かを、発狂させて、予言の夢を見せる 街も、山も、しばらくすれば、燃えるでしょう 再来年か、来年か、誰も、夢にも見ないけれど 火が、ちんちんときらめいて、それが、天国の火だとは誰も知らないで、街の赤い屋根が、金色に輝いて、ちんちんと、きらめいて、弾けた星は、雪にならず、青い青い、前に進む、ちんちんの形をして、降り注ぐ日が、くるのでしょう とおい、とおい話で、そしてそれを、良秀が描き、ゴッホが描き、ぐるぐると、火の渦が、フラクタル、フラ、クタルに、したがって、芥川が語り、シラクスの街にも、火は、延々と伸びていって、きっと惑星は、小さな恒星になる 眠っていた、怪獣が、子どもたちが死んだことを思い出して、有害な、光線を、宇宙の四方八方に放射しながら、えんえんと、ちんちんと、轟轟と、遠くの星の、怪力線が飛び交う戦場で、それはきっと指さされ、ああ、そこでもきっと、星が弾けて、白い、白い、少しだけ青い、少しだけ黄色い、雪が、ちんちんと、燃え盛り、無辺泥梨の火は夏の、赤い、トタンの屋根に似ている 赤く錆びた、自転車の、躯体に、似ている ちんちんと、鈴を鳴らして、市民プールに向かって、トラックのお尻から噴き出される熱いガスが、夏の匂いだ 影が、やけに黒黒として ちんちんが、汗ばむ、夏の、匂い 塩素消毒の匂いが、いくつになっても、思い出される、あの、鼻をつく、塩素消毒の、匂いは、プールの、匂いで、夏の、学校の匂いで、 小学生の頃、僕は、プールの授業が嫌いだった 泳ぐのは、好きなのに プールで、泳ぐと 水泳パンツを抜けて、塩素消毒された水が ちんちんに ちんちんと、染み込んで それから、ひっついていた股の肉が、ぱっかりと解れて、ちんちん、ちんちん、心地いい のに、僕は プールの授業が、嫌いだった のは、 僕は、ちんちんの、話が嫌いで 大きいとか、小さいとか、毛が生えているとか、いないとか、その、精通が、どうとか だ から僕は、ちんちんを スカートみたいなタオルで、隠して、いつも、みんなのいない方を見ながら、こそこそと 悪いことでもするみたいに、パンツを脱いで、水泳パンツに着替えて 水泳パンツは、ひたひたしていて、ちんちんに、くっついて 海パンは、ばさばさ、ゆったりして、海に入ると、ちんちんに、まとわりつく 海の、波の中からは、塩素消毒の匂いはしない 代わりに、海の、向こうの、どこかの、島で、生まれた、大きな、海のちんちんが、波を、かき分けて、ざざぁ、ざざぁ、 ざざ ざざ ちん ちん と、遠くの、方から、遠くの、南の、生ぬるい、海から、僕たちの、ひんやりとした、海の方に、ざざぁ、ざざぁ、ちんちん、ちんちんと、やってくる 来訪神と、しての 来訪ちん、が 七福神を、乗せて 七福神が、ちんちんの、ポーズをして 地球表面の青を、たわませるから 生贄の鼓動と、戦士たちの流血と それを栄光とした、鈍い太鼓の音と それら、全ては、やがて、消え入るように、最後に、ちんちんと震えて ざざ、ざざ の、隙間を 縫うように、細く ざざ、ざざ、ちんちん、と 波、打つ、波が、折り重なる、その、幾らかの、瞬きの、あいだに、顔を出し、 ぷぅぷぅと、浮き沈む、蛭子の、ぶにゃぶにゃした、体にも、ツンとした、ちんちんは、あったのかな それを、伊弉諾も、伊奘冉も、ちょん、と摘んだことが、あった、のかな それでも、棄ててしまったのなら それは、 それ、は、 とても、哀しいことだね 哀しいから、泣かなくてはいけないと、僕らは意味付けて けれど、哀しいから、ちんちんを出しても、よかったのだ 海の、含まれる塩は、ちんちんの形を、している 何千億、じゃ、きかない、塩の粒は、全部 丸っこい、ツンとした、ちんちんの、形を、している 海月や、雑魚や、それよりも小さな、ばくてりあ、ぷらんくとん、と、一緒に、 ちんちんと ちんちんと ちんちんが、水の中で、ぷらぷらと、揺れている ちんちんの話は嫌い だ、 けど僕は、ちんちんを よくいじっていた お風呂の、お湯の、中で、ちんちんを、ぷらぷらさせていて、ちんちんを、ゆらゆらさせていて、 ぴょんと、ひっぱると、ちんちんと金玉の間に、お湯が流れ込んで、ぷかぷか、ぷかぷかする ぷかぷか、ぽかぽか、ちんちんが、少し緑のお湯の中で、ぷらぷらと揺れている なんで海の水は青いのに お風呂の水は、緑色なのかな 入浴剤なんて、入れていないのに 僕の、小さくて細い体が、緑がかって、ゆらゆらと、揺れて ちんちんも、揺れている 教室の中で、服を脱ぐときに みんな、ちんちんを見せ合っていた お風呂からは、お風呂の匂いがして プールからは、プールの匂いがする 塩素消毒の、夏の、そして、過去の、匂いが、する 視聴覚室の、中で、過去のみんなが、ちんちんを、見せ合っている 僕のちんちんはぴょこぴょこしていて 田中のちんちんは丸っこい うえのくんのちんちんは、つくつくしていて ミナミくんのちんちんは、ほうほうしていて イエスさんのちんちんは、とことこしていて お釈迦さんのちんちんは、ぷくぷくしていて 三島由紀夫のちんちんは、どくどくしていて 萩原朔太郎のちんちんは、こうこうしていて 山頭火のちんちんは、ぽこぽこと、湧いて、溢れて、お風呂のお湯が、じゃぶじゃぶ、じゃばじゃばと、溢れ出して、お風呂場が、温水プールになるくらい、じゃばじゃばと、ちゃぷちゃぷと、僕が浴槽を出ると、姉ちゃんが、泣いていて 私は、中学校に上がったばかりの頃、二つ上の従兄弟にちんちんを見せられた 母の実家のある、茨城に遊びに行った時 ちょっと臭いトイレを出て、ふと、前を見ると、ちんちんを出したまま、中学三年生になる従兄弟がこっちを見て、風呂上がりだったのだろう、モモンガみたいにタオルをバサバサさせて にやにやしながら にや にや その笑顔は、何がそんなに嬉しかったのか今でもわからないけれど、従兄弟は、その“男”は、にやにやとしながら、自分のちんちんを、私に見せつけてきた 坊主頭の、無精髭の生えたその男を前にして、私はどうしたら良いかわからなくて、バカじゃないの、と平静に行って、食事の席では「こいつさっきチンコ出しながらニヤニヤしててマジキモかったんですけど」って、唐揚げを口に入れながら、自分でも嫌になるくらい甲高い声で 従兄弟は、元ヤンっぽいお母さんに思いっきりその坊主頭を引っ叩かれていて 私は、口に物を入れながら喋んないのって、ばあちゃんに言われて お父さんも、じいちゃんも、おじさんも、ばっかでぇと笑っていて 少し早く、ばあちゃんが敷いてくれた布団の上で寝転び、赤くて変な模様の枕の、優しいようなカビ臭いような匂いを嗅いだ時 なんでか、泣いて、しまった ばか、だよ シンプルにバカ、最低 最低、 マジ最低、 ほんとにさいていだよ お風呂上がりの、すっぽんぽんの弟が、こっちを、不思議そうに見つめていて 思わず、声を荒らげてしまった 今でも、茨城の母の生家のある和室で 中学生の私が、枕に顔を埋めたまま、泣いている、らしい 二十歳になっても、私は、従兄弟のことが、少し、怖い 相変わらずデリカシーがなくて、バカにしているし、もう普通に会話もできるけど ふと、従兄弟が笑っているのが、怖い 弟は、可愛い 私が、泣いて、いる 泣いて、いる私の、方を見ながら 声を荒らげた、私に、なんと言ったらわからないから言うように、ごめん、といって 弟のちんちんは、ちょんとしている 従兄弟のちんちんは、ぶくぶくしている ぶくぶくが、ぷくぷくで 山頭火の、ちんちんが、湧いて、溢れて、茨城の、じいちゃんばあちゃんの家の、お風呂場から、じゃばじゃば溢れ出して、じゃばじゃば、ちんちん、ぽこぽこと、従兄弟がにやついていた廊下に流れ込んで、モモンガみたいにタオルを広げたまま、従兄弟がずっこける、あはは、ざまぁみろ、とは言えない、そういうんじゃ、ない、憎いとか嫌いとか、とは、違って、心臓が、いやな、動悸を、ねぇちゃん、泣いてるの?弟の、ちいさな、ちいさな手足が、ぐう、ぱー、ちんちん、溢れ出して、温泉じゃ、温泉じゃ、じいちゃんが、ばあちゃんが、ぽこぽこと、すっぽんぽんになって、溢れた、溢れ出したお湯が、和室の畳に、染み込んで、溢れて、家の中が、ぽかぽかの、大洪水になる、みんな、みんな、笑っている、お母さんも、お父さんも、従兄弟の元ヤンっぽいお母さんも、電動ベッドの上の松井さんも、ああ、すごいすごい、温泉じゃないか、デイの機械浴にはもうウンザリだったからな、ヘルパーさんが乱暴で、二の腕の内側が痛いんですよ、それに、看護師さんに、ちんちんを見られるのが嫌、なんですね、そう、か、見られる方だって、やだよね、従兄弟は、にやにやしていたけど、僕は新卒で介護士になって色々なちんちんを見ました、タケシタさんのちんちんは大きかったし、イシオさんのちんちんはひどく萎れて、ほとんど小指くらいで、剥けてたり、皮をかぶっていたり、それを、指で丁寧に洗ってあげるのが、洗わせていただくのが、なんて言うのかなぁ、なんとも言えない、恥ずかしいとも違う、神聖なようで、うん、よく利用者さんをモノ扱いするななんて言いますけど、実際、モノ扱いで、乱暴にするのは良くないけど、ちんちんを、変な照れとか、気まずさを捨てて、ただちんちんを、モノのように扱ってこそ、 介助者の指に、聖なるものは宿るのではないでしょうか 無私に 無心に 無垢に 指先で、ちょいと持ち上げ ごしごしこする ごしごし、ごしごしと、松井さんの、ちんちんを洗っているヘルパーさんのちんちんは服の下に隠れている、黒いズボンの下に隠れて、それを脱ぐことは、しない、ちんちんは、隠されていて、風で、ズボンがばさばさと揺れ、て、揺れて、ばさばさと、波打って、パンツの上で、曲線を描いて、波が、黒い、波が、白い、波が、ばさばさと、ざぁざぁと、ちんちんの形を描く、曲線で、遠くに、波山の鳴き声を、聞きながら、ばさばさ、ひぃひぃと、波山、婆娑婆娑、いぬほうおう、の、ちんちんは、やっぱりばさばさしているのだろうか、だから、ぬらりひょんのちんちんはぬらぬらしていて、ひょうすべのちんちんはひょうひょうしていて、びしゃがつくのちんちんはびしゃびしゃしていて、あるいは、うやうやしのちんちんはうやうやしていて、がんばりにゅうどうのちんちんはがんばっているのだろうか 波は、ひらがなの形をしている ざざ ざぁ、ざぁ、 ひらがなは、ちんちんの、かたちをしている 海の、お風呂の、ちんちんの形に、曲線を描く波の、その中から、大きな、大きな、鯨とか、ダイオウイカとか、飲み込むような、大きな、悪樓が、ざばん、ざばぁん、ざばぁぁん、と、竜のような鬼のようなその顔を顰めて、物々しい、漢字の魚たちを引き連れて、ざばぁん、ざばぁぁぁん、と、悪樓の、ちんちんは、竜の頭に似た、刺々した形をしている、海が、温水プールが、町を、飲み込んで、流れ出し、沢山のちんちんが、ぷかぷかして、大きな、ちんちんのような、川の流れが、幾つにも分かれ、八岐大蛇は、ちんちんも八つだったんでしょうか、ねぇ、中也先輩はどう思いますか、賢治先生は、どう、思いますか、 知らないよ 僕は、ちんちんの話は、嫌い ぷくぷくと、ぽかぽかと、温かい、濁流が、 家を壊して 町を壊して 蒸気をぽっぽさせながら じいちゃんも ばあちゃんも ニコニコしながら 幾つにも分裂して流されていく みんな、お風呂が、大好きで ちんちんが、ぽこぽこと、どんどこと、ぽんぽこと踊り狂って、僕は、ちんちんの話も、ちんちんを見られるのも、大嫌いなのに、ちんちんを、いじるのが、とても好きで、ぽこぽこと、僕のちんちんが、踊り出して、僕は、プールの授業が、嫌い、でも、泳ぎ終わって、プールサイドで体育座りをしている時、風が吹いて、少し寒いような感じがするのが、寂しくて、好き 寂しくて、寂しいから、ぽこぽこと、 ぽこぽこ、ぽんぽこ、踊る、踊り出す 二つ上の従兄弟が、ぷくぷく、ごぼごぼ お湯の中で、髪をゆらさせて(ちんちんみたく) 温水プールの中に沈んで行って、溺れて、行って 翠のちんちんが丸出しの、河童が泳いでいる 温水プールの、中は、お風呂の匂いがして それは、懐かしいような、寂しいような プールの、夏の、過去の匂いとは別の 多分、秋の匂いだ。それで 多分、今の匂いでもある 古い、嗄れた声の猿が 俯きながら、湯の中 ちんちんを出し 出して、 ちん ち ちちん、ちん 老猿は、モヤモヤと、湯気の中で変生して 頭だけが浮つき 手足は、虎 尻尾は、蛇 身体は、狸 鵼のちんちんが 正四面体に、ちんちんと、折り畳まれていき 夜の、まだ冷たくはない紫の中に 幾重にも、折り畳まれていき その、折り畳まれる先にある 小さな小さな星の光が、 大昔に打ち上げられた衛星の、最後に放った爆炎だということを、誰も知らないでいる 爆炎は、何億光年の中で、小さく、小さく、小さな光になって、温泉旅館で酒を飲む、二人の夫婦や、身を寄せ合う、猿たちや、我が子の武勲を願う鵼の ひょう ひょうひょう という鳴き声を、ほんのちらりとだけ、照らして 温泉旅館のある街の、気が早くマフラーを箪笥から出す女の子を、なんだか、昔夢に見たような、嬉しい気持ちにさせている 星が、落っこちてくることなんて、ないよ まして、それを宝石箱の中に入れることなんて 出来やしないよ 星は、落っこちてくるんじゃなくて 落下するんだ そして、襲来するんだ 圧倒的質量の、大きな大きなちんちんが 石段の、たくさん入り組んでいる、温泉旅館のある町を、ばぁ、ばりばりと、押しつぶしに来るのが、おばあちゃんは、子どもの頃から怖くて、その恐ろしいことを、山の方の、野寺坊や、蛙たちは、とっくに知っていたから、鈴虫に頼み込んで、ちんちんと、ちん、ちんと、泣いてもらっている、から その、鳴き声が、箪笥の中にしまわれっぱなしの、オルゴールの箱を、そっと開けて きらきら星の、変奏曲のメロディーで ちん・ちん・ちんち・んちちち ちちん・ちちちち・ちちち ちんちち・ちちち ちちんち・ちちち・ちちんち ちちち ち ち、ち、と 流れ星が、くるりくるりと、ちんちんの形に回って オルゴールの箱の内、四つの面に、猿と、虎と、狸と、蛇が、浮かび上がって、きょうこつ、甚だしく、ちんちんとないて死んだ、姑獲鳥の上の土饅頭に、魍魎が、ちんちんと湧いている、ちんちんを、ふりながら、あるいは、鉄鼠が、そして、塗仏が、目玉と一緒に、ちんちんを、ちんちんさせながら、絡新婦を、組み伏せて、ちんちんを、振り乱しながら、邪魅が、けたけた、 にや にや 笑って、いて 私は、少し経ってから泣いた 二十歳になった私は、今でも時々、泣いてしまう 怖くて 何かを失っていて、 何を失ったかは、知らない、けど たしか、誰か、死んだんじゃなかったか と、思い至って、温泉の、湯気が、涙を、余計に湿らせて、ああ、死んだのは、私か、今も、生きているけど、それはそれとして、だから、こんなに、陰摩羅鬼が、鳴いているのか、遠くの、方で、陰摩羅鬼、いん、まら、き、鬼、おに 私は 私たちは、いつも 長い髪を、濡らして 沈痛な、面持ちんちんで お風呂に入ると、ちんちんがあっちんちんなんだなぁ って、お父さんが、言っていたのを、聞いたのは、確かまだ、4歳の頃 弟は、生まれて、いなかった プールの授業が、嫌いな、弟は そのくせ、秋になると、寂しそうな顔をする 私の街に、紅葉なんてない だから、温泉旅館のある街で 紅葉を見ると、まるで、テーマパーク秋 って感じ 嘘くさい、ような 嘘くさい、ちんちんを みんな、ぶらつかせながら、その、先端は、ウォーホールの穴で、デュシャンの便器が叩き割った、オリジナリティの皮膜で、美も、常識も、独自性も、職能も、技巧も、とっくに、割礼されている、いたい、痛いと、泣いていた、男の子も、少女たちも、顔に、黒い布を被せられて、イエスさんが、気まずそうに、頭を下げている、その、上空で、死んでいる、神様のちんちんが、陰摩羅鬼みたいに、飛び跳ねていた 紅葉、が 月に照らされても、やっぱり ずっと、ずっと、嘘くさい 真っ赤な、その、嘘くさい、嘘じゃない奴の 表面をぞろぞろと進む、小さな虫にも、ちんちんは、あって、その、小さな虫たちが懸命にたかる、大きな虫にも、ちんちんは、あって 芋虫は、それ自体が、ちんちんににている 伸びて、縮んで、ちんちんに、羽を生やすと、蝶になって飛んでいってしまうから、誰も、ちんちんをコーラでは、洗わない コーラで洗うのは、いつも、笑われるのは 踏みつけられた、ちいさな 私たちの、側で こわ こわかったんだよぅ 何もかも、胸から、透明な、吐瀉物が、溢れるたび、喉を、詰まらせて、死んでいる、透明な、九相図が、圧迫を、拗らせて、肺が、なくなってしまうような、その、肺の奥から、溢れた、息が ちんちんと、 ちんちんと咽ぶように 踏みつけられた、腹の、奥から、響くのは 銃声と、似ても、似つかない、私たちの、声で ちんちんと、咲えなかった、私たちの たち、ではなく、私という、ひとりの ちん、ちん、と、吐き出した ちいさな、昔話と 大きな、昔話の、間で すり潰されて、消えていくような、 わた、しの 感傷、かんしょうは、ちんちんと、一音を、共有して、だからこそ、滲まない血の、痛かったことを きっと忘れて、しまうから 遠く、戦争があったころに 逃げ回って、まだ、逃げきれずに 笑われた、誰かの、折り重なる、路と この街の、紅葉が、嘘くさくなかった時代 侍たちは、やはり得意げに、ちんちんを、ちんまげを、誇示して、地頭も、大名も、ちんちんを、頭に乗せて、得意げに、うやうやしく、挨拶するので、そのうやうやしたちんちんが、ぴょこんと垂れて、おでこに引っ付くのを、子どもたちも、決して笑うことはできなかった、時代だった 「私は、生まれながらに将軍である」 大名たちが、うやうやと、ちんちんを、垂れさせて 「私は、泣き虫で、弟より、ダメで、母上も、きっと、私、より」 大名たちの、ちんちんが、腹背していて 「私は、」 ちちんぷい ちんちんぷいぷい 「わた、し、は」 智仁武勇は、御代の御宝 痛いの、痛いの、飛んでいけ 飛んで、飛んで、飛んでいけ どうか、あなたのいたいのが、とんでいきますように ちんちんぶんぶんみよのおんたから どうか、 いえみつさま 「わ、た、し、は」 きっと、しあわせだったのだ 痛くても、悲しくても、宝物のように ち、ん、ち、ん、と おまじないの、残響が、散り散りに、砕けても それは、それから、こどもたちに、くりかえし、繰り返し 空を、いたいのがひらひらと、飛んでいく こどもたちが、ちんちんを、ぴょこんとさせて 青空に、思いっきり、ぴょんと、させて ちんちんやーい と、笑える、日は 遠いけれど それでも、 座ると、膝が三つあるとかいう、お坊さんが 子どもたちを、笑わせようとして ちんちんやーい おっきな、ちんちんやーい と、念仏の合間に、それは なんとも、なんとも愉快な声音で、 ああ、でも、ワシは、わしゃぁ、 もう、だめなのです 神様に、なろうとしてしまったから 紅葉が、酷く、酷く染まっている この、ここで、この国で トンボと、トンボが、ちんちんを擦り付けあっている この、国で 一番偉くなろうと、してしまったのだから それは、だめだよ ここは、でも、ちんちんの国だから ちんちんが三つもあるなら、ああ、でも 膝も、ちんちんも、切り落とされてしまって 泣いている 泣いていた 神様が、言ったのだから 仕方がないよと 切り落とされたちんちんは、海に流されて、チンギスや、カールの、ちんちんと、戦って、テュポーンや、ヴリトラの、ちんちんと、戦って、囚われた巻毛のお姫様を連れて、もっと遠くの大陸まで、船よりも、はやく、魚よりも、速く、魚のちんちんと、速さを比べながら、速く、速く、速度が残すものを知らないままに、光より、速くなろうと、空気抵抗も、水の抵抗も、突き破って、け、ど、けれど お姫様は、たまらなく、ちんちんに乗るのが、いや、でした いやだよ、そりゃぁ 単純に、感情の問題で 簡単に、過去の全ての問題で かわいい巻毛のクドリャフカ 火と、氷と、人の夢に、殺された、その、女の子が、夢を、見るとするなら ライカ、やすやすと 星になったなんて言わないで 星は、なるものではないのだから 星は、遠く光っている そして、いずれ、引き合う それを、私たちは落下と呼ぶのだ オゾン層を抜けて、ダイソンスフィアの両淵に、一匹の犬の、たくさんの名前が並んでいる 世界とはそのように生まれて そのように砕けていくのだと 老いた賢人は、ちんちんをいじりながら しわがれた声で、テレビの、向こうへ ちんちんと、ちんちんの、電気信号の交感でしか、ない、それでも、それを、脳髄は、交歓として その、道行の後に、我々はどこからきて、何者で、いったいどこへ行くのか 思うに 我々は、どこにも行かない、多分 学習机に隠して、ちんちんのことを、考えていた、頃から、ダイソンスフィアの、長い長い円周を回って、同じ部屋の床で、眠りにつく そうして、死んでいくのだ お姫様は、巻毛を揺らして、悲しいことを、思い出して、悲しいことが、もう悲しくないのが悲しい 傷つけることに、傷つかないのと同じように 世界を、救ったことも、救わなかったことも ちんちんの、曲線の角度ほどのことで 世界を救う戦いの後は えてして世界を滅ぼす戦いが始まるものだから 絵本を、閉じて ごめんなさい ごめん、あなたが 嫌いなの じゃぁ、しょうがないです、ね しょうがないでちんよ ちんちんは、お姫様を、ベネチアの港に下ろして、最後に、ポロポロと、ちんちんの形をした、海の塩たちに送られて、潮騒が、聞こえる 秋の、海の、潮騒は ざざぁ、ではなく ざ、ざ、と 聞こえる、 真っ赤な、真っ赤な紅葉が、海に落ちて、青を、汚すのを、私も、弟も、女の子も、見つめていて、紅葉が、茶色に、染まって、紅葉が、黒ずんむ、と、海いっぱいに、木の枝や、土や泥や、腐った落ち葉の腐葉土が、ふかふかと、浮遊して、遊離して、茶色く、べちゃべちゃした、海が、温泉に、流れ込み、裸の体に、木の枝や、土や泥や、砂利、小石が、ちくちく当たって、ちんちん、当たって、猿たちは、平然としている、当たり前のように、糞を垂れながら、河馬や、猪が、温泉に、わけいって、じゅくじゅくと、じゅんじゅんと、お風呂の匂いの、する泥が、石段に、染み込んで、地面の下にはぐにゃぐにゃと、温泉宿の窓から覗く、いく本もの杉の木の根が、絡み合い、伸びて広がって生き物の蠢いた後のようにぐにゃぐにゃとくねり伸びて広がって西に東にあるいは下に上にどこまでもごつごつとして濡れたじゅくじゅくと黒ずんだ土の中をまるでその曲線は動いていないのに揺れ動いているようにその先細った髭のようなところには、蚯蚓が、いる、ちんちんのような、ぷにょぷにょした、蚯蚓がいる、蚯蚓の、身体中にある顔が、一斉に、ちんちんと、ちんちんと、言っている、蚯蚓は、一本の柱のようで、神様に似ている、そして、蚯蚓を模した、一千面観音が、念仏の合間に、ちんちん、ちんちんと、冗談めかして、ぎちぎちと犇く一千の顔と顔の隙間から、ちんちんが、覗いている 一切衆生悉有仏性 蚯蚓の顔は、ふくふくとした、子どもの、顔は 折り重なりながら、夥しく きゃぁきゃぁ きゃぁ、きゃはは ちんちん ちんちん きゃは きゃははは 一切の衆くの生には悉く仏性がある ちんちんの、仏性が 染み出すように、子どもたちに、突かれている ふにょふにょと、怯えるように 子どもたちに、木の枝で突かれている きゃぁ きゃぁきゃぁ きゃはは ちんちん 昏迷の時代の前に 傾眠の時代があり 昏睡の時代が訪れる、やがて やがて、いつかに還るとして それは、かつてのいつかでは、ないから ちんちんが、意味を、持たなかった、時代、と、意味を無くした、時代が、違うように、それは、積み重なるのでも、流れるのでもなく、それでも マンモスと、土塊の、燃えるような 描かれた、太陽の、泣きそうな 原初、ちんちんは大地であって 原初、太陽はちんちんの形を、していた だから、夕焼けの赤と、この、草のない土の赤は、地続きに、灼けていた、燃えるのでは、なく、喉が灼けつく、熱気の中で、叫んでいた、男たちは、走りながら、叫んでいた、女たちは、抱きながら、たったひとり、走る、女が、いた、ひとりだけ、抱く、男が、いた、その2人が、出会うことは、別に、なくて 言葉にできないことは、言葉にしなくていいいよ 言葉にできないことは、叫ぶのだ そのために、ちんちんという、音があるのだから 適当な、ことばかり、言って での、適当じゃないことなんて、みんな、言いたくないだろうから、命の、空の、土の 計られる前から、流れていた、時間の、ようなものの、ゆったりとした、激流の中に、生活が、あって、適当に、本気で、生活の中で、 叫んでいる 傷つけられたアンセムで 叫んでいる 隠匿されたブルースで 叫んでいる 跳ねっ返りのロックンロールで 叫んでいる ちんちんと、ちんちんと、自分が、灰になってしまうような、それでもを、ちんちんと 首輪には舌を出して、吹き出した今を愛せ 中指を、立てた手は、ちんちんの、形を、して、いるから、その、形のように、負けるな 負けるな、と、唇が、象っている、その、後に ちんちんと、いう、かたちが、ふるえて、 みな、それぞれに、目に写る、命の形を、焼き残した、その、前から、 岡本太郎の、たましいの、根元に、ちんちんは、ずっと、 ずっと、ある、ものは、やがて、あるものへ、繋いでいく 縄の目の、陵墓の、それぞれの、 赤い 赤い うっすらと、紅い、ちんちんと、共に 土の中から生まれた 泥の母から産まれた 鉄も、石も、熱を帯びて、冷たく、 魚たちの望郷と、死滅回遊の渦が空に とおい空に、複写される、いつかの 時代が、時代と名付けられる前から 時代が、時代と呼ばれなくなる、先へ 続いていき、途切れても、途切れたことが続いていく、その、時間の、時間さえ、なくなったとしても、続いていく、空間の、空間さえ、無くなっても それでも残るものを、やがてと呼んで やがて、 やがて、名付け得ぬ時代が訪れる日に 老人たちは、安楽椅子の上で、とおい、とおい、 あまりにもとおい、夢を見ながら 昔の、春を、思い出している 青春、と、それを呼んで でも、春は、茶色かった 桜の、花が、ちんちんと、散って 椿の花は、初めから、椿椿(ちんちん)だった 溶け残った雪の、上で、汚く、すり潰されて、行くの椿の、ちんちんを、寝ぼけた、雪虫が、ぞろぞろと、通りすぎて、海虫が、芋虫、が、虫が、三匹集まって、蟲になって、三つの、ちんちんが、ちんちんと、花粉症の、花の中で、あちこちに、咲き誇る、くちなわの、朽ちた縄もまた、ながい、長い蟲であり、揺らめくように、あるいは、ちんちんと、揺れている、蟲が、春になったら、蟲が出てくるのを、蠢く、と、書いて、1番上の虫は、春に、押し潰されてしまったから ちんちんが ちんちんだけが、残って 残された、ちんちんが ぽやぽやと、眠って 夢を、見ている 怪獣と、同じ夢を、ちいさな、吹き出しの、溢れ出す、ちんちんの形をした、漫画のなかの、ちんちんは ちんちんは、三本の線で ちょん、ちょん、ちょんと 三本の、線の、線虫の、三匹の、蟲が、集まって 蒐まって、裒って、 ちんちんが、ちんちんと、尺取り虫の、動きで、春の、桜の木の長さを、測っている、黒い、幹の、奥に、じゅくりと、熱い、色を、隠して、ちんちんを、隠して、ぴんく色の、ちんちんの 先っちょを、つまんで、 雨が降ったら、傘を、差す そっと、差し出す、金の、煙と、巌が、燃えていて、ザザ虫が、ちんちんの、形をした、いくつものザザ虫が、ナマズの、お腹の、中から、ちんちんと、夢を、見たんだ、夢、を、濡れた、春の、ぬるい水の、じゅくりと、じゅく、と その、身体を、やさしいと、呼んだら それは、絶対に 違うと だから、違うと、口にして 口の端に、ちんちんが、ちん、ちんと 跳ね回る、穴の奥に、落下して、落下する、甘やかな、匂いと、 薬と、紅茶、匂いのする ちんちんの、昔の、部屋の中は、昔の、窓の、外に見える景色まで、古く、古い、フローリングには、十年前の小春日が、滞留している、その上で、君が、赤ちゃんだった君は、ちんちんをぷらぷらさせて、笑っていたのを、まだ、覚えている、あの頃の、おむつの匂いも、もう、すっかり忘れて、アンパンマンに、ちんちんがあるのかどうか、結局わからないままに、君は、大人になったね、君が、子どもを、残すか、そうでないのか、決めてしまうことは、しないし、孫が欲しいなんて、言わないけれど、だからこそ、君が、赤ちゃんだったころの、きれいなちんちんは、まだ きっと、 きっと、覚えているね この部屋が、 家賃7万の、マンションの、部屋の隅で、帰ってこない人を、ブランケットにくるまって、待っていた二人が、少し、皮膚の温度が、集まるような、暖かい暗闇の中で、昼間はパンケーキを作ったって言うのに、無性に心細くて、泣いていた、君の、ちんちんに、そっと、手を触れて ねぇ、息が、熱いのは、外が寒いからだよ ねぇ、空が、青いのは、君のほっぺたが赤いからだよ 少し待てば、梅雨が来て、紫陽花が咲く、花嫁は、ちんちんと降る、雨に、紫陽花が、溶け出して、雨上がりの、風が、柔らかく、青や紫なのを、知っていて、街の光が、ぼんやりと、溶け出していく、雨の、日に、寒いから、寂しかったんだよ、いつだって、寒いから、ちんちんを、触って、いたんだよ、その、白い服が、似合うようになった、君たちに、やっぱり、雨が、降ると、寒いけど、だから、雨が上がると、一番幸せな日のことを、思い出すんだね、だって、雨上がりの、帰り道の匂いは、最上の幸せと、同じ成分でできていて、それは、赤ちゃんのちんちんと、同じ成分でできていて、傘を刺すほどでもない、ような、さめざめとした、雨の方が、ちんちんと、染み入るように、堪える時が、きっとあるけれど、その、辛いのは、優しさに似ていて 清らかなんだ 花嫁みたいに むずがゆくて、母さんにちんちんを擦り付けていた、ちいさすぎる、産毛の記憶が、醒めるように さめ、ざめ、と 降り注ぐのではなく 吹き付けるように、 冷たい 雨が さめ、 ざめ、 と、 こさめ、とか、あきさめ、とか、さめざめと その、ちいさな粒子が、ちんちんの、形に、 一瞬、ぶわりとふくれ、地面に落ちて、弾け 鮫、泳ぐ、泳いで、消えていく、 あるいは冷める、というように、 熱が引いて、タバコに火がつかない 喪服のディーバダッタが、爪の先に、溶け出す、ネイルを、見つめて、かたつむりの、群れが、ちんちんと、ちんちんを、重ね合わせて、ねばつく、粘液と、そもそも、主のちんちんは、一匹の、かたつむりの形をしていたので、蝸牛、渦巻く牛の、頭をした、人々が、子等を、焼く、真鍮の、像の中にも、あるいは、ちんちんが、ちりちりと、穀物とともに、はじけながら、それは さめざめとした雨と合唱して 雨の後に、海の匂いがする、海が、巡り、雨の日は、私たちは海の中にいるから、図書館に行かなくてはならない ちんちんが、湿るとしても 図書館に、行かなくては みな、図書館に行かなくては そしてみな、等しく、文字の中に踊る、ひらがなという、ちんちんの、躍動に 後鳥羽上皇が、筆をとる、その過去から 廻る、巡っていく、巡廻という言葉の、めくるめく、目眩む、渦巻く、輝きの、名前を あるいは、ヤーと、あるいは、ハーと、あるいは、ヴェーと そして、続けてちんちんと ひっそりと、 唇を、噛むように、 死ぬるように、 生くるように、 この、夜空が、澄み渡るように、 戦争を、知らない世代の、子どもたちが、 せんそうと、ちんちんは、3文字しか、違わないけれど、 ちんちんは、戦争を、できないんだね、って それを、手足を撃ち抜かれた、お姉ちゃんも、うなづいて、 ちんちん、ちんちん 優しいことばかりじゃないよ、きっと き、っと、 き、っ、と、 だから、お話しするんだね 小狐が、踊っている ねぇ、雨の日は、おなかが、ちんちんする 雨は、マイナス0.1度、やがて、雪になり きっと、夏は、もうこなかった、その、後の、秋も、きっと、この雨が、ちんちんと、 ちんちんと 降る、星の、見える、夜に 狐の、嫁入りだねぇ、って、傘を、さして この街に、もう、神様はいないけれど いなくたって、ベッドの上で レンガの、道端の上で そんな名前がなくたって、あの、宇宙の向こうにあった 遠い 懐かしい それは、ずっと 君の耳朶に、響いている と、ひとりの青年が、見知らぬ子どもに、言った クッキーを、一つあげたって、明日には、死んでしまっているかもしれないけど、この、夜の、綺麗さは、世界の、最悪なところとも、最高なところとも、矛盾しないから、矛も、盾も、収めたって、今日くらいは殺さないよ、なんて言えるのは、豊かな人だけで、山でも、海でも、みんな、今日も死んでしまうけれど、やがて、地球の公転が止まって、季節は止まるのならば、冬がいい、春には、命があって、夏には、プールがあって、秋には、温泉があって、ぽこぽこと、ぽかぽかと、安心できるのは、きっと、他の季節だけど、でも、冬が、いい 冬の、その、美しさに 神も仏も、ありは、しないのだから 寺の、柱に、縛り付けられた、泣いている、子どもの、指先が、描いた、鼠たち、だけが、きっと、諸人の、頬に、ちんちんと、ちうちうと、口付けて、その夜は、明けないことを、ひた隠しに、起きている、人たちに、砂男の、遺品を、届けて、ちうちうと、ちんちんと、形のない空の上の、形のない願いを、食い荒らすでもなく、ただ だから、どこまで、黒く深く、落ちていったとしても、そのさきに、浄土など、無くても ただ、 ただ、 歌えるんだよ、きっと 子どもたちが寝た後に、クリスマスキャロルを止めた理由を、教えてゾロアスター、縫い目のない、服を着て、アートマン、鶏の、頭の、ヤールバダーオト、いくつもの、名付けられた、神々の、ちんちんは、寒いから、ちんちんして、星は、スターで、アスターで、星は、星を、見つめる人たちは、昔から、ずっと、自分たちの思う、美しい言葉で、星、ホシを、名付けて、来たのだ、けれど、きっと その言葉もいつか忘れるから 忘れるのは、少し、悲しいけど それは、優しい、ことだから 忘れたたら、それを ちんちん、と、呼んで 忘れられて、思い出す人もいない 遠くの、空に 名前のない光が、ちんちんと消え残る
ちんちん考 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1978.3
お気に入り数: 4
投票数 : 13
ポイント数 : 0
作成日時 2024-04-06
コメント日時 2024-05-27
項目 | 全期間(2024/11/22現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
- 超絶絶唱絶句樂 (鷹枕可)
途中百鬼夜行タイトルも違和感なく入り込み、とても 楽しめました。 長いのですがぐいぐいきました~読ませますね、素晴らしかったです。朝からいいものを読みました
1ひとたび ちんちんを目にすると 息切れするまで喋り続けてしまうという 必死すぎる わかります わたしもです
1これだけの文量をコントロールしながらするすると読めるように綴られた労力と引き換えに、胸を貫くような衝動は少なかったように思います。しかし制約を置いて書かれているので、(それが)イメージが拡散して弾けていくという動作をむしろ制限していて、行き先の分からない堂々巡りのようなループ感を本作に与えていると思いました。好きな人は手放しで好きという作品だと思います。
2ちょっと最後まで読めていないんですけどすごいですね。これだけの労力がはらわれた詩をこんなとでぽろんと披露していいのかと思いました。圧巻です。すごいです。よくわかりませんが投票します。
2自然観から壮大な宇宙観へ。そして死生観までと至るこのちんちんの考察は実に手間をかけた労作で、もちろんお見事に秀逸な作品に仕上がっています。まあ、長くて読みづらいのだが文句の付けようもない。付ける余裕もない。このちんちんあるいはチンチン。金属的な響きですよね。音の表現としても。トライアングル。また仏事で使う鈴もそういえばちんち~ん。通常二回鳴らします。句読点のリズミカルな動きが忙しなくて、しかし流れるところはちゃんと流している。その考えられた技術もお見事だと思う。読んでいて坂本龍一のRAIN(シネマ)ラストエンペラー)を聴きながら読んでる感覚に陥ってしまう。明確な音ちんちん。これがなぜおちんちん(ペニス)男性器の愛称になったのかは知りませんが確かに考えてみれば不可思議な表現ですね。 語られる言葉の数だけでも膨大ですが、この切り絵(または病的な吃音とも)のように多投多様される句読点の作者像は以前にも見覚えがあって(いかいか氏)懐かしくも感じました。 現代詩人大賞を贈呈します。笑
0読んでいるうちに「ちんちんってなんだっけ?」と心地よいゲシュタルト崩壊に誘われる。
0ボクはちんちんというと何故かダークダックスを思い浮かべてしまいます。
0ちゃうちゃう、ハニー・ナイツやった、、
0素晴らしいですね。こういう詩を、誰かが書かねばならなかった、それは橙色さんだった。 非暴力の思想に貫かれています。その哲学的裏付けを行われましたね。 女性の鉄のブロックを解くには、僕のちんちんを使うしかない、どうか、死なないでください。 生きて、私に会いに来て。 プライベートなメッセージを書いてしまいましたが、それは、万人の思いと等しいのですから、 何の迷惑もかけていないと思います。
0ぐいぐい読んでいただけたならひとまず安心しました……!いや、流石に長すぎるなこれと思ってたので。お褒めの言葉、とても嬉しいです。(百鬼夜行シリーズは小ネタくらいのつもりだったんですがやっぱり気づかれますね。有名な作品ですし)
1ちんちんの話は、それを語る言葉が尽きるまでしてしまいます。でも語り終える頃には、次の言葉が浮かんでいるのです。
0まず、するする読めるというお言葉が嬉しいです。制約、コントロールされている、というのも大きな一本の流れのようなものを作りたい、と思っていたのでそこは上手くいったかな、と喜んでいます。 その上で、衝動……多分エネルギーというか、良くも悪くも衝撃的な破壊力、勢いみたいなものなのかな、とまぁ浅い理解ながら読み取らせていただくのですが、そういうものがなかった、というのは気にしておかなくちゃな、気にしたいな、と感じました。 あんまりこういう語りも恥ずかしいですが、とにかく遠くに遠くに向かっていくような詩を書きたかったので、ループ感、堂々巡りというのもそれが読み手に与える印象として良いにしろ悪いにしろ、もう少し出口方向に向かう何かが必要だったのかなと。 いや、なんというか抽象的な話をしているのでひどくわかりづらい、というかほとんど感覚でしゃべってるみたいになってしまって申し訳ないんですが……
1>でも語り終える頃には、次の言葉が浮かんでいるのです。 なるほど天才だわ...
0男性的な感性と女性的な感性と言葉遊びと素直な言葉とのマッチがとてもよいです。すごいとおもう。
0男っていいなと思える詩です。 汚いちんちん、か弱いちんちん、味のあるちんちん、優しいちんちん。 人生いろいろ、ちんちんにも色々ある。
0タイトルからしてとんでもない作品だなと思いましたが、読んでみると、哲学的で不思議な雰囲気に引き込まれていき、別の意味で衝撃的な作品だと感じました(・∀・)! 冒頭からちんちんについて書かれていると思いきや、そこから色んな物語がちんちんを交えて展開されていく。ちんちんという単語を物の名前以外にもオノマトペとして織り込むことで、ちんちんについて読者が途中から意識出来なくなるような持って行き方がうまいと思いました★ 大好きな中也も出演していて嬉しい(≧▽≦)♡ 欲を言えば、中也先輩より中也兄さんのほうが良かったかも…( ꈍᴗꈍ)
0「ちんちん」にまつわる壮大な叙事詩ですね。抒情性も感じられます。読むのに時間がかかりましたし、何でも「ちんちん」に繋げる話芸と言うのか詩芸には少しは辟易しましたが、読み応えはあったと思います。それは読み通せたことにも表れています。度々出て来る中也先輩や賢治先生、神話上や、民話上のアイテムと言うか、ちょっと分かり辛い、ワードもそのたびに調べながら読みました。確かに男性器の幼児語は深いですね。フロイトではないですが、みんな昔は子供だったと言う形で総括する訳にはいかないでしょうが、そんなニュアンスは通奏低音であったのだと思います。矢張り男性活躍社会などと言うと反発が強いでしょうが、そんな透明人間的な状況を反映させたような内容も、巧く迂回しながら詩作して居たのだと思います。読んだ甲斐があったと思います。
0投票ありがとうございます。
0へっへっへ、現代史人大賞、ありがたく頂戴いたしやんす。 というのはまぁ置いておくにしても、コメントありがとうございます。ちんちん、というのはまぁ男性器の名前なんですが、その音が無邪気であるのが私は好きです。金属的、なんですが、文字にすると柔らかくちょこんとしてかわいらしい。そういうちんちんのいろんな要素を書きたいな、と思っていたら予想外に長くなってしまったところはあります。
0むしろ私たちはもう一度、「ちんちんってなんだっけ?」に立ち返る必要があるのではないでしょうか?いや、わかんないですけど。
1多分世代じゃないですね……ちんちんかんぷん……調べてみます。
0後半の私信に関してはノーコメントを貫かせていただきたいところですが、過分なお褒めの言葉、ありがとうございます。非暴力思想、明確に言語化して頭の中にあったわけではないのですが、ちんちんをテーマにするなら大切かなと思うのでそこを見出してもらえたのは嬉しいです。
0ありがとうございます。ちんちんを書く上で女性性を捨象するのはダメだと思っていたので、女性的感性が入っている、というのはとても嬉しいです。
0ひとくちんちんにちんちんと言っても十人十ちんちん、それぞれのちんちんにかけがいのない良さがありますよね。ちん
1コメントありがとうございます。ちんちんが性器としてのちんちんを離れ、より大きなものに解けていくことが出ていたなら幸いです。 中也先輩は……譲れないかもです。解釈違いってやつですね……へへっ
1最後まで読んでいただいた上、読んだ甲斐があると思っていただけたならこれより嬉しいことはありません。いろいろ引用させていただきましたが、「こども」というのは確かに自分の中で結構重要なワードなのかもな、と言われて気づいた気がします。自分のことなのに。
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