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辞世の唄
あのね 人って思ったより強くないのね ぬるくなったスポーツドリンクをガラスのコップに注いで、その水面に向かって言った。 確かそのコップには、半分くらい水が入っていた気がする。気がするだけかもしれなかった。 あのね 人って思ったより 弱くもなかったの 結露はぜんぶ、コップの下の水溜まり。夏の暑い日のことだった。クーラーつけるのも忘れちゃってて、クラクラした。 あのね だからね シャープペンの芯をぽきっと折った。メモ書きに「。」を書いたから、もういいかなって思った。 コップを持って、一思いに飲み干した。 水で薄まったスポーツドリンクなんて、飲めたもんじゃない。 例えるなら、そう、雨の日の涙と同じ味がした。
辞世の唄 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 909.4
お気に入り数: 0
投票数 : 3
ポイント数 : 0
作成日時 2023-08-30
コメント日時 2023-09-04
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
雨の日の涙という表現が好きです。世の中はぜんぜんよいものではないが、まったくもって悪いものでもないかなと思います。
0これ、良いですね。 好きです^ ^
0人の弱さ強さ。ガラスのコップの結露。水たまり。水で薄まったスポーツドリンクと言うのは、詩の中で的確な位置を占めていると思いました。雨の日の涙は夏だと汗と勘違いされたり、雨自体が涙と勘違いされると、きわめて散文的だと思いました。
0その、タイトルが「辞世の唄」じゃないですか。 なんどか通読して、それは不思議な感覚だったり、やっぱり怖いなと思いました。 怖いな、と思いました・・・いいえ、なにか通読をくりかえしている内に それは薄まってしまうのですけれど、秘められた、心象のエッジ、などは判読できます。 やっぱり、コップに注いだスポーツドリンクから 半分「も」入ったコップか、半分「しか」入っていないコップか 悲観と楽観に揺れている不安定な心象風景が浮かんでくると思うんすよ。 しかし、その結露、の描写からそれではとりこぼすものが多い? なかなかエッジが効いているというか、それは肯定的な意味でエモーショナルで その、評に於て「心象風景」なんて言葉、使用すべきじゃないんじゃないか と今書いていて思いました。 辞世なのだし、描写されたものがぜんぶ、描写されたものがすべて。 そう受け取らないとやっぱり何か落ち着けないという意味でも、凄い詩だな と思いました。
0凄く、上手ですね。 心象描写も卓越していらっしゃる。 >結露はぜんぶ、コップの下の水溜まり。 この観察も、比喩ともとれる程巧みです。 本業の御方と見紛う程に、省略と細部描写のメリハリが利いていらっしゃる。思わず脱帽を致しました。
0料理をするとき、新鮮な青物に刃物を入れる、その一瞬に似ていると思いました。瞬間が積み重なってできる料理。それも見てみたいと思いました。
1では昔自分にしばしば起こっていた事に置き換えて、返詩を。 あのね 牛って思ったより強くないのね ぬるくなった、地面に広がった、牛乳に顔が映り、その水面に向かって言った。 立てなくなった牛に、怒鳴り、蹴り上げ、立たせようとしても、その牛は立つ気を失っていた。 あのね 牛って思ったより 弱くもなかったの みんなの心は全部、下に溜まっていった。換気扇ががなり立てても、クラクラした。 あのね でもね 心はすでにボキって折れて。ここまでやった。もういいかなって。 タイミングを待って、一思いに牛が立ち上がっていた。 搾れなかった牛乳が乳頭より噴き出ている。乳房炎の薬で青い牛乳なんて飲めたもんじゃない。 それでも、そう、口の中に安堵の味が広がった。
0上手な例えですね。虚しさもわかって欲しいものです。でもルールよりも心を優先したくなったり。
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