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橋の春
アスファルトの路面はなだらかではない 見つめるとわずかに不規則な起伏を成し さらに見つめるほどにそれが増幅し 隆起し陥没し捲れ上がり 小石や動植物の遺骸、糞や肉片が ぼろぼろと湧出するのだ言葉のようにね 人体はベニヤ板を貼り合せた立方体に等しい と常々考えている君と 深く長いキスをした 深いところで深く唇を交わそうと 絡み合う舌が唾液の糸を長く引こうと ひと度沈んだ立方体は浮かばない しずしずと曇ってゆくこの春の空 荘厳な陶酔の底 自動車修理工場横の側溝の橋の上で 二人の魂は一行の詩となるが 発する言葉は単純で乱雑で およそ意味らしい意味など無く 強度を持たないベニヤ板は べこんぼこんと撓みながらやがて割れるはず 凝結した水の粒子が犇めく空の底で 果たして僕らはどんな終息を迎えるのか 接合がゆるんだ六枚の板が ひしゃげ、解体され、解放され、圧壊し そしてね君、僕らは何ものでもなくなる 頭上では満開の桜が 堰を切ってこぼれ始めるこぼれてくる 身体を離した僕たちが瞼を赤らめたまま 官能の幻想から解放されるともはや 総ての言葉の隙間に花弁が惑乱している さようならも死にたいもお腹がすいたも 気圧が低すぎるもなんだか肌寒いも 白に近い色彩の嵐のただ中にある 詩の文節は粒立ち光る 事象はミクロの次元を更に越えると マクロの法則とは異なった運動をする そこに愛の面影は既にないが マクロの現象を整合させるには 極小の粒子の次元を知らなければならない 僕は路上を見つめる見つめる見つめる 修理工場では 最後のタイヤがボルトで車軸に固定される
橋の春 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 993.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-04-13
コメント日時 2017-05-05
項目 | 全期間(2024/11/22現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ちょっと今時間がないのでとりあえずのレスだけしておくが、 第一連の有無でこの詩の評価は大きく変わっていただろうね。 これがあることで酢で〆たように全体が引き締まった。 またちゃんとしたレスをするかもしれないがとりあえず。
0「そしてね君、僕らは何ものでもなくなる」 あなたに そう告げられてしまった僕の細胞は 透明になってしまったよ 満開の桜に目移りする 僕の薄い唇と比べるよう だからね兄さん、僕らは全てを忘れましょう 少しBLを狙って返詩を書いてしまいました。 右肩さん、毎度、投稿ありがとうございます。
0祝儀敷さん、コメントありがとうございます。 一連、どうですか?自分でもちょっと気に入っています。 「レスをするかもしれないが」なんていけず言わないで、お願いしますw BLか〜!三浦さん、コメントありがとうございます。 そうか、そう読めないこともないですね!敬服しました。僕はそうじゃないけど、この部分だけ取るとピッタリですね。驚きです。一番センチメンタルな部分ですが、確かにここに思い入れはあります。ホンモノの人類は1999年8月にとうに滅んでいるんですよね、きっと。影に過ぎない僕ら。パタンと軽く倒れて何も残さないのも当たり前です。
0アスファルトの路面がどんどんアップになっていき、生き物のようにうねる第1連が特に良いです。その後の展開にも作者の自信が伺えます。ちょっと上手すぎるというか、テクニックが過剰な気がするくらいにレベルが高い。「わかったわかった、パタリロ君の負け」という感じです。 方広寺鐘銘事件並みに何とか粗を探すとすれば、「自動車修理工場横の側溝の橋の上で」がちょっと分かりにくいくらいでしょうか。作者の意図とか関係なく、四人囃子の「一触即発」を聴きながら読ませていただきました。
0さようならも死にたいもお腹がすいたも 気圧が低すぎるもなんだか肌寒いも 白に近い色彩の嵐のただ中にある というのから 粒だち光るというワードに行けたのは意識的なものなのか気になりました この部分がとくにいいとおもいました
0もとこさん、コメントありがとうございます。 「上手すぎる」と言われるのは嬉しい反面、手馴れたやり方で済ませてしまっていないか、という反省にもつながりますね。自戒しますね。晩年のピカソじゃないけれど、即興で書いた子どものような言葉がそのまま詩になるように書くのが理想でしょうか? 「側溝の橋の上」としたのは石造りの立派な橋や、情緒溢れる木橋では困るからです。コンクリートで作られた、文化や叙情というものへの憎悪が剥き出しになったような、醜い小橋がいいですね。
0霜田さん、コメントありがとうございます。 そこの部分は計算したわけではないのですが、普通の流れとして書きました。1行あけたのは、逆に「切れ」を作りたかったからかも知れません。いいと言っていただけて嬉しく思います。
0もとこさんではありませんが、まず、「うまいな」という・・・ 一連目、「言葉のようにね」を指で隠したり、見えるようにしたりしながら、二連目以降を読み進み・・・三連目の「二人の魂は一行の詩となるが」この時点で、ああ、言葉のようにね、は必要だな(伏線になっているし)と納得。 「荘厳な陶酔の底/自動車修理工場横」~koと脚韻を踏む、詩的世界と日常的世界の対照という、広い詩的空間の取り方が素晴らしいと思い・・・その中で、「人体はベニヤ板を貼り合せた立方体に等しい」という生々しい実感の稀薄な肉体把握をする「君」が、「詩」そのものでもあるような読み方をしたくなりました。日常と非日常(詩的高揚感の世界)とをつなぐ「橋」。そして、どれほど深い交歓を交わしても、「強度を持たないベニヤ板は/べこんぼこんと撓みながらやがて割れるはず」というある種の不毛性・・・発せられる言葉が、すぐにパラパラと剥離していって、何も残らない。その空虚感の中で、詩的高揚を望む魂だけが、詩的世界へと(空の底、へと)上昇/下降していく。しかし、そこにたどり着くのは、全てが無、となることと同義である・・・というような。 「総ての言葉の隙間に花弁が惑乱している~白に近い色彩の嵐のただ中にある」 まだ見ぬ、未来の「詩」が降り注いでいるような光景だ、と思ったところで、一行あけの後にバシッと置かれる一行が光っています。 「事象はミクロの次元を更に越えると~極小の粒子の次元を知らなければならない」 この部分は、作品全体を要約するような(あえて理屈っぽい、観念的な言葉を用いていることもあり)簡潔さを持った部分だと思いました。音楽でいえば、全体のテーマを最後に再現する、部分。一粒の砂にも世界が宿る、だったか・・・ブレイクの言葉を思い出しつつ・・・ ミクロ、冒頭一連目の、徹底した肉眼による観察を突き抜けて、心眼でしか見えない、失われたもの、が見え始め、それが「言葉」となる、というところから、「橋」によって結ばれる日常と非日常(空の底、マクロの世界)への展開。よくできてるよなあ、ともう一度つぶやきつつ・・・ 「僕は路上を見つめる見つめる見つめる」の前に、一行アケを設けてもよかったのでは?と感じました。
0まりもさん、コメントありがとうございます。 作者も惚れ惚れとするコメントでしたw 何度も読み返して、もちろん指で隠すのもやって見ました。なるほど。 最後の行の1行空けにしないところ、当然そうすべきなのですが、「整いすぎ」からくる胡散臭さを誤魔化すためにわざとそうしませんでした。 そう、この作品には強いパッションが ないので、終始胡散臭さがつきまとうんです。それから「君」の存在が希薄すぎるんで、多少バランスが悪いんですよね。その「君」を「詩」に読み替えてくれるなんて、素敵です。本当にありがとう。
0>頭上では満開の桜が >堰を切ってこぼれ始めるこぼれてくる >身体を離した僕たちが瞼を赤らめたまま >官能の幻想から解放されるともはや >総ての言葉の隙間に花弁が惑乱している >さようならも死にたいもお腹がすいたも >気圧が低すぎるもなんだか肌寒いも >白に近い色彩の嵐のただ中にある うますぎる。いや、惚れ惚れしますね。桜の花びらにそこまでこめるかと言わんばかりの感じ。ここまで込められるのかという驚きもあります。ほかの箇所のグレイトとしか言いようがないのですが、細かい読解は一人でやれる自信がないな…ちょっと時間かかってしまうと思うんですが、後で再レスしたいですね。
0上で三浦さんがBL返詩してるのを見て私の眼がカッと開きまして。 それを念頭に置いて、改めてBL読みしたところ「うわ、やべぇ…」と自然に呟いてる自分がいました。感服。そんな読まれ方は想定してなかったでしょうけど、いや完璧です。ちくしょー。
0hyakkinnさん、コメントありがとうございました。 惚れ惚れしてくれて有り難うございます。何かを誰かに届けることが出来たら、書かれたものにとって本望だと思います。 作者は作者。最も作品を分かっていない人の一人という立場で十分です。 ひいらぎさん、コメントありがとうございました。 オヌシ、もしや”ふ”の者であるかw やべぇっす。 ちょっと適当すぎる出来ですけど、三浦さんの作品に”ふ”の返詩をつけましたのでよろしかったらご覧下さい。 いや、まさか自分がそんなものを書くとは思わなかったんですが、ノリで……。 想定されていない読まれ方、とても嬉しいです。
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