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落とし物
何もない画面に向かって キーボードの文字を打つ 指先だけからおれが生まれる 生まれ変わる、何度でも いつでも 海に沈めたグラスの中の水 青空に掲げて陽に透かして見る 輝いた 揺れて輝く さっきまで海だった、ただの水だ いまは 海かどうかなんて水には関係のない話 何度でも、死ぬ 何度でも きみの手を引いて歩く砂浜 まだ人が少ない場所 寒い風が吹いてくる 波は引いていく 繰り返し繰り返し 前に出る爪先 砂に少し埋める かもめ? きみが伸ばした指先のずっと向こうへ 遮られることのなさが おれに存在の絶対を信じさせている 時間の断面に映った無限 寄せてくる波に濡れて 歩く 足跡は消されておれたちは何も残さない 重さだけを繰り返す 何度でも 何度でも 世界に自分のものはない すべてを借りたら返す おれたちは宇宙の始まりから在る原子で構成されている 明滅する現象 透き通らない明るい灰色の空の下 生まれたおれがまたおれを生む 世界は数えられない きみもまたひとりだと数えられない 部分のないすべてとして だが、それはおれには関係のない話 貸し借りの帳尻は最初から合っている 水平線だ かもめじゃない
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落とし物 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 839.3
お気に入り数: 1
投票数 : 5
ポイント数 : 0
作成日時 2025-01-11
コメント日時 2025-01-16
項目 | 全期間(2025/01/18現在) |
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叙情性 | 0 |
前衛性 | 0 |
可読性 | 0 |
エンタメ | 0 |
技巧 | 0 |
音韻 | 0 |
構成 | 0 |
総合ポイント | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
少しハードボイルドで哲学的で難しいけど、谷川俊太郎さんが、詩の中で水平線に落とし物をした、という内容を書いてらしたオマージュかなあとか思いました。なんとなく強い男を想像した。いつもは短編小説なのにゼッケンさんの詩を読めて新鮮!
1臨場感があって楽しい詩です。臨場感を生むのは、好奇心と観察能力だと思いますが、内容を読んでいるとよく観察し、好奇心旺盛なことがわかります。
0「重さだけを繰り返す」で、オーとなり、「きみもまたひとりだと数えられない」で、オオー!となりました。(落し物って何でしょう、生み落とすということなのかな。)そして、「貸し借りの帳尻は最初から合っている」はふだんのゼッケンさんっぽい言い回しだと思いました。とりわけ二行しか出てこない「かもめ」が印象的でした。確かカモン、カモンと鳴くんですよね。余韻の残るラストもいいです。
2この作品とてもすきですし、この方向性の作品もっと読みたいです。綺麗だった……。これから何回も読み返します。 >世界は数えられない きみもまたひとりだと数えられない 部分のないすべてとして だが、それはおれには関係のない話 貸し借りの帳尻は最初から合っている から、ドライな関係の男女を想像しました。そういう関係の男女を書いた作品を私が好きなだけで、誤読だったらすみません。 >さっきまで海だった、ただの水だ いまは これ寺山修司の『海を見せる』を想起しました。寺山の書いた"ぼく"には海を見せたいという切実さや湿っぽさがあった一方で、こちらの作品の"おれ"はすごく乾いている。何度でも生まれ変われると思っていて、おれがおれを産むことができるという全能感に支配されている。こういうひと、個人的にめちゃくちゃすきなんですが、水平線か、かもめかみたいな言い合いで喧嘩になって結果離れることになるんですよね。変なコメントですみません。またこういうの読みたいということを伝えたかっただけです。すてきな作品ありがとうございました。
0繰り返し、繰り返されたもの(もしかしたら)繰り返し、くりかえされなければならなかったもの、幾度も、 - 何度でも という表現が印象的でした。
0くりかえされる再生というのか、はじめ、スケールの大きな世界をえがいた超ドポップ・キラーチューンっていうふうに読んだのですけど、よく読むとけっこう怖い詩行があります。海って怖いし、デカくて深いプールも、わたしは怖い。個人的に、鉛みたいに「ゴロッ」としているのがゼッケンさんの特徴だと思っていて、作品がどう展開しても、そこは常にあるように思います。しかし、どんどん展開する力がある、というのは凄いことだ。
0「貸し借りの帳尻は最初から合っている」 ココ!ココがかっこいい!ココで終わりにしてほしかった。 (あくまで個人の感想です)
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