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冷たいグラスの内側で動きを止めた世界に穏やかに横たわる白い肌からにじむ重さのない光を浴びながら若い警官は生まれて初めてこの星から少しずつジュースが零れていく音を聞いている 巧妙なレゴブロックが積み上げられた都心の衒いのない公園の枯れた芝生で彩りの褪せた落葉から半身を晒したそのからだは何も身につけていない様子で胸の上に組まれてほんのり赤味の差した細い腕には鳥肌ひとつ浮かんでいない 葬儀の支度を確かめるようにおろしたてのスニーカーで周囲を静かに歩いているうちに若い警官はできたての乳製品に似たボディークリームの容器を発見するとノズルから洩れたクリームは点々とそのからだに向かって緩やかに円弧を描いている 状況から見てこの人工的に凝縮された液体は何者かによって満遍なくそのからだに塗られたのちに容器のみが遺棄された可能性が高いと若い警官は思いを巡らせながらでもなんで自分が警官になったのかその理由が段々わからなくなってきている 犯人は非常に高い技術を持った者と見られるとスマホにメモをしているうちに落葉の色合いや質感との対比で艶やかに湿った光を放つそのからだはたおやかな白磁の陶器のようで彼は手袋をとってその肌に触れてみたいしできれば静かに抱きしめてみたいと感じるがそれは決して許されることではない 若い警官は徐々に傾きを変える未明の陽光に目を細める、実は彼にはそれが男なのか女なのかもわかっていない、生きているのか死んでいるのかもわからない、いったいこれまで何を学んできたというのか、彼は自分の経験不足を心から恥じている スニーカーが枯葉を踏む音が耳元に届く 心が止まってからというもの部屋のインターホンを聞いていないことに突然思い当たる、そして彼はこどもの頃に自分の容姿がひどく嫌いだったことを思い出すが、どうやってその醜さに折り合いをつけることができるようになったのかを思い出すことができない ビルの間に広がる空を見上げると湿度のない空気が鼻から喉の奥に抜けて彼はこれまで誰かの遠くを漂ってきただけだったことを寒気のように感じる でも自分にとってはそれが自分にできる仕事だったのだ、自分は自分なりに精一杯やってきたのだと若い警官は思う 彼はニット帽を脱ぐと長く伸びた髪をかきあげ深呼吸をしてその美しいからだの隣へゆっくりと自分を横たえる 頭の後ろで落葉が砕けて粉になる音を聞く いつまでも青くならない空の向こうで弱い星の光がひとつ消える 「もうこれ以上、ジュースを零さないように」 彼は消えた星に向かって約束するように呟く 心と世界の均衡を崩さないように小さな声で
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作品データ
P V 数 : 2340.2
お気に入り数: 1
投票数 : 9
ポイント数 : 0
作成日時 2024-12-15
コメント日時 2025-01-10
項目 | 全期間(2025/01/18現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
ウォン・カーウァイ監督の香港映画『恋する惑星』を何故だか思い出してしまいましたよー共通点が若い警官とゆーだけで!ジュース!クリーム!何やら何やらー僕も自分の経験不足を心から恥じているのですよー
1三明十種さん、ありがとうございます。恋する惑星!そんなにかっこいいものではないですが、この寒くて乾いた季節にジュースやらクリームやらの水分が欲しかったのかもしれません。冬はとても気持ちが静かになる季節です。
0閾値というか 佐々木さんの作品は俺の詩に対する感覚、 良いなと思う感覚を超えてくるというか しかし今回の作品はそれが中々はっきりしなかったな 読んですぐにガチンとくる場合もあるけど 今回はなんかよくわからなかったな しかし嫌な感じもなかったな やはり人が作るものだからさ 他の人にとっては異物でもあるわけで 詩と言うジャンルはその点まだ異物感というものはあまり無いように思うけど 閾値は超えているけれどもしっくりはきていないみたいな感覚があったりするんだよね まぁ前置きはこんな感じなんだけど 今回の作品はさつまり > 若い警官 と言うワードが俺的には問題というか この作品はさ、このワードが無かったら多分結構コメントもついてそれなりに評価されたと思うんですよね いつもの佐々木さんの世界観の中で突然引き戻されるみたいな しかもちょっと嫌な感じで 最初の方でこの作品は嫌な感じでは無いと言ったんだけど、このワードに関してはまぁ嫌というか躓くというか 別に若い警官でなくても良いのではないのかなと思うんですよね もっと佐々木さん的にもあると言うか。 引き出しの中に。 「若い」も気になるんだよな 敢えて若くなくても良いだろうにとか思ってしまう いや、これ批判というかdisっている訳でもないんだけどまぁ現実には書いてる分には そうとしかとられない感じなんだけど つまり作者はイコール若い警官ではないし 語り手と若い警官はイコールでもないだろうなと思うんでつまり若い警官は 何のメタファーなのか? 若い警官から何を感じ取れば良いのだろうか みたいのが俺の中にあるんですよね 若い警官から何か何処に意識がいかない 死んだ比喩と言うか まぁちょっと意味合いは違うかもしれないけどジョジョの5部でレオーネ・アバッキオ のみる走馬燈の中の警官の名言と言うか 「真実を追い求める意志」 まぁこれは5部そのもののテーマでもあるんだけどこれの事かなとも思ったけど 逆に他にどんなイメージがあるのかと思いました若い警官のイメージってこう無いと言うかなんか交番と言うかそんなところに詰めている制服を着た本質的に何をやっているのかよくわからない人と言うか 恐らく交通事故の現場のアレとか 一旦停止のアレとか何だろうけど パトカーに乗っているイメージも無いと言うか警官ならまだあるけど若い警官?ムム? って感じなんですよね しかし敢えてかどうか知らないけど佐々木さんが書いているのでそこには何かあるとは思いますけどね 俺の中で佐々木さんは信頼に足る人物と言うか詩作品に対して信頼できる書き手なんで 若い警官と言う言葉に何かしらの意味があると思っています。 実際何十回も読んでいると良いと思い出したしね、実際何十回も読もうとおもう作品は良い作品なんで ちょっとよくわからない感想になりましたが 評価できる作品だと思いましたという事です
1ひさびさにコメントしますが、これは若い警官と犯人というキャラが強いので お話 として置かれているようにみえてしまうのと、そこは 佐々木さんの手腕 で(手癖で)流れるような視界を生み出せるのだけど、この 2つの先入観 でみてしまい、それがどう接点を持つのかという固定観念から、繋がらず、わたしは(あくまで わたしは、です)この詩のおもしろさを(良さを)見いだせないのですね。結局作品としては、なにが書かれているのか、という疑問より。この詩から読み手がどう感じ生み出せるのか、なんです(わたしはそういう読みをしています。)これ、行分けにして、内容を汲み取らせるのではなく、もっと凝縮し読み手に委ねる必要があったのかもしれないね。(とわたしは思いますが、佐々木さんとはだいぶ考え方が違うので、参考になるかはわかりませんが。
1ちょっとカフカのようだな、と思いました。 でもカフカって(ベケットもそうですけど) あれは結局、神の問題ことを書いてるんだろう。 わたしたちの生きる場所には神なんてものは「ない」のであって、 だからカフカみたいなものは書けない。 ていうか、ぜんぜん書く必要もないというか、 禁欲者のごときカフカやベケットが頂点といわれている20世紀文学は、 すごく貧しい時代だったんだろうなって、 わたしなんぞはふと思ったりもします。 もしかりに、そういう地点で詩を書くとしたら、それはすごく難しいことだ、、 さて、この作品についてですが、ここでは明らかに何か断ち切り難い絆が描かれていて、 「もうこれ以上、ジュースを零さないように」というのは、 理性的・知的ではないもの、 イレギュラーの表現だということだろうと思うのです。 ただ、それは「恋愛」というはっきりしたものではない気がするし、 どちらかというと恋愛を怖がっているようなニュアンス、 もっと(それこそカフカ的に)普遍性があって、かつ複雑な糸が絡み合っているように見えます。 腑に落ちる明快な読みを見つけるのは難しいでしょう。 特に「若い警官」という語彙の選択について考えてみると、 「警官」である必然性、あるいは「若い」という属性の表現としての効果、 ですね。この言葉が生み出す距離感にはある種の意図が込められているのですけど、 うーむ、
1信じるものと信じないものではなく 信じることを疑わないものと 信じることを疑うものって感じで 読みました。 こころと言ったら有名な作品もある 中でこの作品の心はどこか遠くで 生きている。そういう気分になるのは いいことじゃん。
1硬質、というのが佐々木さんの詩の世界観なんだろうか。そう思わされるような作品だった。
1よんじゅうさん、コメントありがとうございます。 > 信じるものと信じないものではなく 信じることを疑わないものと 信じることを疑うもの 確かにそうかもしれません。これまでに見たこともないものに出会ったときにそれに身を委ねることができるかって難しいですけど、それが新しい自分につながっていくような気がします。
0テイムラーさん、ありがとうございます。意識して硬質にするつもりはなかったのですが、みなさんのご指摘の「若い警官」が出てきてしまったのでそんなトーンになった気がします。なぜ「若い警官」が出てきたのかは指摘を受けて考えてるところです。
0不条理で不思議な世界観ですね。まるで言葉が織り成すパラドックスで構成されたブラックボックスのようで、出口のない硝子の迷路の中を彷徨うような感覚を覚えました。繊細で謎めいた描写が全体に満ちてあり、深い思索へと誘われるように漂いました。文脈を流れる無意味さが、私の認識と理解の枠から食み出して、私の認識と理解を丸ごと包み込むようです。雰囲気的な作品ですが、巧妙な描写による重厚な構造が快楽に結びつきました。ジュースを零さないように、という言葉からは、グラスの内側に収まったこの世界の際どいバランスが壊れ、裂け目から何か大切なものが零れ落ちる危うさへの警鐘を感じさせます。
1吸収さん、コメントしずらい作品へのコメント、ありがとうございます。 ご指摘については仰る通りというか、実はわたしも最初は一人称で書き始めました。 そして、その方が多くの方にすんなり読んでもらえるんだろうなとも思っていたのですが、書いている中であまりに世界観が美しすぎるというか…書ききれなかったところがあります。 一人称だと始点が透明になってしまうので、客体としての「からだ」やそれを取り巻く空間が綺麗になり過ぎてしまうような気がしたのです。 それはそれでよいとは思ったのですが、わたしなりに美しい感覚は前作の「例えば、朝」で意識的に書いたので、(同じものを)それとは違う形で書いてみたいと思ってました。 そこでなぜ「若い警官」が出てきたのかはわかりませんが、吸収さんのご指摘を受けて考えているうちに、たぶん潜在的な海外文学の影響というか、おまるたろうさんの仰るカフカとか、あとはガルシア・マルケスの「百年の孤独」の軍人とか、そこらへんからきているような気がしました。 どこかで感情移入を拒む要素を入れることで、「わたし」と距離を置きたかったのかもしれません。 それが功を奏しているかはわかりません。実際、みなさんの「う~ん」という反応につながっているのですが、これも自分のどこかから出てきてしまったものだし、作品としては成立している気がするのでアップしてみました。 >実際何十回も読んでいると良いと思い出したしね、実際何十回も読もうとおもう作品は良い作品なんで ありがとうございます。光栄です。自分の作品を何十回も読んでいただけることがあるとは思っていなかったので、うれしいです。ひとつひとつの作品をしっかり書いていきたいと思います。 この作品は違う形で書き直してみようと思っています。 毎回丁寧なコメントをいただき、ありがとうございます。
0「彼はこれまで誰かの遠くを漂ってきただけだったことを寒気のように感じる」 「でも自分にとってはそれが自分にできる仕事だったのだ」 ここを見逃してはいけないですね。 警官って、イメージですけど、市民のため、他者の平穏な生活のために動くものだと思います。でもその前に、自分にしてあげられることを求めていた。これがこの警官の「若さ」にあたる部分のように思います。 あまり書かれてはいませんが、自分の容姿が嫌いだった過去を思い出しているところから、その幼少期の心境のアンバランスさが滲む。警官という、一つの固い正義を背負うことになったのも、そのバランスを取るためだったのかもしれない。冒頭にも重ねて思うのは、人生の選択は時に、「巧妙なレゴブロック」が積まれるように残酷で、自分の意志と思っていたものが、本当は外圧により産み出されている時がありますよね。その弊害を、この警官は被っている気がしました。 というのも、半身を落葉からさらす人に、まず事件を見出だす。職業病でしょうか。しかし、 警官になりきれていないようにも描かれる彼は、スマホにメモしたり(事件性があるなら無線で上司に連絡とかですよね)、スニーカーやニット帽でなんだかカジュアル(調べると、警官専用のものはありますが、少なくとも詩の中の警官は厳かな感じではない)。 そしてこの詩は最後が巧いのです。グラスからずっとジュースが零れそうな、不安定な生活を送っていたのを、いつでもピシッと屹立する警官という立場になることでバランスを保ってきていた。でも違う。辛ければ、横たわってもいいんだと。 ブレイクスルーが起き、頭の後ろで落葉が砕ける。グラスと違って、人間は倒れてみた方が、ジュースが零れないことだってある。そう気づけたのだと思います。 私にとっては、「若い」も「警官」も、この詩に合っているように思いました。良い詩でした。
1「警官」の回想や、ジュースや、クリームや、液体や、経験不足からくる恥じらいなど。感覚が鋭くなっていると言うよりは全てが回顧的になっている事情への抵抗なのかもしれません。他者を対象化した神視点と考えることもできるこの詩ですが、この詩自体が小声の詩なのかもしれません。
1AOIさん ひさしぶりにコメントいただきありがとうございます。 この作品を一人称で書いていて、その中で「若い警官」が浮かんできてしまって迷ったとき、このまま「若い警官」で書くとAOIさんに「お話」って言われるだろうなって思ったんです笑 でも浮かんできたものは仕方ないし、何回か読み返してみてある意味で「お話」としては成立していないので、消去法としての詩って考えてもいいんじゃないかなと思って投稿しました。 ちなみに「若い警官」が対峙しているのは犯人じゃないです。たまたま遭遇してしまったよくわからないからだです。 でも、AOIさんのいう「凝縮」というのはやってみたいと思います。この作品もこういうかたちと、もっと短い形を平行して書いていて、先に出来上がったものを整えてみました。
0正直初読で読みづれえなと感じたので(心惹かれなかった)読解することは避けてたのですが。皆さんの見解を見て、オモロイのかなとおもってやってみました、多分だいぶモノ的に失礼な物言いであることは承知で語らせて頂く。前に書いたコメントとともに謝っとく、だいぶすいませんでした(土下座) まずはじめの現象としてボディクリームやジュースをこぼさない(暗喩)全裸であることからレイプ現場だとおもいました。そして後半の悶々とした感じからこの若い警官をヘンタイだと捉えます(すいません) >彼はニット帽を脱ぐと長く伸びた髪をかきあげ深呼吸をしてその美しいからだの隣へゆっくりと自分を横たえる ここですよね、異常性癖やん!とかおもってしまって。まあでもそんなこと書くわけ無いでしょうから、自分に寄り添うって意味でしょうねー で、より深く違う側面で覗いてみました。 一連目から流れるように視界に映し出されるセカイは現実とは違うものです。それは暗喩ととして語彙に意味を被せてあるでしょう、けれどそれを一般的に 見る となると、それは 夢である ことが浮かび上がってくるとおもいました。 夢で見ることは記憶から熾されることだと捉えます、その記憶は過去に繋がっていきます。それは後半の、現実に対峙している若い警官の姿からも想像ができるでしょう。 >心が止まってからというもの部屋のインターホンを聞いていないことに突然思い当たる、そして彼はこどもの頃に自分の容姿がひどく嫌いだったことを思い出すが、どうやってその醜さに折り合いをつけることができるようになったのかを思い出すことができない >彼はニット帽を脱ぐと長く伸びた髪をかきあげ深呼吸をしてその美しいからだの隣へゆっくりと自分を横たえる たとえばこれは背の低さや声の高さ、そういった醜さが嫌いだったから、夢の中では男らしさとして警官に至るわけですが、その屍体をみて、やはり彼自身が個性として認めたこと(長く伸びた髪をかきあげ)でもあるとよみました。 書かれていることに無駄がなく、確実に意味を持っていると思って読み解きますから、かなり曲解しているとおもいますが。 見解としては2通り ・現場として実際若い警官の彼が、事件現場に立ち会ったとするきっかけを描く→ここから自分と向き合うことになった ・夢に現れる警官や屍体は自分自身のバランスと保つために生まれていることであるという暗喩 のどちらかではないかとおもいます。 どちらにせよ彼の内面にあることを(実際これは警官じゃなくてもいい)けれどてっとりばやく置くための装置として、警官と屍体と彼が 必要な部分として残った。細かく説明しなくても暗喩として成立するのだとおもいましたね。 そこからなにをみてなにをおもうのかを、読みてそれぞれが楽しめる(というか、試される)ものだと感じました。わたしとしては縦書きでもうちょっと見栄え良くあれば、最初のコメントを書く前にこの読解にたどり着いたような気がします。いかんせん、佐々木さんのものはなぜだか読みづらく、なんでこういう置き方(書き方)するんだろうっていつも思うので。そこで躓いてしまうんだが(私も思われてるとおもいますけどw) 言葉を選んで書くという部分においては申し分なく、だいぶ高度なことをしているように感じます。ただやはり読ませ方見せ方ですかね、私がいつも気になるのは。またこれかーという、受け取るかたちの問題 で躓かせ読む気がなくなります。書いてしまう文字をどう制御しかたちに収め読み手に渡すかみたいなの。ようはプレゼントのラッピングみたいなものだと考えてください(そうなのかな?どうだろうな……)私が言える立場でもないですが、一段と成長されることを期待してます。頑張ってください。
1若い男性として若い警官としてのバランス、全裸屍体のくせに落ち葉で隠されてるとかあるので=そういう抽象的な問題、引っ込めていたトラウマ的なものが、ある、自分でしょう。そういう心と体の均衡、いやでも屍体が屍体として受け取るだけではなく。明朝そういう夢を見た、ようは自分で自分を殺すみたいな印象。 ざっと読んで異常性癖は却下。警官の任務なんて硬いことでもなさそう。そうすると自分の容姿と、屍体を見比べる必要がある。そんなかんじでした(書き忘れた)
1ありがとうございます。いえいえ、全然失礼ではありません、むしろあまり心惹かれないものを時間をかけてしっかり読み解いていただいてありがたいです(皮肉ではありません)。 異常性癖は却下していただいてありがとうございます笑 その上で、いつもどおりわたし自身にも正解があるわけではないのですが、 >見解としては2通り、・現場として実際若い警官の彼が、事件現場に立ち会ったとするきっかけを描く→ここから自分と向き合うことになった・夢に現れる警官や屍体は自分自身のバランスと保つために生まれていることであるという暗喩 どちらも成立しているというか、同時に成立しているように思います。かなり抽象的なことを書いていると自分でも思っていて、そもそも現実には起こらないことだからこそ、何か具体的な視点を設定したのだと思います。 あと、若い警官を「彼」で受けるのか「彼女」で受けるかはかなり迷いました。実際、「彼女」で受けて書いていったのですが、それだと読んだ方が(そもそもわかり辛い作品なのに)さらに混乱してしまうかなと思って「彼」にしました。 >若い男性として若い警官としてのバランス、全裸屍体のくせに落ち葉で隠されてるとかあるので=そういう抽象的な問題、引っ込めていたトラウマ的なものが、ある、自分でしょう。 そうですね、普段は意識しないようなトラウマというかひっかかり、自分のここが好きじゃないとかって中学とか高校のときは思っていてもいつの間にか馴染んでいく。それってどこにいったんだろうっていうのはたまに思います。もちろんそういう時代に戻りたいとかそういうことではなくて、実はやっぱり知らないふりしているだけで、どこかでジュースが零れ続けているんじゃないかって。 >書いてしまう文字をどう制御しかたちに収め読み手に渡すかみたいなの。ようはプレゼントのラッピングみたいなものだと考えてください これについてはわたしも違う書き方ができないかなといつも思っています。ただ、こういう風にずらずら並べないと出てこないことが多いので(わたしの意識とか思考とか言語感覚の問題でしょうか…)、二作に一作はむりせずこういう形をとっています。前作はかたちを変えてみましたが、さらに抽象的な作品になってしまいました。 というわけで、AOIさんのご指摘は常に心のどこかにあります。ありがとうございます。
0あおいさんのコメントを拝見し、「屍体」として解釈する視点にはなるほどと思いました。合評として、私の捉え方を述べさせていただくと、「屍体」と解釈されたそれは、生きても死んでもおらず、性別も不明で、情報があまりに少ない正体不明の曖昧な存在として映ります。ただひとつ分かるのは、それが人間らしき何かだということだけであり、まるでブラックボックスのような存在です。それに反して、若い警官は非常に具体的で明確な存在ですね。彼の思い出やコンプレックスといった内面的な要素をはじめ、様々なガジェットを通じて、具体性が更に肉付けされ、具象的な存在感が増していきます。しかし、結局は彼が何者であったかは明確に示されてはいません。それでも、こうして抽象的な存在と具象的な存在が隣り合わせに横たわるという構図。そのコントラストとバランスが非常に絶妙だと感じます。
1自分は読んでいて、彼と書かれていても彼女を思い浮かべたので、それだと、当たり前に彼女としてみえてしまうので、彼でよかったのだとおもいます。そのほうが解釈が多岐にわたるでしょうし。まあ、意外とどうでもいいことなのに何故だか引っかかったりなやんだり書いていて実際するので、そこはきっと作品の大事なとこで、強度につながるのかなと思っていますが
1ちょっと書きかえてみようかな 佐々木さん的に書き換えは受け付けていますか?
0吸収さん、具体的なかたちをとったコメントのようなものと理解するので問題ないです。
0おまるたろうさん、ありがとうございます。 正直、そこまで不条理なものを書いたつもりはなかったのですが、確かに読み直してみるとだいぶ不思議な(とらえどころのない)感じがしますね。 カフカは読み込んでいるというほどではないですが、「城」を読み終わった後は数日間何もしたくなくなるくらい衝撃を受けました。そういう意味では貧しさとか神といったテーマがなくとも、現代に響くものがあるのではないかと思っています。 カフカを意識して書いたわけではありませんが、海外文学を読むことが多かったので、そういう要素も少し勝手に顔をのぞかせることもあるのかもしれません。 この作品も動いている人は名前のない「若い警官」しか出てこないし、状況自体が非現実的なので、そもそも日本人でなくたってよいのかもしれないですよね。 >「もうこれ以上、ジュースを零さないように」というのは、理性的・知的ではないもの、イレギュラーの表現だということだろうと思うのです。ただ、それは「恋愛」というはっきりしたものではない気がするし、どちらかというと恋愛を怖がっているようなニュアンス、 そうですね、自分自身でもこの「ジュースを零さないように」の意味はよく分かっていない(浮かんできてしっくりきたから使ってみた)のですが、何かを普段言語化できていない自分の中のバランスというか、それを保つために必要な何かというか、違和感なく生きているんだけど、少しどこかで何かがおかしいとかそういう感覚なんじゃないかと思います。 そして、「若い警官」については、みなさんのコメントを参考にしてわたしも考えています。 熊倉さんやAOIさんの仰るとおり、全然警官っぽくないですよね。 スマホをポチポチしてるし、報告もしないし、綺麗なスニーカー履いているし。 周りを少し歩いて感想を言ってるだけで大して仕事してないし。 そこらへんがポイントなんだろうなと思っています。
0瓶の内側で止めた世界に穏やかに横たわる白い肌からにじむ質量のない光を浴びながら初めてこの星からほんの少しずつ液体が毀れていく音を聞いている 巧妙なLEGOが積み上げられた都心の衒いのない公園のなにもない芝生 褪せた落葉から半身を晒したそのからだは何も身につけていない様子で胸の上に組まれてほんのり赤味の差した細い腕は生命の反応がみられない 葬儀の支度を確かめるようにおろしたてのスニーカーで周囲を静かに歩いているうちにその、若い、多分警官はボディークリームの容器を発見するとノズルから溢れたクリームは点々とそのからだに向かって眠るように円弧を描いている 状況から見てこの人工的に凝縮された液体は何者かによって満遍なくそのからだに塗られたのちに容器のみが遺棄された可能性が高い エレミヤ17:9 若い警官は考えている 星団は予定調和を伝っていく 彼は存在意義をそれが何故なのかを考えている 11月11日、犯人は非常に高い技術を持った者と見られるとスマホにメモをしている 落葉の色合いや質感との対比で艶やかに湿った光を放つそのからだはたおやかな白磁の陶器のようで彼は手袋をとってその肌に触れてみたいと思いそして叶うなら静かに抱きしめている自分を想像している 若い警官は徐々に傾きを変える未明の陽光に目を細める、実は彼にはそれが男なのか女なのかもわかっていない、生きているのか死んでいるのかもわからない、いったいこれまで何を学んできたというのか、彼は自分の経験不足に思い当たる、この感覚は何処かで巡り合っている、今朝の歯磨きの時かもしれない スニーカーが枯葉を踏む音が耳元に届く 心が止まってからというもの部屋のインターホンを聞いていないことに突然思い当たる、そして彼はこどもの頃に自分の容姿がひどく嫌いだったことを思い出すが、どうやってその醜さに折り合いをつけることができるようになったのかを考えている ビルの間に広がる空を見上げると湿度のない空気がこれまで誰かの遠くを漂ってきただけだったことを寒気のように感じる でも自分にとってはそれが自分にできる仕事だったのだ、自分は自分なりに精一杯やってきたのだと若い警官は思う 彼はニット帽を脱ぐと長く伸びた髪をかきあげ深呼吸をしてその美しいからだの隣へゆっくりと自分を横たえる 頭の後ろで落葉が砕けて粉になる音を聞く いつまでも青くならない空の向こうで弱い星の質量がひとつ消える 「もうこれ以上、何も毀れないように」 彼は消えた星に向かって約束するように呟く とても小さな声で
1吸収さん、なるほどと思いました。 若い警官に違和感があったと仰っていたので、そこを変えるかと思ったのですが、むしろ若い警官に定規の端を当ててトーンセッティングを変えたような。 緊張感のあるハードボイルドな作品だと思いました。 言葉をあまり変えなくても、ここまで違う作品になるんですね。 特に、わたしはあまり不穏な言葉は使えない(でてこない)ので、 ジュース→液体が毀れていく というのはおもしろいと思いました。作品がぐっと鋭角になります。 >エレミヤ17:9 畏れ入ります…修行します。 あと、正直に言ってこの作品は(インフルで頭がもうろうとしていたこともあって)改行はかなり適当にやってしまったのですが、その点に改めて気づかされました… わたしも現在、絶賛書き直し中です。かなり違う感じの作品になってきていますが、いつかアップします。ありがとうございました! こういうの楽しいですね。 みなさんの遠慮のない投稿、ご意見も含めて、このサイトに投稿していてよかったと思います。
1類さん、作品は読ませていただいていますが、コメントいただくのは初めてのような気がします。ありがとうございます。 私の作品よりも素敵な言葉でほめていただきありがとうございます笑 しっかり読んでいただけてうれしいです。コメントが勉強になります。 >文脈を流れる無意味さが、私の認識と理解の枠から食み出して、私の認識と理解を丸ごと包み込むようです。雰囲気的な作品ですが、巧妙な描写による重厚な構造が快楽に結びつきました。 そうなんですよね、自分で書いておいてあれなのですが、無意味なんですよね。ものを書いていると意味を置いてしまいがちですが、意識していたかは微妙ですが結果的に無意味なところは全体的なトーンを作っているんだと思います。警官とか何をしているんだか全然わかりませんし。 >情報があまりに少ない正体不明の曖昧な存在として映ります。ただひとつ分かるのは、それが人間らしき何かだということだけであり、まるでブラックボックスのような存在です。 >結局は彼が何者であったかは明確に示されてはいません。それでも、こうして抽象的な存在と具象的な存在が隣り合わせに横たわるという構図。 これはバッチリ狙ったわけではないもののどこかで制御して書いていたと思います。「からだ」の方はとにかく美しいということ以上のことは書かないこと、「若い警官」の方もあまり書かないようにすること、それによってわかりずらいものにもなりますが、そのわかりずらさ自体がおそらくそのときのわたしだったのだろうと思います。 >ジュースを零さないように、という言葉からは、グラスの内側に収まったこの世界の際どいバランスが壊れ、裂け目から何か大切なものが零れ落ちる危うさへの警鐘を感じさせます。 仰るとおり、大切な何かなんだと思います。ただジュースみたいに身近で注目もされず、当たり前に扱っている。実はずっと零れつづけ、失い続けていて、いつかは大変なことになる。でも誰も普段はそんなことを気にしていない何かだと思っています。 読んでいただきありがとうございました。
1熊倉さん、ありがとうございます。 わたしよりも熊倉さんの方が作品を理解されているんじゃないかと本気で毎回思っています。 わたしは感覚で書いているので、暗喩とか象徴とか考えているわけではない(自分の感覚にフィットする表現を探っているだけ)のですが、熊倉さんはそれをいったん「読み」というレベルに落とし込んで表現する能力がすごいです。 この作品について、みなさんの指摘のとおり自分でもよくわからなかったのですが、熊倉さんのコメントを読んで納得するところが多かったです。 例えば、 >冒頭にも重ねて思うのは、人生の選択は時に、「巧妙なレゴブロック」が積まれるように残酷で、自分の意志と思っていたものが、本当は外圧により産み出されている時がありますよね。その弊害を、この警官は被っている気がしました。 そのですよね、そのわかりやすいイメージが「若い警官」だったのですが、多かれ少なかれ、この世に生きる人すべてに当てはまるのではないかと思っています。カズオ・イシグロの小説みたいに。…と書いていてカズオ・イシグロに自分のことをすごい探偵だと思っている話があったなと思い出しました。そこらへんの影響もあるのかもしれません。「わたしたちが孤児だったころ」だっけな。 >半身を落葉からさらす人に、まず事件を見出だす。職業病でしょうか。 職業病ですね、完全に。その割に慌ててないのがナゾです。 >しかし、 警官になりきれていないようにも描かれる彼は、スマホにメモしたり(事件性があるなら無線で上司に連絡とかですよね)、スニーカーやニット帽でなんだかカジュアル(調べると、警官専用のものはありますが、少なくとも詩の中の警官は厳かな感じではない)。 気づいていただいてありがとうございます。ここは意識的に書きました。本人は警官ぶっているけど(実際警官なんだけど)やってることは全然警官っぽくない。全然仕事してない笑 自分のスマホにメモしちゃだめですよね、早く無線使って報告しないと。でも、わたしのリアルな感覚だと報告よりスマホにメモしちゃうんだと思います、このひとは。 >グラスと違って、人間は倒れてみた方が、ジュースが零れないことだってある。 ここは熊倉さんのコメントを読んで本当にそうだなって思いました。 きっと生きている中ではずっとジュースは零れ続けていくし、警官はこの「からだ」との遭遇でそのことに気づいてしまった。ただ、できることがあるとすれば「できるだけジュースを零さないように」生きていくかどうかってことな気がします。傾きや速度を調整すること。知らないふりをして、いつか手遅れになってしまわないように。 わたし自身の気づきになるコメントありがとうございました! あとで熊倉さんの概観にもコメントしに行きます。
1エイクピアさん、ありがとうございます。 > 感覚が鋭くなっていると言うよりは全てが回顧的になっている事情への抵抗なのかもしれません。 確かに、心のどこかにそういう気持ちがあるのかもしれません。そういう意味では小さい声、つぶやきみたいな作品なのかも知れないと思いました。
0ヨーロッパの文学を翻訳したら、こんな文章になるのではないかなと勝手ながら思いました。 段落が変わるとカメラの視点が違う所から見える感じもしました。 内容を咀嚼するのに、ゆっくりと時間をかけていく感じで読んだのですがその緩やかな時間の流れが血流のようで気持ち良かったです。
1ミステリー詩ですか?
1ありがとうございます。そういうものが存在するかはなぞですが、そんな感じです。
0物語として頭の中で展開し楽しませてくれる、なんて素敵な詩なんだろうと思いました。
1きょこちさん、コメントありがとうございます。 外国文学は好きなので、地の文を書くとその影響が出てくるのかも知れません。 気持ちよく読んでいただいてうれしいです。ありがとうございます。
1秋乃夕陽さん、コメントありがとうございます。 わかりづらい作品だと思いますが、そういっていただけるとうれしいです!
1私は詩について心で詠むべきと思っています。 頭で考えるよりも直接感性に訴えかけるような言葉なら、たとえ理解しづらいとされる詩だとしても素晴らしい詩だと信じています。
1「オレンジジュース」でリライトしました。
0タイトルの「バランス」は内と外のバランスであろうかと思いました。特に最後の行の心と世界の均衡。最初の頃の行の、零れて行くジュース、ノズルから漏れたクリーム。警察官、死体?、推理など。スリリングな展開が含まれていると思うのですが、内と外との緊張と言うよりはむしろ、それら正反対の物を包み込む、推理する主体、自我、理性が超越論的に緊張感を演出しているような。任意性の高さが却って緊張感を醸し出しているような。勿論、職務上どうしてもやらなくちゃいけない領域の事はこの場合捨象して、この詩を考えてみました。
1エイクピアさん、そのような読み方をしていただいてありがとうございます。おっしゃるとおり、職務とかなんとかっいうのはバランスを描く材料なんだと思います。はっきりとは言えませんが、普段は気が付いていないけど、本当は大切なんじゃないかと思う、しかもその人にしか気がつかない均衡があるんじゃないかと思って書きました。
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