そうして、
窓に叩きつける夕立ちを眺めていると
心のいちばん深いところで
理解できる
君は何ひとつ
本当のことなど言わなかったと……
ベランダに迷い込んだ
茶色い蛙を
田んぼに逃がした
そうして、傘から伸ばした右腕を
激しい雨に打たれるがままにしていると
今すぐ裸でこの田んぼに
飛び込んでしまいたくなる
整然と並ぶ
刈り取られたあとの稲株
そこから生えているひこばえに
全身を擦りつけたい、
蛙を触った手を洗い
急いで取り込んだ洗濯物を畳みながら
すこし濡れた袖を、許してゆく
そうして、
窓に叩きつける夕立ちを聴いていると
心のいちばん深いところで
理解できる
君の言ったことはすべて
君の心の、本当の言葉だったと……
作品データ
コメント数 : 18
P V 数 : 1860.6
お気に入り数: 1
投票数 : 5
ポイント数 : 0
作成日時 2024-10-04
コメント日時 2024-10-27
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/12/27現在) | 投稿後10日間 |
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可読性 | 0 | 0 |
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技巧 | 0 | 0 |
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閲覧指数:1860.6
2024/12/27 02時48分52秒現在
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初連(第一連)と最終連(第五連)のコントラスト、対照で読めると思いました。「本当のこと」「本当の言葉」。田んぼに逃がされた蛙が象徴的で、間をつないでいるように見えました。
0「この一行が素晴らしい」というような詩句はぜんぜん含まれていないけれど、素直に素敵な作品。 まーそのうち目ん玉飛び出るような傑作を書いてくるでしょうね。
0情景が不思議と鮮明に思い浮かぶ、そんな良い詩でした!
1この詩は、夕立ちを通じて内面の感情を深く掘り下げる印象的な作品ですね。雨の描写がとても生々しく、心の動きと結びついています。特に、「君は何ひとつ本当のことなど言わなかった」とのフレーズが、相手への信頼の喪失や虚無感を強調しています。 蛙を田んぼに逃がす行為や、雨に打たれる感覚は、自由や解放を求める願望の表れとして捉えられます。特に「全身を擦りつけたい」という表現が、自然と一体になりたいという強い欲求を感じさせますね。 また、最後の部分で「君の言ったことはすべて君の心の、本当の言葉だった」と繰り返されることで、心の奥深くでの理解が徐々に明らかになっていく様子が印象的です。この詩全体に流れる切なさと、自己受容のプロセスが見事に描かれていると思います。
0三連目で激しい衝動に襲われ、四連目から終連にかけて段々とクールダウンしてゆく様がみて取れる。 それは「君」が言った言葉についての理解であり、諦めでもあろう。 美しい情景と共に時間経過のなかで作中の人物の心の変化がみて取れる作品だと思いました。
0~そこから生えている蘖(ひこばえ)に全身を擦りつけたい。ああ、そうかもやしとも読めるんだ。だいたいひこばえなんてこの歳になってはじめて読んだよ。まだお若いはずなのに学識がある方だなあ。とか思った。この蘖(ひこばえ)の使用がいいですね。おじさんおばさんにはグッと近づけるでしょう。まだお若い書き手だとおもえばこの情緒豊かで素直な文章は好印象ですね。 でも最後の一行だけは余分に思えました。書き足すならば空を見上げるとか自然を比喩させたほうが余韻は残るような気もします。私ならばです。
0訂正。余分というよりも書き方の問題ですね。きみの(心)と(本当)の(言葉)だったというのが重なり合うと、読み手には却って押し感も増してきてよけいに力んだ印象が残ってしまう。ということかな。そうですね。要らないということはない。この辺り私の解釈は雑に通り過ごしていましたね。申し訳ない。
0「そこから生えているひこばえに 全身を擦りつけたい、」 の表現で、わっ、良い。と感じました。 初めと最後の抽象的な部分は、「心のいちばん深いところで理解する」ってどんな感覚を作者さんは言っているのだろうと思ったり、「君」「本当の言葉」といった表現に対して(私の読解が下手なことが原因なのだとは思いますが)あまりイメージや感情が湧きませんでした。
0葛藤と受容が描かれています。お上手です。
0雨が降った夏の夕べを思い浮かべました。何だか昭和初期の田舎のような雰囲気が感じられました(*´ω`*)
0葛藤と受容、あるいは認識の変化です。ありがとうございました。
1かなり田舎に住んでいるので、そう感じられたかもしれません笑
1まさに。ありがとうございました。
1次の作品も楽しみにしています。
0静かなのに情念爆発してて好きです。
0情念は人生のテーマかもしれません。
0夕立ちが、「君」の発言とリンクする詩です。 第一連は、「君」の言ったことが夕立ちのようで、受けつけなかったのでしょう、仕切られた窓の中から眺めるだけです。ただ、ベランダに迷い込んだ茶色い蛙(=疑念?のようなものでしょうか)を機に、「君」の言葉を考えるために外に出る。 そうして「君」のあの激しい言葉に、右腕だけで触れてみると、えもいわれぬ衝動が湧く。この第三連で、「君」の言ったことが分かったのだろうなと。第四連、手を洗う、洗濯物を畳む、濡れた袖を許す(ここが面白いですね、乾かすではなく)、特に三つ目の動詞で、自分の取った言動や思考を反省するような、自分の気持ちを畳んで整理している、ということが伝わってきます。 その上で、最終連の締めにつながっていきますが、「そうして、」という言葉もよく効いているなと。要は、「君」の言葉がずっと引きずっていたわけで、この夕立ちの一件でやっとモヤモヤが晴れたような気がするわけです。 「夕立ち」は夏の雨ですが、詩のタイトルには「九月」とあり、秋に差し掛かっていると思います。「君」の言葉に少し遅れて気づいてしまったのだなと、最後の「……」沈黙も、切なさの色が巧くついていると感じました。 とても良い詩でした
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