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イエロー・ウォーター
17歳の夏に家出をして初めて東京に来た 降り立った駅は中野で宿の当ても無かった 夕方になる頃には夜の街の匂いが鼻を掠め アーケードは人の頭が忙しなく動き始める 通りの裏手に蜘蛛の巣みたいな路地があり 眠たそうなあるいは憂鬱な顔をした人達が 裏口の非常階段から建物の中へ入って行く 彼らは水商売をナリワイにしている連中で ごった返している客層は中央線沿いの人々 0時までのしばしの逸楽と言ったところか 憂さ晴らしに余念がない感じで歩いている 青少年の眼にはイメージの光暈が起こって 今まで生きてきた中で一番いい景色だった あそこが僕の本当の故郷のような気がする 線路沿いアパート最上階の物置に忍び込み とりあえずそこで一夜を過ごすことにした そこは恐ろしく汚い所で捨てられたモノが 再び使用されるのを何時とは無く待ってる 錆びたオーブンやらバス・アイテムやらを 電灯が点滅しながらそれらを照らしていて 小市民的幸福の痕跡みたいなものを燻らせ 僕はと言えば殆ど精神的ホームレスになり ただこの孤独が心地よかったのを覚えてる それまでずっと胸を煩わせていた心の闇を とりのぞいてくれるのはこの孤独だけだと 夜の東京の高層ビルの景色のその美しい姿 目の前に現れて僕は自分の実体を実感した トーキョーの人はどんなふうに眺めてるの もう一週間くらい誰ともしゃべってなくて 泣いてばかりの日々のことだけ思い出して 雨風がしのげる場所を求めて練り歩いてた とにかく壁と屋根のある空間を探しまわり 道の途中で見つけた「たかはら公園」とか 内部がむき出しになった一棟の架空建造物 ホームレス生活で昼夜が逆転してしまって 夕日は朝日に朝日は夕日に感じられたっけ ある晴れた日に眼が覚めて風が気持ちよく なんとなく死から蘇ったような気分だった 西新宿あたりの公園のベンチで寝てたのだ 草木が生えっぱなしのこ汚ねぇ庭の景色と 顔を上げると都庁の立派の姿が眼に入った それから眼を下ろすと都会に取り残された 狭い公園で寝ている惨めな自分の姿があり 僕は掟でそこから出ないように感じていた
イエロー・ウォーター ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1744.6
お気に入り数: 0
投票数 : 5
ポイント数 : 0
作成日時 2024-09-07
コメント日時 2024-09-14
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
整然と揃えられた文章と、その丁寧さとは真逆なほどの混沌と穢れ(まあ文中で『こ汚ねえ』という言葉が出てくるくらいだし。……『小汚ない』というのにしなかったのには、何かの意図があるんだろうか) あと、句読点がないのも計算された乱暴さの一つなんだろうか。 ……余談だけど、ビーレビの詩は作者たちが実際に経験したことを基に書いてるんだなというのが多いような気がする。この作品もおまるたろうさんの実際の経験だろうし。 「創作」という言葉もこのサイトではPixivと違って目にすることが少ない。「創っている」という感覚の人も少ないようにみえる。 そういうのを踏まえると、色々と興味深いなあって。
0とりあえず1票しました、、
0家出して、17歳で東京でホームレス体験。 貧乏で寄るべない人間が、一度は試みようとすることかも知れない。 語は、19字で一行ずつ揃え、その並べて読んだ時のリズムと、物語がしっかり出来ていることの上手さ。 決して、過度に美化しようとしない意志を感じる言葉の乱暴さと、其れでも美しく感じるところにリアリズム表現へのこだわりを感じました。
0イエローウォーター考えたこともなかったです。なんか葉っぱの裏に隠れているような作品に感じました。めくちゃうぞ。いやめくれてるのか。
0不登校の自分を書く僕と、「狭い公園で寝ている惨めな自分」を書くあなたと、何が違うんだろうと思いました。
1経験。そして経験によって裏打ちされたことばの重み。この作品は紛れもなく単にことばを想いを伝える為の手段として使っている。たぶん、殆どのネット詩人がことばに寄りかかりすぎて【人の想い】をないがしろにしている。マジで「いかにことばを上手に使うか」しか考えていない。そんなことばの遊びに付き合っていられないから、誰も【詩人】なんか相手にしなくなる。きっと売れないミュージシャンが歌うド下手な歌詞の方が胸にジーンと来るというものだ。たぶん、おまるたろうさんは書けと言われれば黄色い場所でテングになってるオバサンなんかよりもずっと上手な詩が書けると思う。そーゆーのを投稿しないのは、詩の上手下手なんかには価値がないからだ。それとおまるたろうさんとのコメントのやり取りで感じたのは相当な読書家ということだ。この作品でも、死の刺やリツ子その愛とかを読んだこともない無教養な詩人には文体の辿々しさによって伝わる作者の呼吸とかは読めまい。まあ、テングでいたいからコメントでも会話に参加しないし、高い場所からしか見下ろせないのだろうけど、文学って、気取るモンじゃなくて泥にまみれることなんだぜ。──って、言ったところで、ムダだろうけど、、
0ビジュアル面が面白いと感じました。 「東京の高層ビル」を表現するため、あえて細長い形にしたのかなと勝手に思ったりもしました。
0ノンフィクションとも捉えられそうな文章で、一気に引き込まれて読み進められました。 東京のダークサイドを描いた素描のような作品ですね。
0おまるたろうさんのこういう作品を見て読んだの初めてな気がします(昔まで遡って読んでるわけではありませんが)。じんわり沁みてくるものがあってよかったです。何気なく書いているようでしっかり考えられているのが伝わってきます。
0東京への憧れ、開放感、孤独と色んな感情が織り混ざって物語を彩っていますね。 "青少年の眼にはイメージの光暈が起こって 今まで生きてきた中で一番いい景色だった あそこが僕の本当の故郷のような気がする" ↑ここめっちゃ共感します!
0しっかりと書き表しているところを見るに、話者は迷いつつ芯を持ち、けれど掟と称して自分をこの場に強いているよう〆る。だが語ることによりさらに心地よい孤独に浸っている。 共感を誘いつつ詩としてのポイントを押さえ、作者自身とも思わせるように書かれている。(真実はどうでもいいですが。ホント曲者だなあ)
0作品を読ませて頂くと、割と自分を卑下されるような気持ちが根底にあるかなと思っていて、しかし隙あらば短剣で強者の心臓を一突きにしてやるぞ、みたいな視線も気になっていて、いつかそういった気持ちや毒牙が抜け落ちたバイタリティの作品が読んでみたいなと感じました。
0田村さん、コメントありがとうございます。 伝統への回帰(/帰順)という方向と、即物的に現実認識を書いていくという方向とがあって、わたしはどちらかというと後者の立場なのだろうと思います。田村さんはむろん前者になると思うのですけれど。今回はその立場の違いみたいなのが、田村さんからみて意外性に映ったということなのではないかなと思います。それに、あまり意識はしていませんが、自分の中にポピュリズムみたいな部分はかなりあるのかもしれません(澤あづささんもわたしを指してそう仰っていた記憶があります)まあ、たしかに「自分は○○派だ」という言い方は、わたしはしませんね。しいていえば、単純に、この世界をわかりたいと思っているだけの人間です。流派には還元できないでしょう。今回のは、絵でいうと、色も使わずに、鉛筆だけで描いたような作品です。約10分で書きました。今読み返すと「あちゃー」と思うところもないわけではないです。しかしそれがいいのかもしれない。ちょっとよくわからないコメントになっちゃいましたね。すみません。
0atsuchan69さん、コメントありがとうございます。 atsuchan69さんと同じ想いです。まず、詩にできることと、詩にできないことがあって、圧倒的に、詩にできないことの方に興味があります。あまり大きな声ではいえないことですが、詩にできること・できそうなことなら、たとえそれが上手に詠ったものだとしても、たいして興味を持てないというのが、わたしの前衛根性なのだろうと思います。わたしの作品がコロコロ変わるのは、掴んできた詩になりそうな種みたいなものが、同じやり口ではまったく処理できないからです。だからその時その時に処理の方法を開発するしかない。ゆえに、そのプロセスで過酷な自己否定を行う必要がある。たびたびカスみたいな作品を出すことがあるのは、開発中の途中経過の報告みたいなニュアンスです。わたしはわたしの書いたものが嫌いになった時に、ようやく自己満足します。
0万太郎さん、コメントありがとうございます。 じつは?バックボーンはわりと万ちゃん寄りなワタクシであります(まあ前科はありませんが...その点、万ちゃんは凄い...)10代はずっと丸坊主、厨房でお玉杓子でぶん殴られながら社会勉強しました。血に酔ったようなことも何度もありますね。...それはさておき、文章表現は難しいですね。綺麗な言葉だけ並べただけでは、よい作品にはならない。狂気も成長します。だけどそのためには、知的な訓練をしなければならない。パンクというのも(よく見ると)インテリがやってますよね。パンクを継続するのは、凄まじく知的なことです。わたしは一体、何を言っているのでしょうか...
1よんじゅうさん、コメントありがとうございます。 >なんか葉っぱの裏に隠れているような作品に感じました マジで、そういう気持ち、大事ですよね。照れが必要。よんじゅう美学。昔、英会話スクールに1年ほど通ったことがあって、そのときに外人の先生に「シャイボーイ」というあだ名で呼ばれてたくらいですから。プロファイリング合ってると思います。
0九十九空間さん、コメントありがとうございます。 なぜBレビの多くの人が、まだ投稿間もないあなたに味方しようとするのか?...それがいかに文学の本質と無関係か...煎じ詰めると、そういう話になるかと思いますね。九十九空間さんはこの黄色い場所では「常識人」なのですよ。そして、わたしは、もっと普遍的な意味論理や倫理を重んじる人間なのですね。 違いを述べるとすると、そういうことかなと思います。
0紅井ケイさん、コメントありがとうございます。 たしかに。ニョキってビルが生えてるような形になってますね。でもぜんぜん意識してなかったですね。たまにこういう文章を書きたくなって、衝動的にfacebookにブチこんだりしてます(全然イイネつきません...)
0きょこちさん、コメントありがとうございます。 実家になにもかも置いていき過ぎた裏アカ坊主ですね。ふりかえると、インフォ・プアーの典型みたいなのでした。就職するまでの4、5年は人界の底で漂流してましたけど、あぶなかった。今だったら、闇バイトに手を出して沼ったりしてたかもです。合言葉は「お前ら”成功”したくないんか?」アイドルは与沢翼。同世代の英雄は某メンタリストとダルビッシュ有...。 あんまり関係ない話かもですが、ちょっとまえに友達の友達の女の子と飲んでて、その子は10代でアダルト業界で働いて大金を稼いだ後、全身整形でフルカスタムし、一般職に就職して、同僚の男と結婚した、とのことでした。「高校鉄拳伝タフ」でも読んでるんかな?と思ったとです。
0佐々木春さん、コメントありがとうございます。 佐々木さんにそう仰ってもらったのであれば、今回は賭けに勝ったのかもしれません。ギリギリのラインをいきたいのですね。負けの方が多いですが笑
0田代ひなのさん、コメントありがとうございます。 田代さんにも共感いただけたことは、わたしとしてもうれしいです。とりあげていただいたところは「んーどうかな」と思いつつ、変な気分で書いた部分だったので、すんなりとっていただけているのであれば、それだけで、うまくいったような気がしてきます。
1A・O・Iさん、コメントありがとうございます。 「くせ者」っていわれると巨人の元木の顔しか思い浮かびません(←世代) 社会的な詩というか、なんかそういう腹黒い心算があるようなところが、ですかね。なんというか、、うーん、 最果タ●みたいなのが一番くせ者だと思うんすけどねー。どうっすかね?わたしはあえて反時代的なものを書いてる文筆家なんですよ。自分ではそう思って、いつもものを書いてる。
11.5Aさん、コメントありがとうございます。 わたしは誤解されているようです。鷹枕なんかは、わたしのことを「ナチ」と連呼している。誤解、全て誤解です。これはべつに1.5Aさんが悪いというのではなく、ネット詩読みの心理(学)主義みたいなのがわたしはよくわからない。心理学なんて下らないじゃないですか。なんかそういうのって、万能感があるんですよ。
1技術的に凄いことやってるのは分かるけど中身すっからかんって感じ。
0完備さん、コメントありがとうございます。 文学から技術を抜きさったら、一体どれほどのものが残るというのですかね。「中身」=人間なんてものはノイズですよ。
0まあ私はおまるが言うような「文学」に興味はないのかもね、究極的なところでは人間にしか興味がない。ただ「文学という技術」を通して人間を「魅せる」というのに興味があるって感じかなあ。というのが前提で、この作品に出てくる人間の誰一人にも魅力を感じなかった。から上の感想になった。
0完備さんは屈指の技術派だと思っていましたが。(例の「わ」も完備さんの作品だとばかり思っていました。まさかAI研究所の作品とかのオチじゃないですよね...) なんとなく、そうおっしゃると言うことは、根幹に何か「思想」はあるのかもしれませんね。わかりませんが。 詩の奥にある人間が好きになるという嗜好の方向性と、ネット詩投稿板というアーキテクトの特殊性が組み合わさると、必然的に「V豚」的な何かになってしまいかねない。 それがサイト全体を牽引するなら、それはそれで良いとは思いますけど、わたしはそういう作品を書くのも、付和雷同するのも、まっぴら御免なんですよ。どうせ残る作品じゃないから。
0誤解がある気がするけど、私が興味があるのは詩の奥にいる人間ではなくて、詩の中にいる人間。私は九十九君の作品をとても高く評価しているけれど(全員彼の個人誌解がある気がするけど、私が興味があるのは詩の奥にいる人間ではなくて、詩の中にいる人間たち(いわゆる作中主体やその他のキャラクターたち)。 私は九十九君の作品をとても高く評価しているし詩作の力においては私もおまるも彼の足元にも及んでないと思うけど(おまるも結構良い作品書くけどね)(それはそうと全員彼の個人詩誌をダウンロードした方が良いhttps://note.com/99_spaces_new/n/n9ddbd20b2f93)、それは本当の作者が全裸中年男性だったとしても変わらんよ。
0↑なんか編集ミスったな。ごめん
0ありがとうございます。PDF読んでみますね。 九十九空間の評価は(もしも全裸中年男性だとしても)わたしも低くないですよ。完備さんほど買ってはないかもしれないですが。もし14歳なのだとしたら行くところまで行くかもしれないなと思いますね。14歳にしてはエッジが効いてない気がするが。 ですが現時点では、完備さんが九十九空間の詩の中にいる紅顔の美少年キャラに萌えてる部分があることは、否定できないでしょう。わたしは男なんで、そういう萌え要素が零パーっだということをご想像頂きたいのです。
0「まだ眠っているきみへ/九十九空間」←非常に優れた詩です。
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