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居場所がないのでベランダで寝る
彼はコンクリートの柩に住んでいる。散歩中の白犬が紅蓮の色にそまる夏の夕暮れ、万物の影が黒ぐろと交差点へ伸びるころ、彼は柩704から空気の平明な外界へ出ていく。怪物が羽を広げたような空の下には陽のなごりの金色が塵のように跳ねて、広がる他家の墓はきっちりと方形に静まりかえっている。彼はベランダのサマーチェアーに横になる。暴走族、酔っ払いの哀しき歌声、熱い麺汁を啜る人の吐息、サイレンの音、傷つき死にゆく者のかすかな物音もここでは一幕の舞台にすぎない。降る星々のもと百の水鏡がゆれる天の川の流れを切り、ゆるりと寝台の舟はゆく。夜よやさしくあれ。そう願うと夜はやさしく鎮まる。夢が降り積もったものが夜ならば夜は色彩ではなく歌である。歌が夜ならもう詩はいならないとつぶやいて、つぶやいたことも知らず夜を抱きしめたまま朝がくることも忘れて彼は眠っている。
居場所がないのでベランダで寝る ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 849.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2024-07-12
コメント日時 2024-07-13
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
あれはあなたが生まれるずいぶん前のことよ。 二人は屋上から大桟橋のほうを眺めていたが、突然幸恵が眼を細めて重たそうに口を開いた。 …ひょっとして…母はあのことを口に出そうとしているのかも知れない… 舞にはこころあたりがあった。ねえ、見て!もうすぐ、あの大きな客船が出航するわよ。…何処に行くのかしらね…白い客船のほうを指しながら、西日を浴びた幸恵の艶やかな頬は緩んでいた。…次の停泊地は台湾だろうね…その眩しさから眉をしかめて舞は言い放った。一つめの汽笛が、風に乗って響きわたる。少し進むと波は大きく白い泡を立てて、二つめの長音が振るえるように聞こえてきた。舞は遠い空を覆う夕陽を見つめ傍にいる母を思った。爽賴の風に乗り、埠頭から離れていく白い面影。微かな波音とともに、見送り来ていた人々の姿が消えていく。
0私の中の〝いい作品〟基準に、「心がしんと静まる、そこから自分の人生に想いを馳せることが出来る」というのがあるのですが、そんな作品でした。そういう作品にはごちゃごちゃ感想を書けません。
1部屋の中にいれば騒音も聞こえないし不自由も ないのですが、昔から淀んだ空気が嫌でいで、べ ランダでも眠れるかなと試してみました。 やはり風をともなう生の外気は格別で、しかも いつも目の上に星空がある。知らないうちに未明 までぐっすり寝てしまいました。意味もなくそれだけの ことを書いただけですので感想に困る方も多いはずです。 わたしはだいたい難しいことは書けないし書いてないのですが、 過分のお褒めにあずかり、とても嬉しいです。 お読み下さりありがとうございます。
0どうしても704と言われるとアメリの蚊の独立記念日を思い出してしまいます。「柩」と来れば独立のために働いてきた人たちを想起しました。しかしこの詩では特に国は指定されて居なくて、日本が舞台なのでしょうし、「墓」や眠っている「彼」や「歌」が登場します。そして天の川。何か星のコンステレーション(配置)の中で、天体観測ではないでしょうが、抒情が流れていると思いました。
1こんにちわ。 704はただの部屋番号ですが思わせぶりでした。 反省します。詩の初歩もわかっていないのかと忸怩たる思いです。 難しいことを考えずに考えさせずにふつうのことをふつうに書く。 そのことを一から学びます。 お読み下さりありがとうございます。
0言葉のない世界には誰もいけないのでしょう。居場所がないなんて聞きたくなかった、そんな気分です。
1おはようございます。 お読み下さりありがとうございます。
0うまいけど あくまでイメージ戦略のうまさであって、 詩のうまさなのかな?と思いましたですね。 この詩にあるのは「安心」感であって、 その狡猾な「共有」ですねぇ。 こういうものを書く人なんですねえ。 「居場所がないのでベランダで寝る」 っていうのも、 内面性を表現したキャッチコピーですし。 いろいろ、技をお持ちのようで、 いやはや、 おじょうずですね。
1お読みくださりありがとうございます。
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