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長いつき指
放尿という言葉は 体温のあたたかみをもって わたしの心を油断させる あれは 記憶のはじまりに ちかい頃 男の人が 立ったまま用を足すのを見て わたしにも できる気がした 想像していたようには上手くいかず こっぴどく叱られた あのとき わたしが持っていた 猿の手足のような柔軟性 内股をつたう温度は いつ進化したのか 入院して検査を受けた時 トイレへ行くことを制限された 看護師は慣れたようすで 寝たまま、してくださいね と言って 尿瓶をおいていった ただひとつの事に あんなにも心をしぼられたことはなかった 白くなり黒くなり 暑くなり寒くなった タオルを絞ると思いだす ジャムを開けると思いだす なおらない右手の中指のつき指 してしまったことと できなかったこととが 入らない指輪のように 時々 わたしの胸をかすめる あんずの花の色が 月に滲んで沁みだすように わたしの人間と性が 言うことを聞かずに ちょっと めくれるのかもしれない
長いつき指 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1888.8
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 24
作成日時 2017-11-23
コメント日時 2017-12-01
項目 | 全期間(2024/12/04現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 5 | 5 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 10 | 10 |
エンタメ | 5 | 5 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 2 | 2 |
総合ポイント | 24 | 24 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 5 | 5 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 10 | 10 |
エンタメ | 5 | 5 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 2 | 2 |
総合 | 24 | 24 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
1つ1つの出来事が丁寧に描かれているのがすごいなと思いました。私はこういった表現を率直に書けないタイプなので…。
0佐久間直子さま はじめまして。 お読みいただき、コメントをありがとうございます。 ふと、思い出した事が胸で燻り始めると、詩にするまで悶々としてしまう性格なのです。苦笑 丁寧と言っていただき、ありがとうございます。
0なんだか、とても、とてもすごいと思いました! うまく書けないんですけれども。 放尿という、普通にあって普通に書かないものを目にとめられるのが。 小さい時の記憶と、現在のありようと、最後の「あんずの花」が甘いパンチがきいて、ほぉ~!! っとなりました。
0寝たままする、ということの、禁忌を犯すような心の動揺が、幼い頃からの罪悪感をもよみがえらせるさまが、にんげんへのなつかしさのように書かれていて、とても素敵です。前のお作もそうでしたが、跳躍とか飛躍でなく静かに次の連にいざなわれていくのに、詩でなくてはならない何かが深く息づいていると感じます。
0田中修子さま お読みいただきコメントをありがとうございます。 ほんの日常の些細な断片に触れていただき感謝です。 今となっては、入院中のあれこれの中でもそんな事が思い出されたりするものですね。
0fiorinaさま お読みいただきコメントをありがとうございます。 母が脳梗塞で倒れた直後も、同じようなことを言って周りを困らせておりました。 ある意味、女性特有の壁のようなものかもしれませんね。 前作もお読みくださり、ありがとうございます。
0こんばんは。 素朴な何気ないご表現の中に、ふと、はっと立ち止まって考えさせられるフレーズが 置かれていて、何かとても独特で不思議な感性で書かれた詩だと思いました。 たぶん、人生での普段は気にかけないちょっとした出来事が、何かのきっかけで、 過去と現在の自分自身の立ち位置の違いを認識するものになったり、 あるいは現在とこれからの自分を見つめる力になることがありますよね。 そんな、ちょっとした大切な回想をきっかけとして、自分自身を見つめ直すことがある、 そのようなことを、ご表現された詩だと感じたんですけどね。
0森田拓也さま お読みいただき、コメントをありがとうございます。 ほんとうに些細な出来事が、ふと思い出されてざわめきが離れないことがございますね。 特に子どもの頃は、見境なく自由奔放でした。 少しでも「表現」になっていれば、嬉しく思います。
0今年の8月に私の父が他界しました。末期がんでした。その父が、最後の数週間まで紙おむつを着用するのを拒んでいました。体力的にふらふらになりながらも、自力で尊厳を保とうとする姿は、しまいには、もういいよと言いたくなるくらいでしたが、その言葉も私は言えず。治療のためには、恥ずかしいことではないのに。そのことを思い出しました。
0深尾貞一郎さま お読みいただき、コメントをありがとうございます。 お父様のこと、お悔やみ申し上げます。 わたしたちは、しなければならないこと、と、できないこと、の間でいつも揺れ動いていますね。 このような事を詩としてよいのか苦渋いたしましたが、自らを晒すひとつとして、したためました。
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