資本崇拝
いつはりの御子いつはりの聖母より滴せる卵黄の涙を享くるも
敗れて円錐をなせる鉄釘の群像未来なき懐古に暮るるのみ 観測塔
燐寸箱・麗しき放火魔の襯衣・燃ゆる落雹・ナザレの官吏
腐敗政府群衆腐敗ひとといふ暴力の容にてやぶられたるままの公報紙
困窮に価せる花序の名などなく香水壜底に沈みたる蟻の足にも
花束に白き翳その黒き照明 秋霜まで未だしばらくをふるへあれ
罪滅ぼしに能ふ慈善独裁家にのみ猶予をあがなへる牧夫、その牧羊へ
資本崇拝 乏しきひとへ罰の如降り漱ぐ鹹湖の塩のはなことばばかり
確実と宥め
意志は時にみづからを穢すとも狂乱と虐殺の皇太子妃へと贈る捕囚手記
愛国の主格とはたれ嫡男が組する暴動よりあらたしき断頭台
葉月薔薇師走向日葵闘争の果遂には敗れて燃すわれらが櫓を
歴史剥奪の酷夏にあてもなかりせばくくる柑橘の花そのすみわたれる白紙色
散文の鏤刻めきて綺羅為す夕べ陶酔のまま死にゆかむさこそ愚かしく
呪はしき救世軍鑓穂の渦鬩ぐとも 寒々しきシベリアへ詞華をこそ告ぐ
略奪には略奪を 日の移り変はるとも進化無き道化師とひとは問ふなり
いみじくも祖国解体に立ち会はば歴史てふ戯曲への鎮魂を
晩夏些事
遠雷と冬の砂降り已まず つねひがな水歿の町に殉ずるも
妥協を知り初めて悔し惨敗の海潮にて聴音機をたづさへきたるは 貴様ならざり
議会告発やがて詳らかとなるものは墨染の誓約書等を祀りぬ
一撃の憎しみ一滴の悲しみ正義はた悪意とはかの緘口令の街へのことづて
たれかの死を悦ぶも歎くともなし実存の死さへ蜉蝣と違はなば
口に苦き喩へ桂樹にむすぼほる白花夥多しずやかにゆるぶべし
梔子のみかまびすしきを枯庭にしらざるもののいのりてをりぬ
民族とは 緞帳へなだる葉櫻はいとけなきゆりかご 鐘の音
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 1342.8
お気に入り数: 0
投票数 : 7
ポイント数 : 6
作成日時 2022-08-09
コメント日時 2022-08-31
#縦書き
#受賞作
#受賞作
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 6 | 6 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 6 | 6 |
閲覧指数:1342.8
2024/11/21 22時54分28秒現在
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洗練された言葉の数々が詩的ですね!
1ご閲覧を賜り、允に嬉しく存じます。 無駄に書き慣れているのみの、小手先の技術ばかりでございまして。 詩情、うたごころは皆無であるとも存じます。
1あのさ、名前はなんて読むの?覚えておいて損はないじゃん?
0文語調、荘重調。国家の解体的な夢は、吉本的には幻想なのかもしれませんが、夢想は花を持つと思いました。それこそちょっと前の時代の、議会停会(戦争前や戦争中)、ベルリン空輸(これは戦後か)すら思い浮かび、果ては日本の皇室制度への軽いジャブ。キリスト教から始まって、資本崇拝の展開は、マックスウェーバーやその著作、「確実と宥め」では国家ではなくて、酷夏。暗殺事件を契機に、無秩序状態が招来したともとれそうです。「晩夏些事」は鎮魂、哀悼の変形であろうか、非常事態宣言的なものが、コロナ以外の文脈で出て居る様な。
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