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二重線
最初は二つに見えたのが 本当は一つだったというような そんな淡く仄暗い 謎の大きな生活をしている みんなが同じものを見ているというのは幻想なのかどうか 僕がつかみたいのはこのことなのだ 僕と一緒に帰る人はいない 僕は別に一人が好きなわけではない でもみんなは向かいのホームにいる 自分を売る術を心得ている奴ら 群れる彼らは何かを求めているわけではないのだろう だから彼らは道を見失わない 僕は何かを求めて進んでいるはずだ それでいつも結果はみんなと違うことになる 僕はしょっちゅう迷子になる 変化を恐れながら 磯に沿って行くしかないのが人間なのかな 終電に近い電車の車両の中で 僕は息を吹き返す 僕がいつも隠れる あの淡く仄暗い地帯が 見えてくる 二重線が見える 地に向かっては地平線が 海に向かっては水平線が あるがままに、なるがままに そんな心でいれば 自然にイメージが湧き そのイメージ通りの場所へ 毎日本当に行くのである 同じことを繰り返しているようで しかしいつも何か新しいことに遭遇する いつもの道の上に いつもと違ったことが起きる だから考える必要はない 同じことを繰り返すようでも いつもの道を行くことだ 空と地との間で人と人とが結びつく 人と人とが結びつき続けることは難しい 空と地が遊離している力が緩む時 空が地に下って来て もう空と地との区別がなくなってしまう時 そして海では 游弋していた艦船が 宇宙に溺れてしまう時 その時に ああまた戦略などという忌まわしいものが 柔らかな土の上に茎を出す あるがままに、なるがままにと こんな小さな国には 新聞社は一社しか要らないと言う人もいる 虚空の下には家々の屋根 ばらつき落ちる鳥の群れ ああまた言葉の臭味がする あなたから 少しは安心できる電話が欲しい 封筒を翻した時 あなたの名前があって欲しい 自分で自分の体に手術をするのはもうやめたい
二重線 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 915.1
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 0
作成日時 2022-05-27
コメント日時 2022-05-28
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
みんなが同じものを見ていると言うのは、幻想でしょうね。画家の目には世界があんな 風に見えている。最近塔本シスコの作品展に行って知った事ですが。南雲さんも きっと違った物を見ていると思っていらっしゃるでしょう。 地平線と水平線の二重線ということへの言及は、とても興味深く、意味深いと 思います。あなたからの電話で安心したいという生活には、僕は少しうらやましい 気もします。違った世界を同じに見たいという欲求を持てるということ自体 にもうらやましい気がします。
1人は誰しも、自分だけのオアシスを探し求め、飢え、砂漠を歩く。 しかしそれが自分一人だけではないことに安堵しつつ、或いはまた独りもがく。 自我という陽炎に惑わされるも、ついには皆同じ、水平線の先の幻影に似るという結論に至る。 融通無礙。空。仏教的思想の根底から、昨今のメディアの偏重的報道に苦言を呈してるかのように受け取れました。 スルメのような詩にございます。
1コメントありがとうございます。まずは黒髪さんの読解力に感服し、またよく読んでいただけたことに感謝を感じます。 人のすべてが同じようにものごとを見ていることはあり得ないことだと思いますが、一方、同じようにものごとを見ているということが部分的になければ社会は成り立たないとは思います。こういうバランスを書きたいと思って挑戦してみました。ずっと昔に試みて、できずに捨てかけになっていた原稿を取り出してなんとか一篇の作品に仕上げることができました。書きたかったのは詩なので、同じ内容を論文に直すのはできないのですが。 美術家の目は、なんというか、おもしろいものですね。どんな芸術家の目もおもしろいですね。自分とは違っているのに解することができる。他者と自分との間にある結ばれ方に私はずっと関心を持ち続けてゆくと思います。でもとりあえず今回の作で一段落つけておこうと思います。
1コメントありがとうございます。すぐれた論客の(と私は勝手に思っているのですが)室町さんをして考えさせるものがあったとのこと、とてもうれしいことです。同意であろうと反駁であろうと。これは詩なので作者の私がこの詩を論じ直すということはとても苦しいことになるかとは思いますが。とにかく感謝です。
0コメントありがとうございます。 人間の所行は目を近くして見ればおのおの異なるものでしょうけど、遠くから離れて見れば同じようなものだと思います。通常生きるということは前者に属するもので、しかもそこから脱出できないように思います。仏教のことは私は分からないですし、メディア論も覚束ないです。ただメディア論的には、うわさから始まりテレビ・新聞・雑誌へ、そして論文や書籍へと情報は固まってゆくものと思います。こういう全過程のどの段階もないがしろにできないとは思いますが、私たちは自身の中に情報の信頼度を測る技術を持つのが良いでしょうね。
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