病にて目に見えて体が弱りくれば
死がちらつくのはやむを得ぬとはいへ
それでもこれは吾のみか
生に全く執着しない吾といふ生き物の生態に
吾独りほくそ笑む
それでも吾が執着するのは
この吾といふ存在の在り方についてであり、
まだ幾分かは生きられるかもしれぬこの身の
此の世での在り方と身の処し方については
どうあっても死すまでかっと目を見開き
しっかと見届けねば此の世に心残りを残すといふものぞ。
能なしが吾といふ存在の在り方を考へたところで
高が知れてゐるとはいへ
吾の悪癖故に病床にありながら
思ふはこのみっともない吾といふ馬鹿げた存在の在所ばかり。
へっ、結局の所、
最期までこの退っ引きならぬ世界といふ面妖なるものに対して
吾は敗退に敗退を続け病に倒れしか。
それでも気が緩めば涙が頬を伝わる可愛らしげな処は
まだ吾にも残りたり。
冀ふは死のその時
吾の思索が拵へた槍で以てして
此の世界と刺し違へられれば
吾の本望といふものだ。
作品データ
コメント数 : 2
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作成日時 2022-05-24
コメント日時 2022-05-25
#現代詩
#縦書き
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2024/11/21 23時23分15秒現在
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個人的な読み方で恐縮ですが、描かれている心境に共感を覚えました。自分は世界と刺し違えて死ねたか、そのつぎの世界で新しい槍を拵えられているか自問自答しました。 作品としては人間が1つの人生のステージを生ききった、あるいは行き詰まった時の心境が斜に構えつつ正直に表現されていると思います。 世が戦国なら本当にここで終わりなのでしょう。ともあれ >>吾の思索が拵へた槍で以てして >>此の世界と刺し違へられれば どんな槍なのか、どう刺し違えるのか、そんな作品も読みたいと思いました。
0置かれた状況が今際というのは分かります。が、それまでの経緯、あるいはこの詩のその先へ誘ってくれるようなワード・ヒントがそこここ散らばっておれば尚面白いと思います。
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