よくわからないからとりあえずキスをしている

付き合って1年、お互いの面白いところを吸い尽くしてもうつまんなくなっちゃってる。君の尖った場所、私の尖った場所がお互いを貫いていた1ヵ月目はどこ？君のためなら裸でベランダに立ったあの日の過激さはどこ？今はベッドの中でも裸になりたくなくて、お互い、殆ど着たままのセックス。それでも脱がなきゃいけない衣類の量は君より私の方が多くて、それだけで本当に損した気分になる。損したっていうか奪われた気分？だからセックスのあと、私は君を少しだけ不幸にしておく。ズボンと下着の分だけ君の心を抉る。小さなため息で充分。ちょうど衣類くらいの重さの。付き合うってその繰り返し。私が損をして、損した分、君を傷つける。君は私から何かを奪って言って、その仕返しに私は君から面白いところを奪っていく。君は食器を洗わない。その仕返しに舌打ちをする。私は君に尽くす、お代は君の不幸で。君は会社がつらいんだって。私が優しくしてもしなくても君はつらいって嘆く。でも君って役立たずなんだろうなあって私は思ってる。だって本当にトロいんだから。放っておくと君は永遠に嘆き続ける。こっちだって働いてて、疲れてるってのに君は自分のが不幸だってツラで泣き続ける。だからよくわからないままとりあえずキスをしている。1年前、私のためにアナルファックを覚えてくれた君はどこいったの、まったく。アナルイキできた君はどこ？今じゃ挿入しないとイッた気のしないありきたりな男。倫理的に正しい正常位、または騎乗位、世間に安心を与えるつまらないセックス。どこにでもある彼氏彼女になっちゃって。私たち、いったいどこで可能性ってやつを落としていっちゃったの。それでこのまま？たぶん母親と父親になるのかな。まさか、ありきたりな子供まで？最低。君と私の収入でいったいどうやって子供を育てていくんだろ。もう君は乳首を捻らせてくれない、つらくなっちゃうんだってさ。でも私もフェラチオはしない、なんとなくね。明日って何も見えないままだね、わざとらしくため息ついた君に抱き着いて君は。私も少しだけ泣いたよ。だって君を抱きしめるのは私の方だったはずなのにさ。よくわからないからとりあえず君にキスしたよ。君のつまらない、健全な唾液（アルコール０，ニコチン０…、他の女０、Love100％…）。ねえあの日の私たちどこいっちゃったの。アンチ・出生主義だった私たちの憎しみだらけのキス。今じゃ君の棒が私の穴にぴったりとハマって抜けない。布団の中でなるべく丸く丸くなろうとしている、二対の白い塊。大丈夫かな、って尋ねたら君は、大丈夫だよ。と赦してくれるのかしら。何億もずっと変わらない、何も変えない集合体として私たち大人になっていくのかな。何も持っていないのに何でもそろってるみたいな顔をする家族になる？セックス気持ちいいって君は聞くけど、よくわからないから私、また、とりあえずキスをしたよ。たぶん心底どうでも良いんだと思う、君のことなんか。大丈夫、これ全部フィクションだから。

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作品データ

コメント数　： 5
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作成日時 2022-02-03
コメント日時 2022-02-03

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