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長い沈黙のあとで
呼び掛けに応じないので 私はドアを開けた 娘は長い髪を鋏で切り落としていた 私は泣きながら 彼の形見のバリカンで 娘を丸刈りにした どうして私には お父さんの死亡証明書がないの どうして私だけ 修学旅行費が免除されないの お母さんは いつも話をはぐらかすわ 何を隠しているの 私たちは言葉を失くしたのだ 娘に詰問され、 長い沈黙のあとで あの子の出生について 私が真実を話してしまったために。 何ものかに抗議したかった髪 修学旅行の出発の朝 私たちはバス乗車の集合場所まで やはり無言で歩いた 走り出したバスから窓が開き 無表情な顔が覗いた 悲しみは母娘から言葉を奪ってしまう 私たちは二度と もとの二人には戻れないだろう それでもいい あの子の母でいられるのなら
長い沈黙のあとで ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 752.9
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2021-12-16
コメント日時 2021-12-16
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
母のやむにやまれぬ事情 娘のやり場のない感情が 修学旅行というトリガーにより発露されていく。 学生時代の楽しい行事と捉えられがちな修学旅行は実は各家庭の金銭事情がなら大きく絡み合うことを私は母としても娘としても(ここまで痛切ではないにしても)知っている。 たくさんのそれぞれの気持ちを乗せて走り出すだろうバスを思った。
0第1連目が謎の展開だと思いました。娘が長い髪を切って居る、それ助けてバリカンを出した父なのか、懲罰的な意味で丸刈りに無理やりしてしまったのか。解釈の余地があると思いました。娘の窮状を訴える連。ああ、でも読み進むと「父」ではなくて「母」でした。バスが象徴的なアイテムとして機能して居ると思いました。
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