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じっとしていろ
本当に賢い人間なんて誰ひとり存在しない歴史上人物含めた全人類射程にとらえても他者に怯える必要などないと受精卵のうちに告げてしまえるなら話は早い "おまえはまた産まれるのか生きるのかそれならいっそのこと語れ語り尽くしてしまえそれによっておまえはおまえとして独り立ちできるだろう他者との違いを感ぜられるのかもしれない" これは人間ではなかった語りと語りのあわいから生じた空間の無振動が世界中あちらこちらの胎内からぬめりある肉の繋ぎ目こじあけ体液もろとも娑婆の空気吸おうともがき這いいでる "沈黙それは概念しかし今や実在論など軽々越境可能つまり物質としての存在を獲得しようとするおまえの動機に理由などない" そのあたらしきものまだ親御さんの身体から脱出しきれていない半分だけ出かかったところしかし体力の限界いったん休憩娑婆の音や光や匂いそれらを感じとる "おまえは世界を観察しているつもりだろうがそのおまえ自身も世界から観察されている対象だということを忘れてはならない主体と客体など瞬間また瞬間入れ替わり立ち替わりしている" 休憩おわり這い出るさなかにこの星の重力を肌という肌に受けてへたりながらやがて地面へ音もなく着地ようやく産まれたという感覚に至り身体の運動開始もぞもぞ草地でやる場合は褪せた緑の切れ端や臭い土ばかりが身体にまとわりつくそれでも身体をあたためているらしく活動をはじめるのに血流の滞りはあってはならないアスファルトであればその営みは非常に醜く身体の穴という穴から血液やリンパ液が滲み出し地面を薄黒く染めていく途中で死するものもいたが生き残りは草地よりも活動をはじめるのがやや早かったそれは頭を掠めた生死にかかわる問題が気を焦らせたに過ぎない皆んな一様に親を殺し忘れ歩行でも匍匐前進でも尺取り虫方式を採用するでもなく蛇のようで蛇でない動力源は一体なにかと見た人たちに与える印象はさまざまであるが機械としてみれば車輪のひとつでもついているのだろうと短絡的な解釈のしようがありそうと考える輩は大勢いてたしかに正解ではあったが根本的な点ではまちがえている "正解など探したところでけっきょく間違えしか見つからない世界なのだから間違いを正解と信じられるその手応えでもっておまえは生きていけば良いが移動という手段をもってしまった以上ちまちました面倒事につきあわされるはめになるいっそのこと動かなければ良かったのに野蛮な時代からやたらとおまえらは動きたがる" 人々は声や手で語り合うが車輪が通りすぎると途端にそれらをやめて何か納得したような安堵した様子で家路につくわざわざ人と人との差異や亀裂を生みだしていたコミュニケーションが消滅したおかげで人々は半透明なつながりを保つことに成功したのだ "確かに伝達なんてろくでもない人間たちは間身体性つまり身体と身体でもって途方もない力の区別を受けているそれを無理やり取り去ろうと無駄に労力を費やした結果が面倒のはじまり" かといって平和がやってきたわけではない語りが消えたら消えたでそもそもの心から発せられる情動は蓄積される一方そして親を殺し忘れた過去の記憶も手伝って身体は容赦なく動くそれは他者をいたぶり絶えまなく事件はおこり血のにおいで街は満たされる "人が人を殺すことへの躊躇いはじょじょに減じていくそれは人間たちの本来の姿なのかもしれない温暖化など緩慢な殲滅よりもっと早い事態がもうそこまで御来訪だから死にたい奴はじっと動かず安心して待っていろきっと誰かが殺しにくるから"
じっとしていろ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 690.7
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2021-11-06
コメント日時 2021-11-06
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 0 | 0 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
いいですね。
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