別枠表示
the daydreaming in a young town
* ユートピア幻想のなかで黙殺されるベールの女たちが 神をたずさえてマーケットの入り口に立つのは殺人者のいない午后 むきだしのマトンをジャンプしながら少女が店員を蹴りあげる レシピはたやすい 人造バターで肉を炒めて、バジルを添えるだけでいい 腕のいい料理人は先週首を吊った おしなべて月は * 夜の霊長類が痴聖とともにベッドにむかうとき、ペニーアーケードでおれはピンボールをしくじる その手は石となり、水となる カウンターの端っこでジンライムをやりながら地獄を眺める プラチックの女たちが淫らな火遊びをするのはたぶん詩学の伝統なのだと悟って、ひとり透明なスカートに頭を * 心臓を惑星に移植する光景を数年まえに見せられた そのときから、どうにも時計の調子が狂ってる 半分に切断された本体が、もう半分を呼ぶのだ 路上で融けだした黄金時代 いかにも懐かしい顔をした女が搾乳を始めるのが明るい午后だった * これほどまでに罪穢れながらも正義から逃れられないのは粉末の胎児が壜のなかで目醒めるための寸劇 ひとりの男と、いっぴきの犬とを遣わし、戒律をしつらえるための喜劇 暮れかかった町で幻想のリンボに閉じ込められた女を林檎畑に放ち、たったいま神がこのおれを、 * モグリの女優が逮捕される 1時間まえには映写技師が撃たれている この一連について微分方程式を用いて答えることがどうしてもできない ぼくは夏の庭にむかってボールを投げる麦秋のインナーチャイルドに過ぎない 未使用フィルムをきみに与えるために自転車を盗んだ カメラマンたちが投身自殺する * ダウン症の麒麟が疾苦する真夜中のインターステイトで、仕事あがりの線路工夫が殺される 男は右手にフルハウスを握り、左手にフォーカードを握っている 発見したのは25年まえの映画で、スタンドインの役者が一緒だ だからだしぬけに役者は倒れていう これがおれの仕事だと 失業時代から長くつづく夜は暗く、 *
the daydreaming in a young town ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2221.6
お気に入り数: 1
投票数 : 8
ポイント数 : 3
作成日時 2021-09-14
コメント日時 2021-09-30
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 3 | 3 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 3 | 3 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
- ネット詩の風紀 (鱗子(揶白))
ストイックで、ハードボイルドなガンマンよろしく語り手は次々に標的を撃ち抜いていく。 その情景は、どこかニヒルで俯瞰した世界管から成り立っている様に私には見えます。 レシピはたやすい 人造バターで肉を炒めて、バジルを添えるだけでいい 腕のいい料理人は先週首を吊った という部分に現代社会の闇が見えました。結局簡単に事が済んでしまうという。 とても好きです。それぞれの物語に風刺的な何かを感じました。 ありがとうございました。
0わあ、お上手。背景に何を見て、何があったのかなぁ、と解らないのですが、この世界を詩的言語に書き換えることを難なくやってらっしゃるように感じました。神を睨みながらも、否定を孕んで?全編がハードボイルドな感じがかっこいいですね!断章的というのでしょうか、Twitter詩をつなげられたのか、全体の一部が鏡が砕けて、そこに映った文字をたまたま読んだらよかった、みたいな詩片でした。
0これまでは、その抒情性が特筆すべき核心であり、復、枷となっていらっしゃられた。 されども 見事、 抒情殺しを完遂なされた筆致は誰にも模倣の敵わない、特有の作家性を獲得なされた様に、思われます。 >>この一連について微分方程式を用いて答えることがどうしてもできない 今、これを記述し得るのは、多分貴方だけです。
0嫌いじゃ無いし、さすがに巧いと思うけど、ちょっと温い気がする。もっと抽出出来るし濃度を高められる気がする。結晶化するまでいかないと!と感じました。単なる私の好みの問題かもしれませんが。
0最初は何が何やらわからなかったのですが,でもひきつけられるように読みました。 >>心臓を惑星に移植する という文句をはじめ,聖書やみだらさ,暴力性が合わさった語彙の選定が私の嗜好にあったのかもしれません。 読み返してみて思ったのは,舞台がマーケットからペニーアーケード,映画へと場面転換するなか男と女が役を変えながらも登場し交錯しているようだとということです。 そしてもう一つの軸として時間が交錯していて,数年前の光景や黄金時代の情景が顕れながら,女優が逮捕された現在につながり,しかしそれはまた25年前の映画だったという過去と現在が混濁しているらしい。加えて女たちは幻想やリンボに閉じ込められていて,超時間的というか時間を繰り返しループしているというかそんな場所にいるなと。男は未使用フィルムをけなげにも届けて,そんな女の幻想を延長させてあげてるのかなと。時間(記憶)と場所が移り変わる情景は映画「インセプション」を思い出します。 かなり勝手読みが過ぎる気はしますが,私個人はそんな空間と時間が交錯する作品世界に魅了されたのだろうと思います。
0コメント、ありがとうございます。
0私は散文詩をメインに書いている者なのですが、散文の中の一文一文に自分には出せない言葉の自在さ、自主性、深い広がりのようなものを感じて、とても好みでした。 ここまで言葉が自在であると世俗との折り合いが付くのだろうか、という気持ちになったりもしますが、そこに自分には至れない憧れのような感情を感じる気がします。少し失礼な表現と受け取られかねないかもしれませんが、強い驚嘆に似た感情だと思っていただけると幸いです。
0わたしはアンリ・ミショーを読んで散文詩に目覚めました。自由詩は演技を強要する。いまのわたしにはできないことだ。なのでいまは詩集をつくるために散文詩を書いています。ありがとうございます。
1詩表現の堅固さを思いました。さすがに麒麟のダウン症は二重に虚構じみて、イメージの穿孔性を疑いましたが、他の場面では、内容から来る、好悪の差で判定が分かれると思いました。惡の華と言うわけではないでしょうが、自転車を盗んだり、詩学へと収斂される女たちの火遊び。全体的にイメージの走行性が楽しめる詩だと思いました。
0ぼくには到底書けないし面白いけどさ、この投稿作品は詩じゃねぇだろうが!と言わなきゃならない気がしてます。
0いえばいいとおもいますよ。それを怨嗟や好悪を超えた言語で語り得るのなら。
2