赤ちゃんの、ミイラを持っています
本当に赤ちゃんのミイラなのかは、専門家じゃないので、わかんないけど
僕はそう呼んでます
それは、てのひらほどの大きさで
朱色と青が混じったような色をしてて
水にいれると
泳ぎます
彼が
泳いだ後の水は
半透明の赤金色に染まり
それを飲むと
子を、身篭ります
僕はもうすでに
七つ産み
母さんは、十四
兄さんは、五つ
弟は、二十三産みました
生まれてくるこどもたちはみな
とても可愛らしい姿をしていますが
いくらか歌うように泣いた後
ミイラとなって、息絶えてしまいます
僕らはそれがあまりに悲しくて
彼らを水に入れると
泳ぎました
そうして、赤ちゃんのミイラが
ぼくのいえには、どんどん増えて
かれらと水を入れたガラス瓶が
棚に並ぶようになりました
どうやら彼らは、水の中でないと死んでしまう代わりに
水の中なら死なないようで
赤金色の水の中で
ご飯を与えなくとも元気に泳いでおります
不思議なことに彼らを産むたびに
何かしら、良い事が起きるので
近々彼らをしまっておく倉庫か離れのようなものがある家を買おうと
母と兄は企んでいるようです
金はふんだんにあるし
ぼくは先日、気になっていた方に告白されたばかりで
家族も増えると思うので
その方はとても素敵な人で、結婚を約束していた女性と別れ
ぼくの元にきてくださいました
ぼくは、その方を始めて家に呼んだ日に
赤ちゃんのミイラと赤金色の水をお見せすると
初めは戸惑っていらっしゃいましたが
すこしぼうっとした後
水を飲み干してくださいました
彼が一つ
ぼくが六つ目を身篭り
母が、兄が、弟が身篭り
新たな商売を始めれば
商売敵は死に尽くし
金は入り、優秀な人が入り
我が家もいよいよ栄え
お屋敷まで立ちました
壁を一面赤金に染め
ミイラたちを泳がせる100メートルもある水槽を大広間の天井にはめ込み
襖には素晴らしい百花図を描かせ
欄間には百獣を彫刻させ
百余人の下働きを抱え
羨まぬものはおりませんでした
時が移ろうにつれて
ぼくたちの住む街は寂れ
人はほとんど自死するか都会に流れていきましたが
ぼくたちは依然として栄え
弟が嫁をとったことから人間の子供たちも生まれ、男四人女一人の家族は男十六人女二十一人の賑やかにものなり
下働きたちは、親兄弟が街をさっても残り続け
ミイラたちももはや、数百に増えました
今や、廃墟も風化した街で
我が家だけが、赤金色に輝きながら建て増しを繰り返しています
増え続けた水槽の中を
ミイラたちが天使のように泳いでいます
作品データ
コメント数 : 4
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作成日時 2021-08-07
コメント日時 2021-08-09
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 2 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
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2024/11/21 23時21分17秒現在
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これまた怖い! 70年代か80年代の諸星大二郎辺りが描いていそうな悪夢的な世界ですね。 多くのミイラが泳ぐ様は綺麗かと思いますが、完全に悪夢でしかないです。 今晩見てしまいそうな迫力がありました。
1ありがとうございます。実はこれ羽田さんの「トン」に触発されて思いついた話で、全てを失う話とは逆に全てを得る怪談を書いて見たいなって思って書いたものなんです。なのでご本人からコメントがもらえてすごく嬉しいです。
0蛭子子さん 百均です。企画に関する事でちょっとだけ相談がございます。 (作品以外のレスになり、申し訳ございません。今感想を書いているので書きあがり次第再レスします。) 蛭子子さんのHNの読み方を教えていただいてもよろしいでしょうか? 実は、蛭子子さんの作品を企画の中で朗読させていただきたいと考えており、 その際蛭子子さんのHNも読み上げさせていただきたいと考えております。 よろしければ、ご教示くださるとありがたいです。
0読みづらいですもんね。ひるここです。
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