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皆殺しの比喩
空想上の臨床試験に犯されて いつの間にか過ぎ去った歳月 枕の上に落ちた染みの隙間に 群がる宝石のまなざし お見舞いの言葉を紙に書いて 燃してしまった ……もう一度無害な唇の下に 舌をならべてごらんよ、 警笛は深く沈み込み (鳴り響く警告) 灰色のガウンを着こみ、 寝静まったドアを叩く 開いた先で風が鳴く 嵐の模様が岩に張り付き、 枯れ枝が若木のようにひしひしと濡れて 枝の生える隙間から幾つもの開いた口が 土砂をかきわけるように ……身を捧げるように 割けた顔の皮からむき出しの奥歯が垣間見えて 誰も尋ねる事のない玄関の前に立つ クローゼットの隙間から見えた燃える女の顔から 名前のない敵が立ち上がった 部屋の底を突き破り ああ、啓介と秀介が、 私を、死に追いやった記憶を、 思い出し、再び、 夜泣きする子供たちが、 薄い庇を剥いで 受け取ってしまった 私の顔を 与え、受け取ってしまった その事実に耐えきれず、 啓介の記憶をたどり、打ち消され、秀介はどこにいったのかと、 シルク地のパジャマをギュット握っても、 どこにもいないのね そうだわ、と反論を与える暇をあたえないまま もう会う事も許されない 許されない行為はいつでもそうだろうかって思われてしまうのが いやです、いやなんです。 両立しない。両立しない個人の主観は成立しない。 難しい事を言っているのですね、 わたしたち 女は落ち着かない様子で部屋に戻り ドアをもう一度閉めてしまうが それでもまた、空虚な空間にいることが耐えられない クローゼットの隙間から這い出た その右手の骨格から浮かび上がる 指の方角に対して、 何指がどうのこうのって もうやめてほしいんですけれども 女にとってはそれが親指か人差し指か小指が子指であっても それがどんな意味を持っているのかなんてどうでもいいんです、 だって、もう、こんな嵐の夜なのに、 私を殺そうとしている事に耐えられない そして再度リビングに戻り、 机の上においてあるパソコンの電気を付ける 付けた先に広がる外部ネットワーク上の世界に陳列する SNSの中に身を潜めて朝が来るのを待ってしまう。 待っても来ないから本を開いて、テレビを付け、エアコンの電気を付けて 暑いのか寒いのかもうどうでもいいんです 時間が早く過ぎてしまわないうちから、 啓介や秀介がやってきて、私の隣に座ってきてしまうから、 椅子の上から立とうとして転んでしまい、 前歯を打ち付けて買ったばかりのカーペットに血と唾液を付けてしまった もう取返しの付かない事をしてしまったから、 それをおいていくことはできないんだから、 私を私で強く抱きしめ自分の電話番号に電話をかけて 喉の奥から舌が出てくるのを受け止めてくれ、 受けて止めてくれたら服が汚れても家が壊れてもいいし 私の腕を誰かが抱いてくれたらいいのに 啓介はどこにもいない、 秀介もいない、だから啓介の方が大事なんだって、 秀介はいらないって いるよ、 何もいえなくなってしまったから、 しゃがれた声でしゃべろうか 朝4時のテレビで、 どうでもいい特集をやってるの どんな? あんまり知られていない観光地の 緩やかな情報 服装が代わり、 目を閉じて開き、 朝起きたら目は、 天井の一点を突き刺し、 屋根の壊れたあばら家の舌で、 乱れた髪がまとまった頃には ブーケを下さいよ ほら、あ、ほら、 みんな私が殺しちゃったんだけれども、
皆殺しの比喩 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1676.2
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 4
作成日時 2021-07-05
コメント日時 2021-07-11
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 4 | 4 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 4 | 4 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
こんにちは初めまして これからもこの速度で走り続けてほしいな 冒頭はちょっと不安定だったけれど 最後までイケてる
0詩的表現が流暢に続き、綺麗です。お喋りの上手な女を想像しました。
0作品を拝見させて頂きました。 お見舞いの言葉を紙に書いて 燃してしまった ……もう一度無害な唇の下に 舌をならべてごらんよ、 この部分なんだか好きです。瀕死をおって、入院して、お見舞いの言葉を燃やしてしまったが、もう一度話したいというような意味なのかなと思ったりしました。 後半は小説のような展開でしたね。 良い作品をありがとうございました。
0三浦さん コメントありがとうございます。 冒頭は硬くなっちゃたんですけど、後半はスピードがありましたね。 読み返すと最初から速度あった方がいいかもなと思いました。 コメントありがとうございます。
0湖湖さん こんにちは。コメントありがとうございます。 おしゃべりな女の声で再生されたという所で、 とてもうれしかったです。なんか、別の語りてが何かしゃべってる感じがずっとほしいな~と思ったので良かったなと思いました。 レスありがとうございます。
1きょこちさん こんにちは。こちらでは初めましてですね。 >この部分なんだか好きです。瀕死をおって、入院して、お見舞いの言葉を燃やしてしまったが、もう一度話したいというような意味なのかなと思ったりしました。 >後半は小説のような展開でしたね。 一番大事な場面で大事な事に気が付かないまま後悔する事ってあるよなと思っていて、なので、後悔ってずっと引っ張るのかなと思いますが、なんか難しいですよねみたいな感じですね。 展開があると読んでいて飽きないかなというのと、とはいえぶつ切りにならない程度にふんわりできたらと思っています。 レスありがとうございました。
0cold fishさん レスありがとうございます。 ガチガチしてるかもしれないですが、内容はしょうもないので、しょうもない感じで読んでいただければいいかな~と思っているんですけど。みたいな感じですね。たぶんここ最近はこういうのを書いているので、こういうが続くと思います。 レスありがとうございました。
0こめ読んで、内容がしょうもない自覚あったんか、と思いました。それでも筆力あると思うし、その筆力(文章)から伝わってくるものはあると思う。だからこそ一皮剝けて欲しい気持ちがあるし、逆にそのしょうもなさに大事に拘泥して欲しい気もする。良く判らんらいとこめですまん。です。
0白犬さん こんばんは。レスありがとうございます。 >こめ読んで、内容がしょうもない自覚あったんか、と思いました。それでも筆力あると思うし、その筆力(文章)から伝わってくるものはあると思う。だからこそ一皮剝けて欲しい気持ちがあるし、逆にそのしょうもなさに大事に拘泥して欲しい気もする。良く判らんらいとこめですまん。です。 内容がないってのは折に触れていってるし、なんなら書き始めた時からずっとそうだし、書いてからよりそう思うし、自分で変えられるものではないよなと思ってるんですよね。拘泥するも何も、最初から同じ事ずっと書いてて、それから逃れられたこともこれから出来る気もしないですね。なので、最近は作品を書く時に内容については考えないですね。考えても意味がないので。 筆力の高さってのは正直何がどうなるとあがるのかは分からんよ。今あるのかもわからん。自分ではずっとない物だと思ってるからずっと練習するしかないよねって感じ。内容のしょうもなさ(僕自身が内容の持つ力みたいな物を信じてないんですけどね。「他の人もやってる」で終わりじゃんね)をカバーするのが筆力だし、筆力が付いてくると出来るようになることが増えるかもしれんしね。出来る事が減っちゃうかもしれないけど。(「最初に書いた物の方が良かった」って落ちになるのかもしれないけど、そこら辺はもう戻れないんだからしょうもないしねって感じですかね。) 一皮むけたって言われたり言われなかったりの繰り返しだから、そういう意味では何とも言えないね。そう思う白犬さんがいて、そう思われる百均がいるってだけなんじゃないかな。って感じかな~ 具体的な言及がないからなんとも言えんよ。 レスありがとうございます。
0言及が無い、か。すまん。。。私の百均たんの詩に感じてたしょうもなさってのは、「個」でしか無いことだと思う。言葉は非常に饒舌だけれど、書かれてる内容が、とても「個人的な」小さい範囲の懊悩しか書いてないように見えるんです(盛大なぶーめらんって言わないでねw)ただ、それは、「人間ってこんなもんよねーこんなぱたーんよねー」という、私の舐めきった雑な他者への理解の反映でそう読めてしまうだけかもしれない。ただ、そうした、「個の懊悩しか書いてないやん」という「理解」を超えていこうとするものを、百均たんの饒舌な文体から感じて居て。究極、意図的に書こうとするもの、作者の意識以上のもっと深いものが文体には現れてくるのでは?みたいなことも考えてて。百均たんのある意味注意散漫?な饒舌文体を読んでると尚更そう思うし、それこそが、「人間なんてこんなもんですやん」を突き抜けてくれないかな、とちょっと期待してる。実際百均たんの筋とれを怠って無いであろう文章は前よりれべる上がってると思うんです。筆力あると思う。私みたいないつもおんなじような表現に終止する、栄養も取らない(いんぷっとをしない)、怠惰な文章とは違うな、と(その辺見習いたい)後、最初に、百均たんの詩のしょうもなさは「個」でしか無いこと、と書いたけど、なによりも大事なのは「個」であるとも思ってる。それを突き詰めて掘り抜いた先に、もっと開けたものが、大きなものが見えてくるのでは、と。だから、「個」に苦悩し、それをなんとか表現しようともがく百均たんは、間違っては無い気もする。そういう意味で、「しょうもなさ」に大事に拘泥して欲しいと書いた。ざっと私が思ったのはこんな感じです。伝わるかな。私もあほだから巧く言えないけど、少しでも伝わったら嬉しい。こんだけ書いといて、精読は出来て無いので、具体的な詩の内容・文体への言及が出来無くてごめん。応援してるで。
0白犬さん 再レスありがとうございます。 ちょっと意地悪な返信しちゃってごめんね。 >私の百均たんの詩に感じてたしょうもなさってのは、「個」でしか無いことだと思う。言葉は非常に饒舌だけれど、書かれてる内容が、とても「個人的な」小さい範囲の懊悩しか書いてないように見えるんです。 なるほどね。ここら辺についてはその通りかもなと思います。 >ただ、それは、「人間ってこんなもんよねーこんなぱたーんよねー」という、私の舐めきった雑な他者への理解の反映でそう読めてしまうだけかもしれない。ただ、そうした、「個の懊悩しか書いてないやん」という「理解」を超えていこうとするものを、百均たんの饒舌な文体から感じて居て。究極、意図的に書こうとするもの、作者の意識以上のもっと深いものが文体には現れてくるのでは?みたいなことも考えてて。百均たんのある意味注意散漫?な饒舌文体を読んでると尚更そう思うし、それこそが、「人間なんてこんなもんですやん」を突き抜けてくれないかな、とちょっと期待してる。 僕自身が内容を見ていないっていうのも正に人間を舐めているからで、大した内容なんて人間からそうそう湧いて出てこないだろって思ってる所がありますね。そんな直ぐに出てくるんだったらみんな天才とか呼ばれて重宝されているのかもしれんですけど、実際の所少なくとも自分は別に天才でもなんでもない、社会人の一人でしかないのでって感じかな。僕は人間の一人でしょうもない1つの生き物でしかないって感じだし、多分個を飛び出した物って目線が社会とかに向けられると思うんだけど、向けた奴らって多分行動を起こして変えようとするはずなんだよね。多分詩なんか書いてる暇なんてどこにもなくて、自分の身体を使って世の中の認識を変えにいくと思うよ。という訳で自分よりすごい内容を持った人間なんてどこにもいるし、そういう人たちが結果を残したりくたばったりしてるのかなと思いますね。(個々人の細かい歴史を参照した時に差異はあるかもしれないけど、そういった所に目をむければ誰だって面白いですよね。インタビューとかして話聞く度に思うもん。なので、大体人間を舐めると痛い目に合うんですけど。自分の愚かさが透けるだけ) って所で文体みたいな所だったり、書き方みたいな所しか考えてないですね。文体って所に自分が意図しない所での効果というのは僕自身も期待してる所はありますね。一応毎回何か物を書く度にちょこちょこ変えてたりもう一回試して変化を確認したりしてんるんだけど。逆にいうと変化を付けられる場所って、文体だったり、物の表現の仕方なんだろうなと思ってますね。そこから内容が変化してく可能性は充分あるし、結果的に文体を超えてくる物もあるだろうなと思ってます。(そこら辺はこういう場で物を読んだり、誰かと一緒に作品を読んだりする理由なんだけど)勿論、得意不得意あるだろうし、一技能を極める人もいたっていいとおもうけどね。逆に言うと、詩で鍛えられるこの要素って多分汎用性は高いんじゃないのかな? みたいな事は思いますね。 あ、別に「詩」である必要とかはないんですけど。変に形式ばった文句を言われにくいって意味で自由だよね。その分読みにくいかもしれないけど。 多分がっつり遠回りした方が最短距離は掴みやすくなるよね。って感じで今は難しい事は考えないようにしてますね。なぁ、技術がない奴が何いってもしょうもないし、始まりの地点にすら立ててないからしょうもないですね。黙ってかけって感じ。 >私みたいないつもおんなじような表現に終止する、栄養も取らない(いんぷっとをしない)、怠惰な文章とは違うな、と(その辺見習いたい)後、最初に、百均たんの詩のしょうもなさは「個」でしか無いこと、と書いたけど、なによりも大事なのは「個」であるとも思ってる。それを突き詰めて掘り抜いた先に、もっと開けたものが、大きなものが見えてくるのでは、と。だから、「個」に苦悩し、それをなんとか表現しようともがく百均たんは、間違っては無い気もする。そういう意味で、「しょうもなさ」に大事に拘泥して欲しいと書いた。 白犬さんの作品が成長していないのか、突き詰めているのか、変わらない程完成されているのか、どこを目指しているのかいないのかわからんのですが、単純に真似出来ない事をやっていると思うし、俺にはまねできないからなんともいえないですね。それはそれで個を確立しているともいえるし、他者が入りいる余地などないって話だと思うしね。個を振り切りたい我や欲やモチベあるなら別だけどさ。他者が振り返るものを書くのだとしたら、他者の目線や受け入れやすいフォーマットで書く事を念頭においた訓練をすればいいんじゃねって素直に思うけど、僕の興味はそこにはないし、それらを遂行するだけの我慢も出来ないかなって感じだね。 って感じで、個に苦悩って意味だと、個に苦悩しようが、個に苦悩しなかろうが、やっぱり個になっちゃうし個でしかないよ。って感じなんだよな。ってか個にこだわる限り個に縛られちゃうし逆に抜け出せなくなるでしょ。(個ってのは個々人差はあるだろうから定義出来る事もないけど)僕は個に関しては割と無視しているけど、やっぱり同じ事書いてるなって思ってるから、まぁもうしょうがないよねって感じ。(現にこの作品って直近で読んだ本のフレーズを引き出して、それを自分なりに変換して並べて、付けたしたものなんだよね。なので、個は希薄になっていてほしいなと思わなくはないけど、そんな事したって個は個だよねわらい。寧ろ個が深まっちゃう始末なんだから。) 個を表現した結果個から抜け出すっていうのは結果論であって、それはつまり読み手に委ねるしかないんだよね。たとえば、読み手が自分の事のようにこれを読んでもらえたらこれは個じゃなくなるよね。あとはこの女の語りとして受け取って貰えた時に、それは俺の話じゃなくてこの女の話になるよねって感じかな~ それは「没入感」とか、「読み手が追体験できるようなフレーズ」みたいなのはあるかもしれないけど、百均がかいているものに百均の顔が見えて、その内容の狭さで鼻が歪んでしまうのはしょうがないとおもってんだけどね。そんな簡単に認識が歪む事なんて起きないだろうし、多分書けば書くほど認識に色がついて読みは捻じ曲がるし、感覚が引き起こす推測は麻痺してくるもんだろうなとは思うけどね。そういったものがちゃんと無視されるような書き方ってのがいつかできたらいいなって感じ。書いてあることやあるいは書いてない事までストレートに読み手の脳みそに対して殴れたらどうでもいいよ。 >こんだけ書いといて、精読は出来て無いので、具体的な詩の内容・文体への言及が出来無くてごめん。応援してるで。 具体的な言及っていうのを最後に書いたのは、例えば「色々書いてるけど、女が一人芝居してるだけで覚めました」とかでいいんだよね。そしたら、狭い話を書いているし、それが全面的にでちゃったかなって言えるかなって感じだね。基本的に誰かに自分の作品を細かく読んでもらいたいとは願ってないし、やってくれたら嬉しい事この上ないけど、白犬さんがこれのどこを読んで何を思ったのか、さっきのコメントからだと拾えないなって思ったのでちょっと突っかかっちゃったな。ある意味僕の事をみていて、これを読んでないのかなと思ったのもあるけど、前から同じようなコメントを貰っていたので、今回きっちり返そうかなって思った感じですね。 ともあれ、丁寧に再レス下さりありがとうございました。
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