水が沸いている
熱い水がちいさくはねている
ふらふらとおぼつかない足元から
ざぼん、と落ちる
輪郭が剥がれてゆく
離れてゆく ほどけてゆく
ぱつん、と切られた爪は
もう私ではない
あかくうごめく蛋白質を
ひとつずつ すこしずつ
削ぎ落としてゆけば
何処までに炎は揺らがないのか
乾いた骨を打ち合わせて
ぱきいん、と音がする
劈開した断面が
ぶくぶくと泡立っている
束ねられた肉の筋が
ぴくん、ぴくんと
ふるえている
脊髄を落ちる電流が
ぱちぱちと
意思はからだに紡がれて
柔らかな水膨れ
なめらかな背中が
沸騰するように
ふいごを思い切り押して
空気がぺったりと出てゆく
にぎられた腕が
ぐずり、と崩れた
散らばった欠片を
ぼたぼたと並べる
実在はどこに
まだ新しい煮えた鉄の匂いだけが
ひとつになっている
全てを納めて
みがかれた白木の表面を
そっとなでる
ひとつ ひとり
作品データ
コメント数 : 3
P V 数 : 1358.5
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 100
作成日時 2021-06-20
コメント日時 2021-07-01
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 50 | 50 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 30 | 30 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 10 | 10 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 10 | 10 |
総合ポイント | 100 | 100 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 50 | 50 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 30 | 30 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 10 | 10 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 10 | 10 |
総合 | 100 | 100 |
閲覧指数:1358.5
2024/11/21 23時24分13秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。
擬音語・擬態語が効いてるのがあきらさんの作品の特徴の一つですが、今作はそれが多用されていて興味深く読みました。あきらさんのテーマの一つとして、たしか、「営み」というのがあったように記憶してますが、擬音語と営みって密接なこととしてにじみでるものだと、そう今作で気が付きました。 最終行の >ひとつ ひとり 平易でありながら、俊逸な修辞。
営みは世界であり構造だと思っています。
0作品を拝見させて頂きました。 輪郭が剥がれてゆく 離れてゆく ほどけてゆく ぱつん、と切られた爪は もう私ではない この部分が印象的でした。 切られた爪は、私から離れてただの無機物となる。私もたまに爪を切っている時に不思議な感覚を覚えます。 良い作品をありがとうございました。
0