からだのぜんぶが
縮こまる
感じを
久しぶりに覚えました
なんの脈絡もなく
縮こまる
気持ち良い
ひどく現実的で実際的で
比喩などでは断じてない
現実の実際の
気持ち良い
縮こまり
左の胸の奥を中心に
なんの脈絡もなく
ふと
訪れる収縮感覚
実在する私の実在の
縮こまり
なんの脈絡もなく
そして五年ぶりくらいの感覚であるのですおそらく
ちょっと前にはじめて体験した
千八百円で行ける時間旅行のように
昔のことを思い出すきっかけとなりました
肉体が縮こまっていく実際の感覚
ですが
決して実際に収縮していくわけではなくて
縮こまっている気がするなという感覚と
呼んであげる以外にない肌感覚であって
この謎めいた快感をしたためる方法論を
迷い探しているから今を生きていける
気がしているのです
でも知っているのです
縮こまり感覚の末に行っても
収縮しきることはない
脳漿の暴走に決まっております
それはとっても安心できる事実です
なんの脈絡もなく
なぜか鳥肌まで立っています
ひどく集中したときの感覚に近く
集中を保証する脳内麻薬物質と
同種のものすら
あふれている
縮こまり
おそらく脳内で
なんの脈絡もなく
アドレナリンやら
ノルアドレナリンやら
エストロゲンやら
テストステロンやら
なんだかそういうたぐいのものが
各々乱れた大迷走をしているんですきっと
だからなんか脳の中のドミノみたいなものが
さぁーっと溶けていくんですたぶん
そうして
なんの脈絡もなく
神経は反射しました
けれど
頭痛に近い縮こまり快楽を
結局のところしたためるすべを
当の私が有していない
ことが
とても悲しい
ことで
涙が出るような気配に触れては
縮こまり感覚の共有が
世界の誰かと
いつかなされる日が来れば
ペンを
比喩的な意味でのペンを
実際的にはキーボードを
叩き割ってもいいとすら思うのです
いやもはやむしろ今すぐに
先んじて
叩き割っちまうべきなのだ
はい割りました
いま割れました
ぺらっぺらの
プラスチックの
無線キーボードが散っていく様を見た
そんな別にどうってことはない
黒い破片の浮かぶただ中でそして
この縮こまり快楽を
再現するすべが
なんの脈絡もなく
見い出されて
どっかの名前も知らない
誰かと
すれ違うそのときに
なんの脈絡もなく
共同で
交互に
相互に
縮こまり
絡み合い
気持ちよく
なっちまえば素敵だなって
思うのでした
縮こまり快楽にはあらゆる意味合いにおいてなんの脈絡もないのですがそのことこそが人類百億年の夢である共同した縮こまり快楽への一つの多大なるヒントになるんじゃないかなとかそういうことをちっとばかしに示す指先でした
作品データ
コメント数 : 15
P V 数 : 2690.4
お気に入り数: 4
投票数 : 4
ポイント数 : 1
作成日時 2021-06-05
コメント日時 2021-07-07
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 1 | 1 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 1 | 1 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 1 | 1 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 1 | 1 |
閲覧指数:2690.4
2024/11/21 23時35分03秒現在
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読んでいてシンプルに楽しい作品でした。 私は川や森が好きなんですが、 川の流れや森のゆらめきをいつまでも見ていられるのと 同じような感覚で、 この言葉の流れやゆらめきを いつまでも眺めていたい、という気持ちになりました。 すばらしい作品を読ませていただき、ありがとうございました。
1たびたびすみません。 追加で感想が浮かんできたので、追記させてください。 縮こまり快楽という謎の概念に対して、 多角的にいろんなアングルで考察、説明、表現されているのが、 なんでしょう、読む万華鏡とでも言うのでしょうか、 万華鏡をころころ転がすと、多面的な模様が浮かび上がるように、 本作も読み進めるごとに、多面的なアングルからの言葉や表現が ころころと転がっていく様が、 とても楽しい詩体験になりました。
1Yamabito さん いつもコメントありがとうございます。 テクニックを褒めていただけて嬉しいです。 自分の心をどうにかして伝えようとすると、直喩ではどうしても足りなくてこうなりました。 テクニックが人を自由にするのかそれとも不自由にするのか、いつもいつも考えてしまいます。 より自由な自由詩を目指していきたいです。
0良いです リズムの調整と題材と。 「比喩ではない」と切ったことで鋭くなったと思う。
1まささん はじめまして。 非常に面白い感想、嬉しいです。 ごく個人的な謎の感覚が川のせせらぎに化けるって面白いです。 そしてなんとか言葉を尽くした末に万華鏡にも見えてくる。 まささんの素晴らしい感性が作品に命を与えてくれた気がします。 意識的にそういったテクニックを使えるようになりたいな、と思う次第です. ありがとうございました。
1失礼いたします。 一文が次の一文を惹きつける力強さで、 わたし自身も縮こまり快楽を欲してしまいました。 きっとどこかで、幼い時に経験はしていると思うのだけれども その術も感触も思い出せないのが悔しいです。 素敵な作品をありがとうございました。
0この作品はクロールでした。クロールでプールを泳ぐのってちょっと苦しいんです。でも泳ぎ切ったらすごく気持ちいいんです。僕はクロールが得意じゃないから、息継ぎのタイミングで少ししか酸素が供給できないんです。だから溺れたような感覚のなかで前へ前へって、もう急ぐしかないみたいに泳ぎ切るしかなくて、でも泳ぎ切ったらきっと気持ちいいんです。酸素が不足しているからもしかしたら気持ちが高揚するのかもしれません。僕はクロールが得意じゃないから、息継ぎのタイミングで少ししか酸素が供給できないんです。でも泳ぎ切ったらすごく気持ちいいんです。そして、この作品はクロールでした。
0楽子さん、ありがとうございます。 音韻の調整、磨いていきたいです。
0タナビかるさん、ありがとうございます。 >> 結局のところしたためるすべを >> 当の私が有していない ので仕方ないんです。 でもその >> 経験していると思う を引き出すことができたのだとしたら、この詩を作った意味もほんの少しはあるんだろうなと感じました。 嬉しいです。
0素敵な返詩(と私には思えました)をありがとうございます。 そのもがいている感じやなんとか進んでいる感じが私の詩には出ている、としばしば評価されることがあります。 異曲同工となっていないか心配ではあるのですが、その懸念に対してもクロールしていくしかないですね。
0面白いですね。縮こまり快楽についてひたすら書かれているのに、縮こまり快楽が実際何なのかについてはほぼ言及していない。いや言及しているのかもしれないが読み手が縮こまり快楽について知るヒントに乏しい。縮こまり快楽、共有出来たらいいですね。そうすればあわよくば世界平和も。そんな冗談紛いのことも考えました。しかし一点技術的なことを言えばこの作品、変化がなくやや短調なような気もしました。
1コメントありがとうございます。 技術的なご指摘、非常に嬉しく思います。 ボロクソに言われたいな、と常々考えていてこういった意見をしてくださるととてもありがたいです。 たしかにこの作品は場面転換もなくリズムに変化もなく視点の変化もありません。 最後の三行だけ取って付けたように変わっていますが、これだけでは変化の乏しさは埋めきれませんね。 あまりに単調なので飽きて読む気が起きない方もいるだろうと感じます。 >> からだのぜんぶが >> 縮こまる >> 感じを >> 久しぶりに覚えました ここが刺さらないとおそらく終了な詩で、それは完全に受け手に委ねてしまっています。 改めて読むとここもよくない気がします。 背景描写や視点の移動をどこかで入れて「私」濃度を少し薄めることでより良くなる可能性がある気がします。 受け手を読む気にさせるためにも何かもうひとつ序盤にあった方がいいかも知れません。 その辺は筆者の力量によりますが、出来るのであればそうした方が絶対によくなると感じます。 ありがとうございました。貴重なご意見でした。
1縮こまっている気がするなという感覚と 呼んであげる以外にない肌感覚であって さいきん、急に肥えだしたので、ほしい感覚だと思いました。
0読んでいて思ったのは、ナラティブな感情についての描き方かなみたいな所ですね。それから、内容自体には多分意味がないといえばなくて、この作品が示している文体や語の改行のリズムや、ストロークの長さや繰り返しの部分が面白いなと思いました。そういう意味で読んでいて酩酊感が味わえたということ。それからある意味で閉じていますが、開かれている作品だなとおもいました。閉じているというのはナラティブな感情にはつきものなのかもしれないですし、そういったものを描いて伝達するという所で矛盾が生じるのでしょうがないなという所もあるんですけど。 >ひどく現実的で実際的で >比喩などでは断じてない >現実の実際の >気持ち良い >縮こまり 具体的な描写の順番みたいな所から作品を読んで行っても面白いですね。この断じてという部分に感じる筆力の強さと確信を悪い意味での抽象的な物言いから、脳内物質の羅列などと言った、理屈の部分から感情を解体しようとする動きの部分ですよね。後は文体のフローの目まぐるしさみたいな感じというのが、これは個人的な感触で言って仕舞うと、とても分かるような感じですね。言って仕舞えば、ことばにならない感情と、論理で再現できない感情を共有するみたいな物をことばというツールで共有しえない事と、あるいは出来た時の素敵さみたいな感情でしょうか。この様を優柔不断的に解釈して結論が出ない様を嫌われてしまうのかもしれませんが、この作品の持つ文体みたいな所の感情の寄り添い方みたいな所を見ると、単純に否定できない感触の良さを思いました。(結局の所、僕の中に残る作品って、いい悪いっていう判断を下せるような作品ではなくて、その在り方を認めざるを得ない作品だったりしますね) 全体的な印象の話ばっかりして申し訳ないのですが、多分上から順番にこの場合は百均の体験を代入して語る事は可能で、その順番みたいな所を踏まえても、多分その通りになります。と言ったときに、この作品は僕にとっては、自分の感情を語る時の箱になりえるのですね。例えばこの作品を読んで思うのは、ナラティブな感情ということばを僕が持ち出したように、そしてそれは僕が詩を読んでいる一番の理由なのですが、そういった感情を揺さぶられる媒体としての詩、その揺さぶられた時の感情を説明しようとするときの心の動きを正確に模写し、打ち出された作品だなということです。 簡単にいうと、あ、自分が詩に感動した時、それを誰かに伝えたいと思っても伝えられたことがないけど、伝えられたらいいなって思うとき、こういう心の動きをしてたよなって感じです。この繰り返してぐるぐるしてる感じや、結論が出ているようで出ていない感じが自分見てる感じでリアルに感じてしょうがないですね。 また、この作品の価値みたいな話になってくると、作者像みたいな視点で読んでも面白いかもしれないですが、自分はある意味語りてに同化して読んでしまったし、その点視点が多分ぶれてしまっているので、他の方の読みを期待するしかないですね。僕は他人事のように本作を読む事ができないので。 ありがとうございました。
1コメントありがとうございます。 はい、狙っています。 このワンテーマで書くなら「もういい、長いわ」ってくらい書きたかったのです。 例えば31文字にコンパクトにまとめることもできてしまうとは思いますし、そうする方が共感を呼び起こすにはきっと良いです。 ただコンパクトにまとめた作品が呼び起こす共鳴や共感を本作品のメインの狙いにはしたくなかったのです。
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