春、と言うにはもう遅いけれど
青い風が吹いている
どこへ行くの、と問う
わたしの指が
さらさらとほどけてゆく
草を踏む足元
つぶれたいのちの
むせかえるように満ちる
何事もなかったから
質量だけが
存在を証明している
失われた空白を
追いかけても
欠落の足跡が
ただ そこにある
何色かをした
ぬちゃぬちゃと音を立てる
情動が
膝下にすがりついてくる
これも愛と呼べるの
うずくまったまま
答えもなく
黒い髪を揺らして
先に往く君を見た
ぴしりと引かれた断絶に
てのひらをつけて
もう進めない
誰でもいい訳じゃないのに
たったひとりで立っていられるから
たったふたりに耐えられない
確立された唯一に
砂地は干上がってゆく
ぺたりと着けられた足型に
そっと自分を重ねて
たよりに歩く
いくつもの版の
欠けた白い隙間に
からだを滑り込ませて
そればかりをたどっている
作品データ
コメント数 : 8
P V 数 : 1789.3
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 10
作成日時 2021-06-01
コメント日時 2021-06-19
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 2 | 0 |
前衛性 | 1 | 0 |
可読性 | 2 | 0 |
エンタメ | 2 | 0 |
技巧 | 2 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 0 |
総合ポイント | 10 | 0 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0.5 | 0.5 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0.5 | 0.5 |
総合 | 5 | 5 |
閲覧指数:1789.3
2024/11/21 23時14分51秒現在
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いい詩だなあと。これまでのちゃーこさんの作品はどちらかと言えば難解で、取っつきにくく分かりにくい一面があったのですがこの作品は最上にいい意味で分かりやすい。たったふたりでいることが耐えられない女性の心情が妙な細工なしに描かれている。質量だけが…の三連目が特に目を引き、よもすればふわっとしてしまいがちなモチーフにずしりとした手応えを与えている。以前ちゃーこさんとツイキャスコラボした時「分かってもらおうなんて思ってない。簡単に分かられてたまるか」という趣旨のことを仰っていましたが、そのような心情から一歩抜け出したのかなと。この詩は多くの人に門戸が開かれたフレーズと惹きつける要素があり、僕はとても好感を持ちました。
0わかりやすさとか特に意識した訳ではありませんがテーマは青春百合(強火)です
0ラフな書きに回帰されているみたいでいい ただ、タイトルは永遠なものにしたほうがよかったように私はおもう。
0愛に永遠性はあるのかということを考えたりなんかしました。
0作品を拝見させて頂きました。 『草を踏む足元 つぶれたいのちの むせかえるように満ちる 何事もなかったから』の部分、草を踏む時の小さな虫や草花を踏み潰している感じ、分かります。なんか少しの罪悪感みたいなものを感じますよね。でも、あまり考えても仕方ないと歩く様子が的確に表現されているなと思いました。 『誰でもいい訳じゃないのに たったひとりで立っていられるから たったふたりに耐えられない』の下り、たったふたりという言葉の使い方も流石だなと思いました。 色々な想像を掻き立てる良い詩をありがとうございました。
1あきらさんの作品は私には難解でありながらも「いのち」を思わせるテーマが多かったように思っています。 今回の詩は、語り手の登場人物への「想い」を読み取った気がします。 >誰でもいい訳じゃないのに ひとりで立っていられるから たったふたりに耐えられない 確立された自立、とまではいかない年頃のように思います。 でも。ふたりに耐えられない淋しさが そこに立ちのぼっていて、「おとな」になって行く語り手の孤独を感じました。 おとな、になってもふたりに耐えられない孤独感はどこか拭えませんが、それが他者を求めるという事であるのでしょう。 私には寂寥感を感じさせる詩でした。 ありがとうございました。
0きみの作品はよんどころないね、と言われたことがあります。生命というものそのものがもしかしたらそのような性質を持っているのかもしれません。
0>>どこへ行くの の問いかけが、過去の自分から未来の自分へのものでもあるように読めて、面白いと思いました。
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