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汚水の苔脅し
片耳が壊れてしまった、ワイヤレスイヤホンを垂らして、窓の外を見つめている視線の先には、両耳をイヤーマフで覆った羊さんがいて、影が覆われてしまうくらいの本を広げて読んでいた/蟹の茹で上がった温度がしたので、鍋の蓋をあけたら出汁の酢昆布だけがそこに張り付いていて、蒸発してしまいました/殻の投げ捨てられた塚の上には急勾配の滑り台が置いてあって、丘の麓ではさびだらけのジャングルジムが寂しく影を伸ばしていました/ジャイアンコーンをひと齧り、生臭い制服のポケットから、カエルの内臓が飛び出してきて、洗われたレモングラスの匂いがするお水を口に含み、ぺっぺっと吐き出したら、黒い血がアスファルトに散らばりました/散らばったガラスペンを口に含み、札束を吐き出します/落ち葉をかき集めたら、歯磨き粉で綺麗にしなきゃね、と簡単な朝の手順を進めていきます、寝癖を取り出して、ゴミ袋にまとめたら、焼却炉へもっていきましょうね/空っぽな三角形の小さな公園は、法律のために作られた第三公園、第三日曜日の、第三命日、何第毎日を繰り返して、何回お花を供えれば、と考えたところで答えてくれる存在などどこにもいないから/答えてくれる祈りなんてないから祈りを/と形だけの合掌を繰り返すのは誰?/過ぎ去ってから祈り尽くしても、まるで意味がないのにね 冷凍マグロの首が飛び出した冷凍庫、締め切ることのない冷気の儀式/砂場に建てられた即興の祭壇/仮止めされた鈴の矢/見せかけの神楽舞/片手落ちの手袋から蚯蚓が這い出てきて、井戸の中へ自分から落ちて行ったの/羊さんが糸電話を取り出して、鳴き声を言いました、鳴き声を解釈した窓口は、清らかな申請書を取り出して、ここにハンコを押すようにいいました、ハンコには名前が苗字がひつようでしたので、羊の印鑑を押して出したところ、気がついたら公園のベンチに座っていました/鍋の蓋を取り出して、一つ一つ床に並べていきます、可愛らしい音符を静かに水面を揺らさないようにそっと、口笛を鳴らしたら狼が現れて食い殺されてしまう事を知っているからだ、というのは建前で、狼が既に絶滅している事をしっているなら、本当に恐るべきはハゲたかの方で、死んでからつつかれる屍肉の方さ、 ガラスが割れた時のように、もぐもぐと歯並びを悪くした四つん這いのコバルト鉱石が、呪いを唱えています、あるいはこれがファンタジーであったらと、数珠を擦り合わせて祈り重ねても、程度の低いラップ音にしかならなかったし、ノイズキャンセリングイヤホンにとって聞こえない世界は意味がないよね、と笑った
汚水の苔脅し ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1778.9
お気に入り数: 0
投票数 : 2
ポイント数 : 2
作成日時 2020-12-07
コメント日時 2021-01-04
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 2 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
作者には、書きたいことがないのではないか、と思った。少なくとも今は。なんだか、「これもまあ詩だよな」「これもまあいけるか」という言葉をかき集めたような印象を受けてしまいました。感情や必然性でなく手先先行というか。私自身がそういう弱さに捕まることがあるので、そう見えただけかもしれません。見当外れだったら申し訳ありません。自己を変容しようとする格闘の産物であることは、間違いないと思います。
0田邊容さん レスありがとうございます。 そして、初めまして。 書きたいものなんてないなら、書かなければいいのに、というのは、なんだかんだ未だに僕の中に重くのしかかっている事柄です。これも書いている最中はその考えがちらついて、なんでこんなことを書いているんだろうと思ったことは事実で、そういったものが結局空っぽであることから這い出てきて現れてしまったのだろうなとレスを読んで思います。 そして、こういう創作を続けていく中で、手応えのあるものができたりできなかったりするんですが、結果的に言ってしまえば、僕は失敗を挟んで挟んで、少しだけ何かに近づいたような気がしたものができてまた遠ざかる事を繰り返しているだけだという感覚だけ残され、どうしようもないなという感じではあります。 ですので、田邊容さんからいただいたレスは僕個人の話で言えば的を得ているという所で否定できない感想ですね。 そして、ストレートにレスいただけるというのはやっぱ嬉しいなと思いました。 ありがとうございました。頑張ります。
1めちゃくちゃ好きです。 何が起きているのかまったくわからないんですが、 わからないなりに謎の物語が脳内で進行していって、 最後、なんだろう、本当に身近なあの感じ、 友達と喋っていて「あ、今わたし、何かを理解したな」とふと感じて成長するあの感じ、 あれを体験しました。
1意味がわからない言葉が連続して出てきますが 音がいいので読みすすめました。
0コメントありがとうございます。 好きと言って頂けてとてもうれしいです。 また、身近に感じていただけれた事がとてもうれしいです。語り口の所に注意して書いた物なので、その感覚が楽子さんに伝わったのであればよかったなと思います。あとは、体験という言葉が感想から出てきた所で、やっぱりぼくは読むという行為が体験になる(=ある程度の没頭感)を生み出してくれないと読んだ事にならないのかなと思っていて。その点楽子さんに届いたのであれば、とてもうれしいです。 本当にありがとうございました。
0レスありがとうございます。 こちらでは、初めましてですね。 音が良いと言ってくださったの、とてもうれしいです。何が書いてあるのか分からないくらい無茶クチャな内容を書くのであれば、その無茶の担保として音程度は整えて出したいなといつも思っています。その点田中さんの読みに対してこの作品が耐えてくれていたのであれば、とてもうれしいです。 ありがとうございました。
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