ひとがひとりであるために
かさねられた掌は
ひとつにさえなれない
疑うままに
空に爪を立てて
何者にもあれない
そして細胞はわかたれる
分化する生命
目的さえ見つけられず
ただ息する瞳
交差する一対の矢印
先にあるものも知れない
境界線という証明
溶け合うことを失い
ひとりはただ立ちつくす
川に足をひたして
感覚の先をさぐる
指の間を
冷たくめぐる実感が
ごつごつとゆれる
削れ合う川底の石
そこにあるだけに
摩耗してゆく
石を拾う
そのひとつは
かぎりなく孤独であるのに
ただ石と呼ばれる
アスファルトをゆく
無数の足跡も
ひとつさえ
省みられることはない
問う声を聞く
あなたはだあれ
たったひとりであるのに
答える声もたないまま
崩れゆく灰をただにぎりしめ
影の中佇む
束ねられた視線を
ささやきで編む
しっとりと濡れた
肉の塊は
認識を被り
たったひとりの誰かは
存在を得る
服を着る
ただひとであったからだが
言葉を得る
ひとりはひとり
ひとりはだれか
そしてだれかはわたしになる
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 1164.6
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作成日時 2020-11-19
コメント日時 2020-11-21
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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2024/11/21 23時40分01秒現在
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>そしてだれかはわたしになる ここ好きです。
1人としての、あるいは生命の、根元的な孤独感、そして、孤独であるが故の、個としてのアイデンティティーの確立ということが伝わってきます。 なお、もし違ったら申し訳ありませんが、第二連三行目の「何者にもあれない」は、「何者にもなれない」の誤りでしょうか。
1うれしいです。
0ありがとうございます。読んで頂けて嬉しいです。問題のポイントですが、正しくは「何者でもあれない」です。申し訳ないです……
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