冬のこない植物園に入れられて
ねえ ぺとと舐めれるくらいの
きれいな座面のトイレを
確保するのに初めは苦労したよ
ねえ結果 見出したのは
スタッフさんが午前中のいつのまにかに
ホースで水をジャーっとやった
その直後の水浸しのトイレを使うことだった
水浸しのほうが 汚れているよりも いいもんね
それなら何度もぺとと舐めれたよ
(時に舐めさせられたよー)
問題は清掃が午前中のいつなのかってことだった
僕が天窓を拭いているうちに済んでいて
すぐまたトイレは汚れてしまっていることだってあったから
僕らはたくさんいたからね
冬のない植物園は
ねえ冬のない動物園を兼ねていて
さまざまな形をした
爬虫類がいたよ
永遠に近い 丸いのと
(丸いのは尾を咥えているから球で らだむ)
次に命に近い 一本線のと
(一方通行で すろつろつ)
駆けて生き急ぐ 三角のと
(三角形のは げんぐりーげんぐる)
悟ったていの 四角形のと
(四角形のは ずっとずっと)
死との境界線に立ち続ける 五角形のと
(五角形のは む)
六角形の 僕の死んだあとの僕を守るやつとさ
(六角形のは みえなくなるみえなくなるー)
乾き千切れそうな背のひれが
サーキュレーターに吹かれていたっけ
ドームを形成する
八角形のガラス窓たちは全部自在式で
開けたり締めたり
逃げるつもりはなかったけど
開けたり締めたり
しすぎると
窓のそばに寄りすぎると
歌を唄わされたよ
反省の歌
/僕は逃げようとしましたー
地面や盛られた山は砂が凄くて
僕らの靴はすぐすり切れたんだ
穴があいたら朝早く起きて
そこを縫ったよ
縫うのがプロ級のやつもいて
代わりに飯につくヨーグルトを貰っていたよ
ヨーグルトは必ず植物園でとれたアロエ
が入っていたよ
アロエだけを欲しがる奴もいて
ぐちゃぐちゃにそれを食ってたさ
ねえ立ち止まると光る服を着せられていたので
ずっと動いていたよ
ねえもちろん寝る時以外のことだよ
乾いた砂が粉の吹いた多肉植物に
くっついていて目が覚めるように
夜半 それはぼんやり光ったよ
夜半 砂で舌が乾燥するので濡らしに行く
でも僕らに支給されたライトはスタッフのよりも弱いので
照らされて強いそれでよくぶたれたよ
そうぼんやり光った植物に僕は慰められはしなかったよ
ねえ僕 嫌いだった
名を呼ぶ母が懐かしかった
季節は秋で止まり冬は来ず
ある時どっと僕らが増えるので
それがいつのまにか来た春だと気付くんだよ
春は僕らが増えるんだよ
それからまたじょじょに減るんだよ
春には人以下のお客さんもたくさん来たよ
その人以下は言いました
わたしはあなたがすきなの
僕は言いました
じゃあここへ可愛い犬を連れてきてください
彼女は次の日来なかった
かわりに可愛い犬が一匹来た
犬は僕を見てとても嬉しそうだったっけ
犬はすぐに追い出されたよ
僕も追い出しに借り出されたよ
涙が涙が涙が止まらなかったんだけども
医務室で薬を目にさしてもらって治ったあと
全部ばれてて 今日も僕は反省の歌
/僕は人以下としゃべったー
あかぎれのした
パピルスを着た人以下の暴動について
話しましたか たくさんたくさん侵入されて
果肉や葉脈や とげとかげ が食べられていくんです
その景色は
無数の羽虫たちを興奮させます
換気取りの天窓が割られていきます
その光景を僕らずっとみんな待っていたんだ
植物園に
初めて冬が訪れます
石たちの威力!
雪の侵入!
肺を満たす針のかぜ!
こおり!
最古の植物たちの死が最後に待ってます
人以下の見世物になった
いつまでもの反省の僕らの歌
跡地で唄わされます
/そして僕(ら)は記録されながらー
/いつからか僕(ら)自身は忘れつつあるのですー
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 2278.8
お気に入り数: 1
投票数 : 6
ポイント数 : 0
作成日時 2020-10-25
コメント日時 2020-10-29
#現代詩
#縦書き
#受賞作
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
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可読性 | 0 | 0 |
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技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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2024/11/23 18時53分56秒現在
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よくわからないのですが、語り手は人ではなく虫でしょうか? でも語られるものは人から視た描きかたです。もし人以外のものから語ろうとするのならば、まるではじめてモノをみるような視点、描き方が必要だと感じます。
1人から見た様子です。植物園の中で話されている文章です。 この植物園がどういう類のものなのかはさておいて。
0すごく好きです。 終わるべきものたちが終わるべくして終わる。 終わるべきものを冬のない世界に閉じ込めてがんじがらめのルールで縛り付けて。 見世物にする。 自然のありさまを無視して必死になって保護していたものたちが、 最後、崩壊した植物園の中、自然の厳しさを受けて 「あるがまま」に死んでいく。 ラストの連、 怒りでもなく悲しみでもなく 常人…「植物園の外の我々」には理解不能の笑い声によって遠ざかっていく「植物園の中のものたち」。 ここに描かれているのは、植物と自然であり、 人間と社会であり、 そこを生き延びるということは やがて滅びることさえも素晴らしいのだというような強い世界への肯定に思えました。 いいえ、ただの皮肉なんでしょうか…。 私には、錆びてメッキが剥げてあかぎれた植物園の崩壊から 怒涛に押し寄せてくる現実(植物園)に打ち壊される夢たちが、とても美しく、楽し気に思えたのです。 …解釈はあってますでしょうか。 いいえ、あってなくても、私にとってとても特別な作品となりそうです。 良い詩とはそういうものだと思います。 (良い読者になれればよかったのですが、難しそうです!)
1はじめに、この詩を「すごく好き」と言ってくださり、ありがとうございます。 嬉しいです。 沢山の分量で書いていただいた感想、解釈、大変好ましく、感謝です。 ちゃんと自分の詩が届いた、という感覚があります。手応えと言いますか。 楽子さんのコメント全文、コピーして貼り直して、ここの解釈が嬉しい、こう言って貰えて感激、などとしてしまいたくなるのを必死でこらえて今、この文を書いています。 「良い読者になれればよかったのですが、難しそうです」 ↑いえいえ! とっても嬉しい読者さんです。ありがとうございます。
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