獣だったころがもうあんなに遠く
淡い水色をベースにピンクの薔薇柄の薄いカーテンが
夏の終わりの風に
パタパタ揺らめいていて ベージュのソファがあり
包帯
外の桜の木の緑が、盛りだけれど赤く燃え上がっていくのが
淡い瞼の、うすうい、虹色のスパンコールの
きらめきが満ちているような
沼のなかに滑り込めば 鱗になって皮膚に纏わりつき
あらゆるものを閉じて、血が止まるから
もっとつよく 太古の魚に変化する前に
脚を蹴ることができる
心底に辿り着き
町だ
春でもないのに蓮華の花が降って、落ちては消えていく
塩山を、繰りぬいて、部屋には蝋燭を灯している、盆地の町だ
星の街灯が立ち並んでいる
青い夕暮れになると、塩の結晶に橙の炎が反射して、窓や扉から光が漏れ出て
大広場ではチュチュを身にまとった若いバレリーナたちが五人
楽隊を後ろに
軽やかに トトトトトッ つま先で走り 高く飛び
着地に失敗し、骨折の音が響きわたる
バレリーナは体をおりこみ丸まって動かない
トゥ・シューズのリボンは
細い突風にほどけて何枚もにばらけて
やわらかに、お別れの船のリボンのように
絡まって
ほかの四人をくくっていく
四肢がそうっと
引き裂かれ 澄んだ塩になってぜんいん
崩れていった
美しい結晶 それぞれに名があった女たちも
いまはもう忘れられ
幾人かの町人が拍手を送った
たった一人の旅人は その幻惑の舞台に ため息をつき
瓶の琥珀色の液体を煽って それは 蜂蜜
町人は待ち人で、永遠に到着を待っていて
淡い薔薇柄の布を裸体に纏いながら
けだものが町を走り抜けて
あとには蜂蜜の空っぽの瓶がころがっている
作品データ
コメント数 : 6
P V 数 : 1899.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 4
作成日時 2020-09-10
コメント日時 2020-09-19
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 4 | 4 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 4 | 4 |
閲覧指数:1899.0
2024/11/23 19時03分00秒現在
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1連の構成がとても好みです。 具体的な情景の積み重ねによって描かれていく普遍的かつ実在的な情景と、その前に存在したと思われる時間。 そして >包帯 によって開始する、遊離。 >外の桜の木の緑が、盛りだけれど赤く燃え上がっていくのが 最後に、この行によって非現実への没入が始まる。 自然に世界観に入り込んでいけました。 後の詩行も大変好みでした。 非現実的な情景が与えれてくれる浮遊感を心地よく感じました。
2コメントくださり、ありがとう、ございます。 あまり、むつかしいことばで、語られなくてよくて、ただただ、きれいで、さみしくて、そこにずうっといたくなる世界を、作りたかったです。 だから、コメントが、とても嬉しかったです。
0コメントくださり、ありがとう、ございます。 包帯から、遊離がはじまっている。自分で書いてて、気づきませんでした。 一緒にこの世界で、ふわふわしてくださって、とても、うれしいです。 御作も拝見して、すごくすてきで、コメントしたくなりましたが、過去の作品で、コメントできないみたいです。いつか、必ず、新しい作品に、コメントしにいきます。
2イメージが豊かというか色彩豊かというか。魅せられる一作です。 包帯、リボン、薔薇柄の布が気になりました。包帯から遊離すると書かれたコメントがありましたが。巻かれた包帯から町の描写ではそれがばらけて他の四人(自分のなかの多様な面なのだろうか)をくくる、そして薔薇柄の布は裸体にまとっている。もう縛られないような自由さをけだものに感じました。塩と蜂蜜、なんだか塩スィーツを食べながら書いているようでもあって、いや、そんなわけないか。僕はよく食べたり料理しているときにそれがそのまま作品になるのでふと思いましたが。なんにしても良い詩だなぁと堪能させて頂きました
1いかいかさんへ。 きちんとした、ご指摘、ありがとうございました。 消えているようなので、さきに、返信させていただきます。 なんとなく選んだカタカナでした。 日本語で書いたほうがいいな、と、実感しました。 それから、どうしてもカタカナをおかなければ、いけないところは、(スパンコールは、スパンコールみたいで、でも、スパングルとも、言うようです)ことばの響きを、意識しなきゃと思いました。 淡い水色をベースにピンクの薔薇柄の薄いカーテンが → 淡い水色を地に、薄くれないの薔薇柄の薄いカーテンが 淡い瞼の、うすうい、虹色のスパンコールの → 淡い瞼の、うすうい、光を反射する虹色の、スパングルの の、ほうが、きれいかな。 あ、淡い、が、短い作品の中に、かぶっている。 言葉を、選びぬかなければ、なりませんね。 アドバイスいただいて、ありがとう、ございました。 いっこいっこ、ことばを、大事にしていきます。
0わあ、お褒めの言葉、ありがとうございます。とっても、うれしい、です。 四人、というのがなんなんだろーって、自分で、思っていたんですけど、コメントいただいて考え直したら、よにんじゃなくて、しにんで、じぶんのなかの死人を、殺して、清らかな塩に、してあげたのかもしれません。 そういえば、さいきん、ワックスのかかってないレモンが安く売ってて、おおきい蜂蜜を買って、はちみつレモンを作って、それをを飲みながら、書いたので、だから、蜂蜜なのかな? と、思いました。 いろいろありますけど、空想力だけは、とおくまで、駆けぬけていきたいですね。
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