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What's Your Name?
いつまでも、買ったばかりのタオルみたいに 世界に馴染めなかったので 入道雲のようにふくらむ巣に上り きみは変化することにした 舌と目に全面協力を仰ぎ 耳と指先と、入念な打ち合わせを行って 空に浮かんだ巣の中で まったくあたらしいものに化けたきみは その後もたびたび会議を催した 舌が音の偏りを指摘して 目がバランスを調整して 幾度となく脱皮を繰り返す 地上から伸びた蔦が いつのまにか絡みつき、巣に穴を開ける 風が吹けば巣はたやすく煽られて たよりなくゆらゆらと揺れる 世界に弾かれる恐怖から きみは必死に巣にしがみついて 次々と姿を変えていった 何度変化したかわからなくなったころ ふと見下ろした地上に 脱ぎ捨てられたうろこが見えた 散らばって、きらきらと光っていた きみはおそるおそる地に下りた 世界は変わっていなかったし 弾き出されることもなかった そうして、きみは最後の羽化をした 拾い集めたうろこが肌を切り裂き 血の涙が地面を濡らしながらも 両足をしっかり地に付けて いつでも飛んでいけるようになった空を 今はただ、じっと見上げて かつて捨てたはずのものを握りしめて、離さずに
What's Your Name? ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1135.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2020-08-25
コメント日時 2020-08-29
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
自分が嫌で変わらなきゃと焦っていたときのことを思い出しました。人間のこの社会に馴染めなくてそれでも変わろうと思って少しずつ、自分が分からなくなって。最後、捨てたものを握りしめて離さなかったのは過去の自分を忘れないようにするためだったのでしょうか。過去の自分の重なるようなそんな懐かしくて切ない詩でした。
1コメントありがとうございます! 世界との折り合いをうまくつけられず、傷つく人ってけっこうたくさんいるように思うのです。すすんで傷つきに行く必要はないですが、負った傷が自分を自分たらしめることもあるのではないかな、と。
0内容的には合わない部分もあるとはいえ、蝉の羽化が念頭にあったのだろうかと思いました。空に浮かんだ巣の中では、鳥かもしれないし、会議を催したの箇所から化けると言う事が、社会での栄達を表わしているのかもしれないと思いました。最期の羽化が比喩ではなくて文字通りの本当の羽化。蝉だの、蝶だののそれが感じられ、絵画的な感じがしました。
1ありがとうございます。絵画的というお言葉、嬉しいです。最後の羽化は比喩ではありますが、それまでとは違ってある意味「本当の羽化」です。社会的な栄達についてもそうですね。表向きの姿を何度変えても、望む姿に成れるかは分からない。
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