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遺構の見せる夢
遺構の見せる夢 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2521.1
お気に入り数: 0
投票数 : 5
ポイント数 : 6
作成日時 2020-05-09
コメント日時 2020-06-05
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 1 |
エンタメ | 3 | 1 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 6 | 3 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0.5 | 0.5 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 1.5 | 1.5 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 3 | 3 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
- 廃墟の見る夢への誘い (ほば)
身近にあるもので一番遠いものを描いてみたくて、この作品を書きました。 調べてみると、このダストシュートは35年ほど前に作られたもので、少なくとも直近2年間は使われているところを見たことがありません。とはいえ、目張りされている様子もないのでとても気になるのです。ちょっと怖いけれど。
0惜しい作品と評価します。 まず、個人的に良いと思える部分から入りますと、そもそもの世界観がかなり魅力的です。 白いタイルの中、扉が一点映るのみ。意味深な忠告文をそっちのけで、開けると暗闇と謎の墓場。現実に舞い戻ったかのように歯磨き、という行動が差し込まれる。作中世界自体が詩として表現するしかない未知なる世界であり、これでもか!と未知なるものを未知なるままに表現している作品に思えます。 また、そういった非現実の世界と対比するかのように、主人公の行動や感情が「無言の現実」を知らしめてくれています。無言の現実といいますのも、具体的にこう感じた、などの描写は「薄ら寒い」の一点に集約されており、ゆえに他の行動に対しては読者が感情を想像するしかありません。無言で扉を開けるし、無言で閉めて歯磨きをする。このような行動のひとつひとつが、より一層作中世界の意味不明な感触を押し上げていると考えます。 * 個人的な読解に入りますと、まず、扉やその中身自体は読み解く類のものではなく、作中世界の現実そのものであると考えられます。であるならば、想像すべきは主人公の行動と感情です。まず、主人公は違和感をバッチバチに感じつつも、ついつい扉を解放してしまいます。これは単純明快に、好奇心であろうと想像できます。しかし、解放した瞬間「腐る思い」が漂う「墓場」を目の当たりにします。それは誰かの墓でもあるのだろうし、誰かが行き場のない感情を捨てたたまり場のようなものなのでしょう。 主人公は歯磨きをします。どういうことかを想像するのは容易で、「腐る思い」が「口から出たもの」だと考えるならば、私はそこへ再び向かわないよう、そしてそういった感情が口からはみ出してこないよう、衝動的に歯磨きという行為へ向かわせたのだと考えられます。しかし、最終的に主人公が扉へ視点が向かっている点、そもそも歯磨きをせざるを得なかった点より、主人公にも「腐る思い」が内在していて、最後までその扉に心が引っ掛かっているのだと推測できるのです。 * 本作の内容自体がかなり魅力的でありながら、文中の表現や視点描写がそれを殺してしまっているような印象を受けます。 ①扉が中心の話であり、扉に意識が持っていかれていながら、扉の色が描かれていない。色が描かれていないが「鈍い光」が描写されているので、鈍い光を放つ扉の実像が曖昧である点が非常に引っ掛かる。 ②「赤いランプ」という明らかに注目して然るべき注意書きがなされていながら、主人公は赤いランプに一切の注意を払わない。 ③扉の向こう側を覗けば「腐る思いを受けとめる」墓場であることが伝わってくるにも関わらず、「投入されるものなどなにも無く」と「何も投入されていない」ような描写を行っている点に違和感を感じる。「投入するものなど・・・・」ではないのか、と考える。 以上の違和感は小さいものではありますが、積み重なって作中世界への導入を妨げているように感じます。無論、扉の向こう側を描き、それを受けた主人公を描くのが本作の最重要事項であるとは考えますが、他の細かい点を詰めていくことで、それらをより一層克明に描けると考えます。
1お読みくださりありがとうございます。小さな扉を挟んで見る、束の間の夢を書き留めることができてよかったなと思っています。
0お読みくださりありがとうございます。歯磨きをしている主人公がほんのひと時見る白日夢を淡々と書いてみたいと思いました。 鈍色の扉は白いタイルの壁(現実の世界)とダストシュートの内部の闇(虚構の世界)の境界で、実際には開かれていないのです。
0詳細な点までお読みくださりありがとうございます。歯磨きについて言及される方が多かったのですが、その中でもふじりゅうさんの読解が一番興味深かったです。 さて、後半に列挙された点について少しお答えしたいと思います。 ①扉は鈍い光を放つ金属製です。取っ手と同じ色ですので、省きました。 ②赤いランプに主人公が一切の注意を払わなかったのは何故か、もう一度注意書きを読んでみてください。ランプは点灯していないからです。ですから扉を開けてしまうのです(実際には開けていないのですが)。 ③本作品で描いた扉の向こう、つまり縦穴とは「遺構」であるダストシュートです。高層ビルの各階にある扉からはかつてゴミが投入されていた時代があったのでしょう。そして現在その扉の前で歯磨きしている人々の中で、そんなことを空想しているのはこの主人公だけなのです。 違和感を感じつつも、作品世界に魅力を感じてくださったことを嬉しく思います。
1これはほどよい距離感で書かれていますね。出てくるダストシュートらしきものが最後には夢のなかでの出来事であったかのような流れで描かれていますが、読後に感じるのはその遺構の忘れられた装置に自分も組み込まれたかのような不思議な空気が作品全体を包み込むようです。書き手の感傷ではなく確かにそこにある物と主体を繋いで世界を創り出しているところが好ましい作品です
1お読みくださりありがとうございます。 前回投稿作に寄せられたコメントで距離感についてのご指摘がありまして、わからないなりに試してみました。 ダストシュートの概要についてある程度調べてから書き始めましたが、実際に内部を覗いたわけではないので、読者にどの程度イメージを伝えるべきなのか悩みました。世界観を共有できたのならば、嬉しいですね。
0あれれ、コメント入れてなかったんだ、この作品。と、ちょっと驚いたうっかり八兵衛。 よいですね。「薄ら寒い」という語り手の心が動きだすところ、それまで淡々としていた言葉が、ここから動きはじめる、それを感じます。その先に《ひっそりと静まり返って》いるもの。そこは現在はなにもないのだけど、現在はなにもないものが〈ある〉ということを語っている。虚ろであることを書くことがそこに充満するものを(幻想として)露わにする時、そこには遺構が現前するように思う。良いです。
13週間ほど流れたまま忘れられてしまっていたようでしたが、貴方様に見つけて頂けてとても嬉しい思いでいっぱいです。 扉が押し留めているもの、またその内側に満ち満ちているものに、お気づきになったのですね……これで7人目でしょうか (遺構より)
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