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きれいな爪をしているから,いまはまだだいじょうぶ
吐いたあとの顔は のっぺりと半透明に青白くて 死んでいるみたいに生きているから フィクションみたいで うつくしい、と感じるだって 揺れる視界で 鏡だけは本当のことを映している と、信じたくなる午前二時 眠れないままに眠らない夜の理由は 昨日見た陳腐に怖いテレビのせいだとか 不意打ちに目に飛び込んでくる不幸の手紙とか それと、 塾の帰りに見た人食い熊のサイト 生きたまま頭から食べられるなんて 想像できないから たんたんと連なる文字が怖い たすけて、やめて、って 叫んでも熊には通じないしね そんなの 想像できないから じわじわと広がる想像が怖い こわい、の わたしは わたしの想像に 呑みこまれて眠れない ビビットレッドのマニキュアを塗ると どこまでが切っていい爪で どこからが切ると赤い血が出る爪なのか 見分けがつかないから困ってしまう の、でもね おかげで爪はきれいなまま 人工的で毒々しくも健康的だ から、 だいじょうぶ いまはまだ、爪はきれいだし 眠れない夜にも 鏡をのぞいてみればそこには ヨーグルト味のげぼを吐いて も、きちんと想像できる現実を 死んでいるみたいに生きているわたしが そこにいる そこにたしかにいる から、いまはまだだいじょうぶ
きれいな爪をしているから,いまはまだだいじょうぶ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1174.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-07-19
コメント日時 2017-08-21
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
自分の感じていることを丁寧に言語化しようとする態度が感じられて好印象です。想像でしかないのですが、作者は本当に十代の高校生なのではないかと思わされました。主題そのものは「不安のなかで生きていく主体」というありふれたものですが、そういうありふれた主題を丁寧に書いていくことを私は肯定したいと考えています。特別良い作品とも感じませんが、書き続けてほしいと思いました。
0言葉の連なりが、静かに歌うような感じで、綺麗な流れになっているな、と思いました。 〈感じるだって〉ここは、通常なら〈感じる、だって〉とか、〈感じる/だって〉と読点や空白、改行などを入れるところだろうな、と思ったのですが・・・一息に言い切ろうとするリズムの尊重なのか、あるいは、〈青白くて〉〈みたいで〉〈視界で〉といった語尾と脚韻を踏ませるような、そんな口ずさむ感じの心地よさを求めているのか・・・いずれにせよ、こうした細かな整え方が、全体に音の響きの心地よさを与えているのかな、と思いました。 なんども繰り返して吐いてしまう、それは実際に吐く、という行為であると共に、いやな物とか言葉とか、様々なものを吐露する苦しみでもあろうと思います。生きながら死んでいる、のではなく、死んでいるように生きている・・・その自分を、客観的に見つめ直す視点から描かれている。自分、から少し離れたところから自分を見つめることができる。そこに、詩を創作する主体、自身の喜びも苦悩も、客観化できる(突き放して視ることのできる)主体が生まれようとしている。 赤く塗った爪、どこまで切りつめて行けば、血が出るのか・・・という、ちょっとドキドキ、ハラハラするような感覚も含めて・・・自分自身をどこまで突き詰めて行ったら、血が出るのだろう、そんな、自分自身を観察してみよう、というような視点も感じました。 なにか不穏なものに飲み込まれてしまいそう、という〈わたし〉を、外から眺めることができる、そんな〈わたし〉が居て、言葉を投げ出すのではなく、丁寧に響きや行替えなどを整えて行こうとする意識を働かせることができる。 そんな〈わたし〉が 〈そこにいる そこにたしかにいる から、いまはまだだいじょうぶ〉 私もそう、思います。
0僕が好きな作風っていうよりは、あんまり見過ごせない作風であると、失礼かもしれませんがそう思いました。 単純に、僕も書いてある事と同じ思いになり、こういう書き方を、よく作品の中でする事があるのです。それはパクリとかそういう事を言ってるのではなくて、単純に僕が書いている事よりも上手いと思ってしまいました。僕はそういう意味で、本作の書き方が好きだし、同時に上手いので憎たらしさを感じます。特に改行によって後付けを巧みに植え付けていくところ。完備さんもコメントされていると思いますが、そこに丁寧さを感じます。 僕が、kikunaeさんの作品を幾つか読んできてみて、今一番思うのはとにかく作品が丁寧である事。その丁寧さが、僕の中に綺麗な解釈を生み出させてくる事です。表現の華みたいなところになると、僕は上手く説明をつけられないのですが、それ以上に読み手にとって優しい表現である所に好感を持ちます。こういう事をいうと、上から物を申しているようになってしまうのですが、感じた事を正直に言えばこのようなレスになってしまいます。とても捻れた言い方になってしまって申し訳ないのですが、僕が本作や本作以外の作品を読んで感じる魅力をちょっと広げてかかかせて頂きました。
0いつも丁寧な読解とコメントありがとうございます。 完備さん 特別な作品になれるように、独特で頭に残るような一文を詩の中に作れるように今後意識したいです。 まりもさん 他の方に、だいじょうぶじゃないとつたわりました、と言われたことがあったので、読む人によって大丈夫・大丈夫じゃないの伝わり方が違っておもしろい発見となりました。 百均さん 丁寧な読解と解説ありがとうございます。今持っている自分の良さを教えてもらえてとても勉強になります。丁寧なだけでは足りないので、丁寧の中に破綻した文章やずらした文章とかもっと印象に残るような文章も織り交ぜていけるようにしていきたいと目標がたちました。 ここ一カ月ほどばたばたと忙しく、返信がだいぶ遅くなりすいません。
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