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蝿
思い出って、止まっているから、うれしくて そのなかを、一匹の小さな蝿が、飛んでいる 降り注ぐ光に、埃が舞って、星のようだった 人も、猫も、町も、車も、木も、雲でさえも 動いているから、この世界は、おそろしくて 項垂れたわたしの肩には、蝿が止まっていて その蝿の身体にも、小さな心臓が動いていて その心音、が聞こえる 遠くの時報のように そのように思うのは、罪を犯しすぎたためで ぶつかると痛くて、そこに体があると知った そして、徐々に孤独を欲しがるようになった もう眠たくないね 体はとても健康で、ただ 心臓がポンプする 間違ったやり方で、ただ そこにいるだけで、無垢 そうだと分かって わたしは明日も部屋を出られず、うずくまる わたしは部屋で一匹の小さな蝿を殺し、眠る
蝿 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1724.8
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 24
作成日時 2020-02-23
コメント日時 2020-03-04
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 9 | 9 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 4 | 4 |
音韻 | 5 | 5 |
構成 | 5 | 5 |
総合ポイント | 24 | 24 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1.3 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.1 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0.6 | 0 |
音韻 | 0.7 | 0 |
構成 | 0.7 | 1 |
総合 | 3.4 | 3 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
「そのなかを、一匹の小さな蝿が、飛んでいる/降り注ぐ光に、埃が舞って、星のようだった」で追憶の美しさと古さ/遠さ/腐敗が同時に表現されており、引き込まれました。その上で部屋の中でうずくまる自分と、止まった記憶の中で動く蝿と肩に止まった蝿が、心臓の鼓動によりリンクし、過去と現在と蝿と自分が重なる。重なりながらも体がぶつかることで「他者と自己との境界の痛み」を知りますが、それに耐えられず蝿を殺してしまうことで、外との繋がりを絶つと同時に、時間を止めてしまう「わたし。」 時が流れることの苦痛、自他の境界の痛みを、重なり合うシンボルで表現した秀逸な作品だと思います!
>>たもつさん ありがとうございます。自分ではもう読み返しすぎて良いのか悪いのか分からなくなったので投稿してしまいました。
0>>arielさん ありがとうございます。的確な読みだと思います。昔、人間がどのように自分自身やそれに対する外界という概念を獲得するのか考えていたことがあって、おそらく衝突を繰り返すことで自分の領域が確定していくのだろうなと思い、そのモチーフをいつか詩に使ってみたいとおもっていました。 その、ぶつかって初めて自分がそこに或ることを知るというモチーフに、以前から温めていて書きたかった、全てが止まっている世界で飛んでいる蝿という光景を接続して書いたのがこの作品です
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