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恋歌
腐りゆく君の死体へ。かつては美しかった陶器の如き腕が、雌鹿のような足が、白く滑らかな首が、今や蛆と蠅に塗れ、甘い腐臭を放ち崩れている。 嘆く人もあったろう。愛した人もあったろう。しかし、もはや打ち捨てられ土に還るのを待つ醜い肉塊でしかない。 しかし、今の君の姿が、これまでで一番愛しく、美しく思えるのは何故なのか。饐えた匂いが、これまで君がつけてきたどんな香水より芳しいのは何故なのか。 ここにあるのは君の人生の結果だ。この薄暗い森の中で朽ちゆく君こそが、君を物語るのだ。君がこんな姿になったことが、なによりも愛しいのだ。 今なら僕は、純粋な愛をもって君に口づけを出来る気がする。
恋歌 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2020.2
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 18
作成日時 2020-02-04
コメント日時 2020-02-07
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 4 | 4 |
前衛性 | 1 | 1 |
可読性 | 3 | 3 |
エンタメ | 3 | 3 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 3 | 3 |
総合ポイント | 18 | 18 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0.3 | 0 |
可読性 | 0.8 | 0 |
エンタメ | 0.8 | 0.5 |
技巧 | 0.8 | 0 |
音韻 | 0.3 | 0 |
構成 | 0.8 | 0.5 |
総合 | 4.5 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
むちゃくちゃっすね。このむちゃくちゃな主人公の感じ、私はとても好みです。 明らかに狂気なんですが、狂気を書く際に「ほら、狂ってるだろう?」みたいな筆者の声が少しでも感じ取れてしまうと冷めるというか、二流だと感じます。その点で本作は非常に優れており、主人公は(なぜだ)と感じつつも「狂気」とまでは思っていない、つまり(俺、実はドMなんだよね)くらいのテンションで論理的に淡々と詩が進んでいく様がたまらないです。
いい香り 腐りゆくきみ いとおしい ひなまつりイベント俳句
0おはようございます。蛆や蠅が登場するところは良かったと思います。どんな美しいものも死の前ではひれ伏す以外になく、一般には忌み嫌われている蛆や蠅などによって食い散らされ解体されて、最終的に〈自然ー宇宙〉の運動に回収されます。その意味では蛆や蠅は〈死〉への媒介役を果たしている。死体は見る限り醜く悍ましいものですが、それは私たちの存在というものが〈死〉という抗いようのない〈自然ー宇宙〉の運動の内部にあるということを認めざるを得ないことへのショックも含んでいるでしょう。逆に言えば、だからこそ見る影もない醜さは世に生きて在ったことの証であり美しい。死体の醜さにもう少しこだわってほしかったなという印象でした。
0こんにちは。 何度も読み返してからの感想なのですが、まず異国での事柄なのかな?と思いました。土葬って日本ではポピュラーではないような気がしたので。 後は〝僕〟は彼女に最後に選ばれた男性ではなく、若い時の美しい彼女しか知らず、亡くなってから再会した、いわゆる「過去の男性」ではないかとも私は感じました。 〝僕〟の彼女への狂おしい程の愛と憎しみが、建前は死体を盾にした、本音は腐臭とか朽ちたとか、「他の男性を選んで汚い・汚らわしい」感情すら汲み取れる。そんな気がします。 〈ここにあるのは君の人生の結果だ。この薄暗い森の中で朽ちゆく君こそが、君を物語るのだ。君がこんな姿になったことが、なによりも愛しいのだ。 この文章が、まさに私には憎悪の塊に感じました。愛したけど報われず、狂気に満ちた愛を正当化する〝僕〟すら薄気味悪く感じます。 「最期はこんなに酷く醜い女でも、僕ならキスできるかもね!だってずっと彼女だけを愛していたからね。 君は違ったけど・・・。」 って皮肉さえ感じるような一文に、背筋が凍てつくような歪んだ愛を感じたような気がしました。 全て憶測かつ、主観的ですので、違いましたら失礼しました。 かつての昼ドラ並にどろどろしている作品だとも勝手に思った次第です。
1小野小町九相図の現代版のようですね。 でも、九相図は体の執着をなくすためのものだから、違うか。 となると死体牧場(アメリカやオーストラリア等にある、死体を放置しその様子を科学的に観察する場所)の様子か。 それに見入ってしまった人の感情かもしれませんね。 死体を淡々と観察し、ある種の愛情をもっている様は、なかなかいいです。
0私死に あなた生きてる ねえ触れて ひなまつりイベント俳句
0ふじりゅう さん コメントありがとうございます。過去作を見て貰えば分かると思うのですが、「狂気」というのを一つの軸にして書いているので、そう言って頂けると幸いです。
0つつみ さん コメントありがとうございます。
0藤 一紀 さん コメントありがとうございます。なるほど、そう言った見方も出来るのですね。死体の表現に関してもありがとうございます。
0mimi さん コメントありがとうございます。国としては特に考えてはいません。葬儀が行われた後、というよりは、「君」が何らかの理由で(ここに関してはぼかしておきます、読み手の皆さんの自由ということで)森か山かの何処かで亡くなった後、語り手が死体を見つけたか見に来たかした場面を想像してもらえるといいです。
0羽田恭 さん コメントありがとうございます。死体牧場!そんなものが有るのですね。確かに、九相図とは少しずれますね。
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