落雁 - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

ことば

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落雁    

 沈黙は誰にも   明け渡してはならない 砂にまみれた 小手すら舟虫の子らがしゃぶり 私もとうとう海となるのだ 雨の濁りに髪はこわばり 濡れた藤壺 打ち上げられた浮標の    沈黙 打ち捨てられたドラム缶に詰まってる 私はそれを 信頼と呼んでる   * 仮のおふくろの作る、飯は美味い 雨どい伝う竈のあくびに 目はつむられ 猫の咀嚼を無心に 数える     こくろ。  こくろ。 木遣りの声に聴き入る年の瀬 欠けた茶碗のすくい取る酒 素足を削いで、桟橋にもたれる あんたは海だ 誰もが知ってる



落雁 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 15
P V 数 : 4142.9
お気に入り数: 1
投票数   : 0
ポイント数 : 45

作成日時 2020-02-04
コメント日時 2020-03-09
#テキスト #画像 #受賞作
項目全期間(2025/04/06現在)投稿後10日間
叙情性188
前衛性00
可読性83
エンタメ00
技巧94
音韻20
構成84
総合ポイント4519
 平均値  中央値 
叙情性3.64
前衛性00
可読性1.62
 エンタメ00
技巧1.82
音韻0.40
構成1.61
総合910
閲覧指数:4142.9
2025/04/06 12時29分40秒現在
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    作品に書かれた推薦文

落雁 コメントセクション

コメント数(15)
stereotype2085
(2020-02-05)

まず書き出しの「沈黙は誰にも 明け渡してはならない」で虜にされました。 沈黙。孤独や、人と触れ合わないことを好む人物の最後の砦を誰にも触れられないようにする、という話者の強く、仄かな光さえ感じさせる描き方。この一節で読み手を詩に惹き込むには充分でしょう。 「仮のおふくろの作る、飯は美味い」 「猫の咀嚼を無心に 数える」 などの描写は、茫漠とした孤立感、足場の弱い、だが決して誰にも打ち壊せない「一人の居場所」を感じさせる。それが思考なのか、イメージなのか、心象風景なのか分からないが、不穏でいながら確かな安定感を読み手に与える。 最終節の 「あんたは海だ 誰もが知ってる」 ここで頑なに守られていた「一人の居場所」が全ての人に向けて開かれる。人を迎える門戸が広いことを初めて読み手に知らされる印象。 この詩は「一人の居場所」について、決して大げさな描写はなくとも、孤独感と海を対比させ、また並べつつ描いた、壮大な抒情詩かと。傑作の部類に入ると思います。

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斉藤木馬
(2020-02-06)

stereotype2085様 丁寧に読み解いていただけたことに感謝いたします。今作は朗読で披露しているものです。あらためてテキストとしてご意見をうかがいたく投稿しました。 喧騒から遠く逃れ、静けさの中で耳にする波音や生活音。私は少々耳が弱いので余計にロマンめいたものが宿るのかもしれません。日々のせいかつの切れ端を紡ぎ、練り上げていく。そんな詩を書きたいと常々思っています。

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ミリウェイズ
(2020-02-06)

稚拙なコメントになってしまいますが、全体的に静けさを感じる詩でありながら、確かな息遣いとでも言えるものが感じられます。

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斉藤木馬
(2020-02-06)

AB様 詩篇を紹介してくださりありがとうございます。 海はどこまでもつながっていますね。それだけで救われた気になってしまうことがあります。

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斉藤木馬
(2020-02-06)

ミリウェイズ様 コメントありがとうございます。 せいかつの温もりを感じていただければ嬉しく思います。

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るる
(2020-02-11)

我は海  木遣り遠のく      年の瀬に 僭越ながら、五七五で句のようなものを書かせていただく失礼をお許しください。 (雛祭イベントで、五七五調でコメントしてます。) https://www.breview.org/forum_blog/archives/668 「私もとうとう海となるのだ 」といフレーズを 真清水が海となる境涯の来る日を想像し、この詩文に想いを重ねさせていただきました。  お写真も詩文も スルメのように噛めば噛むほど味わいがありました。潮の匂いまで感じてしまったほどです。これは、海に生息する小さな生き物も 真摯な目で掬いとるように描写しておられるせいかもしれません。   こくろ。  こくろ。 ↑さりげなく置かれている このオノマトペ (と、呼んで良いかわかりませんが)も秀逸です。波音に包み込まれているかのような気持ちにもさせていただきました。 海に何度も訪れたくなるように、この詩も 何度 拝読しても別の心をいただける予感がいたします。この作品に出会うことができて、私は とても 幸せです。ありがとうございます。

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斉藤木馬
(2020-02-12)

真清水るる様 勿体ないお言葉をありがとうございます。 こちらは本来縦書きを想定しており、投稿もしばらく見送っていました。「こくろ。」も縦書きになるとまたイメージが変わるかもしれません。 本作は心情を語らずして描こうと、空気感を切り取るような情景描写を心掛けたつもりです。もし再読に耐えうるのならば、そのような試みが功を奏しているのではないかと自分なりに分析してみます。

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楽子
楽子
(2020-02-16)

ううん、かっこいい。 こういう硬めの文体って筆者の実力が足りないと気取ったラノベみたいになるんですよね。 で、実力があっても硬すぎると面白味がなくて人の目に留まらないし。 他表現の秀逸さもさることながら「こくろ。」でハードな世界観を壊すことなく一気に面白い詩になっていると思いました。

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斉藤木馬
(2020-02-17)

楽子様 コメントありがとうございます。 「こくろ。」は実際に削ったものも検討したのですが、やはり崩しが足らず物足りませんでした。そのあたりの間のようなものは、近ごろ精を出しております朗読活動の経験が生きているのではないかと思います。

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千才森 万葉
千才森 万葉
作品へ
(2020-03-01)

> 沈黙は誰にも    明け渡してはならない この言葉が強いですね~。冒頭に持ってこれるのは強い。 >あんたは海だ  誰もが知ってる ここも好きです。 内容の全てを理解することは出来なかったんですけど、最初と最後を受け取ることができたなら、詩を受け取れた気分になれるのが面白かったです。すごく素敵な雰囲気を味わうことが出来ました。 ドラム缶に心を預け、一人手酌で飲む酒は、波に小波に酔わされて、眩む海原問いかけられて、年の瀬の音響く中、静かに静かに腑に落ちる。とか。

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斉藤木馬
作品へ
(2020-03-06)

0
斉藤木馬
作品へ
(2020-03-06)

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斉藤木馬
千才森 万葉さんへ
(2020-03-09)

千才森 万葉さま コメントありがとうございました。 冒頭は意識して置きました。心情を排していかに心情を語るか。そういうものを書きたいと思っています。拙作を味わっていただけたことに感謝致します。

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斉藤木馬
さんへ
(2020-03-09)

クヮン・アイ・ユウさま コメントありがとうございます。 「呼んでる」「詰まってる」等の口語の使い分けは意識しています。そのあたりは朗読を聴いていただけると顕著だと思うのでいつかぜひ(本作は朗読で披露していたものです)。 作(中話)者にとっての海、とはいったい何なのだろう。と他人事のように思わされています。

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湯煙
作品へ
(2020-03-11)

漁村の風景でしょうか。斜めに傾き切り取られた構図による深度の深い空と海光と浜と一槽の舟と。風情が感じられました。

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投稿作品数: 3