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death
私はなにより、あなたに体温のあることが好きだった。 その命に価値はないよ。肉体の朽ちていく様に哀愁はない。 ただ、そこに体温のあることだけが、私のあなたを好む所以なのだ。 政治は腐敗して国が敗れても、なんと言うこともなく、私達は生きていける。悲しみと怒りの境界に項垂れたことは何の意味もなさずあなたの中で死んでいく。 草木は土へ還る。でも、あなたには行き着く先さえないのだ。 夜の帳がおりてくる。布団の中であなたの体温が膨張する。あなたが私を包み込んで、私にあなたが満ち満ちる。 あなたの死にはなんの意味もない。 ただ、肉体の冷えていく。体温の薄れて、私の中であなたの意義が死んでいく。あなたの価値はたったそれだけ。その体温以外にあなたの価値となりうる何たるかなんて存在しない。どうか自分の価値を見誤らないで。 壊れるように、散っていく。 桜は、周囲を見定めたように花を落とした。 満開の桜を、今年も私は見なかった。 桜の下で、酒を飲んだ。 覚えているのはあなたの体温。 あなたもきっと、満開の桜を見ていない。
death ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 971.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-05-09
コメント日時 2017-05-18
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
これは私的には物凄く同意してしまう詩で、何もつけ加えたり解説する必要を感じないです。 あなたが死のうがどうしようが、私には関係ない。その体温だけに意義がある。 異議なしです。うーん、自己中なんですかね、私。 クヮンさんの詩でもそうでしたが、ここでも「桜」と言う花はネガティブな意味合いで詠われていますね・・・。時代っつうもんが、ソメイヨシノに感傷を持たせることを、もう意味無くしているんでしょうか? 全体に、国の終焉を冷徹に見ている視線もありますねぇ。コンプリートです。
0朝顔さん、ありがとうございます。 私、花見をするたびに思うのですが、花の下に座っても花は見えないんですよね。これってもう花に価値を感じてなくて、形骸化してるわけです。そこに恋とおんなじものを感じてしまうんです。なくした時に感じる感情が、見ていない花にふと気づいた時みたいな風で。寂しいけれど、それがあの人なんだな、と。 花緒さん、ありがとうございます! たぶん今の私が鑑賞に浸れないせいだと思います。散文すごく好きなので嬉しいです!!
0個人的な要素としての体温。その体温をコントラスト付けとして政治を置く。最終の「あなたもきっと、満開の桜をみていない。」の「あなたも」。「あなたは」ではない。語り手も満開の桜をみていないのだ。これは、「国敗れて山河あり」をメタファーとして持たれている作品なのではないでしょうか。満開の桜が観れていればまだよいけれども、満開の桜も観れないほどに国が敗れてしまうかもしれない、政治への警鐘。 こころんさん、投稿有難う御座います。
0死に面したときにおいては、その生を代表する体温のみに価値があるということを、感じたのだということなのでしょうか。 社会や国という共同体に回収されない死が、体温の喪失である。人の価値を、言い張ったり、高く掲げたりすることを、 やめること、そんなことこそ、本当の死者への弔いである、と言っていらっしゃるのではないかと思います。 言葉の使い方がとても上手でおられると思います。浸れる言葉、せかさない言葉、そんなところに心地よさを感じます。 桜と人間の命がつながっているということを、はっきりと詩にされている(「壊れるように、散っていく」)、この視点は、 なかなかないと思います。
0最初の一行に惹かれて読み進めました。これが結論でもあると思うのですが、ここに引っ張られすぎてはいけないとも同時に思いました。二行目は突き放しているのではなく、あなたの死を受け入れる決意を表しているのでしょう。 「政治は腐敗して(後略)」の行は、私達とあなたの徹底的な違いを表しています。おそらくあなたは政治や国のことについて、熱心な活動家(?)であり、そういったことへの興味が強く、そういった話を私が聞いていたと思われます。ただ、私達はそういったことに対して「なんと言うこともなく」生きていける存在です。そういった政治や国のことに対して「悲しみと怒りの境界に項垂れた」のはあなたであって、あなたが死んだ以上はそういった過去は無に帰するのでしょう。そこで、草木とあなたとの対比に移り、草木は死が訪れても循環しますが、あなたは循環せず、あなたの行為が一回性を持つことしかできないことを表しています。 「あなたが私を包み込んで、私にあなたが満ち満ちる」というのは、例えるならば、まるで私の中にあなたを孕んでいるようです。「あなたの価値はたったそれだけ」というのは、「あなたに体温のあること」だけが価値を持っていることです。私は「どうか自分の価値を見誤らないで」とまるで叱責するかのようですが、むしろ、それだけしか価値がないと貶めているのではなく、それだけでも価値があってよいと捉えているのでしょう。 あなたが死んだことによって、あなたは体温を失うはずですが、逆に、あなたが死んだことで私の中にあなたを孕んだことで、私を夜な夜な温める存在であるからこそ、「あなたに体温のあることが好き」なのでしょう。つまり、「布団の中であなたの体温が膨張する。あなたが私を包み込んで、私にあなたが満ち満ちる」というフレーズと「あなたに体温のあることが好きだった」という箇所を切り離して考えてはいけないのですね。 あなたの死後、あなたの存在は居場所がありません。「桜は、周囲を見定めたように花を落とし」ているので、これは居場所ということに対するあなたと桜の対比をしているのでしょう。ただ、あなたの居場所は私の中に在る。だから、「満開の桜を、今年も私は見なかった」ので、「あなたもきっと、満開の桜を見」ることができなかったはずです。
0三浦果実さん、ご拝読感謝です。国敗れて山河在り元にしてます!わかっていただけてすごく嬉しい!! 黒髪さん、ご拝読ありがとうございます! お褒めいただけて嬉しい。。精進いたします! なかたつさん、ご拝読ありがとうございます。解釈はそれぞれです!私の詩から何か感じてもらえたならこの上なく嬉しいです! コメント頂きましたのにお返事遅れて申し訳ありませんでした。。
0こころんさん、こんにちは。 僕は靖国神社の桜を思い出しました。今年も見に行ったんですが、かつてはここで会おうなどと言い交わし、遠い異国で死んで行った兵士たちが大勢いたんですね。 御国のためと言い聞かされて行ったんだろうけど、彼らの本当の価値はただ生きて特定の誰かの身体の中に存在の痕跡を残し続けることにあったのだと思います。 人は決して大義のためなどで命を落としてはならないのだ、ということをこの詩を読んで改めて思いました。
0よくないなって自分でも思うのだが、こういう雰囲気の詩を私はまとめて「最果タヒっぽい」とくくってしまう。私がそうくくる個々にもちゃんと個性があるんだろうけどさ、無意識にラベリングしてしまってうーんって。 悪くはないむしろ良い目な詩だとはわかるが、私の中ではそれ系となってしまうのが残念。 でも、 布団の中であなたの体温が膨張する。 はとても良い表現だと思う。淡色な情景が目に浮かぶ。
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